何かが抱きついてきた感覚があった。
元貴「んん?」
目を覚ますと隣で寝ていた涼ちゃんが俺に抱きついてきていた。
俺の胸に顔を押し当てている姿は何よりも愛おしい。
元貴「可愛い……」
思わず俺の口からそんな言葉がこぼれた。
ふと時計を見るとまだ4時過ぎ。
元貴「はぁ……寝るか。」
俺はもう一度寝ようと目を閉じた。
元貴「………寝れない」
ただでさえ最近不眠で昨日やっと眠れたって言うのに……
涼ちゃんが抱きついてきている不思議な、慣れない感覚でなかなか寝付けない。
涼架「……元貴?」
涼ちゃんも目が覚めたようだった。
元貴「あ、ごめん……起こしちゃったね。」
涼架「んーん、大丈夫」
寝ぼけているのか涼ちゃんは抱きついたままだ。
元貴「……涼ちゃん?その、少し離れてもらっていい?」
涼架「ほぇぇ?僕のこと嫌いなの?」
元貴「いや、そういう訳じゃ…」
俺の気持ちは嫌いの真逆だよ。
伝わらないみたいだけどね……
涼ちゃんの体温がほんのりと伝わってきて温かい。
もう少し、このままがいいな……
って、ダメダメ!
涼ちゃんが起きた時俺の事どう思うことか……
元貴「ほら、涼ちゃん。手、離して。」
涼架「んん……」
涼ちゃんが渋々手を離した。
寝ぼけながらでも不機嫌そうなオーラが伝わってくる。
これで、寝れるかな……?
やっぱ眠れないっ!
くっそぉ……どうしたものか……
涼架「元貴ぃ……?どしたの……?」
元貴「あ、あの……寝れなくて……」
涼架「……じゃあ、お話、する?」
元貴「へ、?いいの?」
涼架「ん、いいよ」
そう言って起き上がる涼ちゃん。
俺も起き上がってベッドに2人で座る。
涼架「ていうか、今雨降ってるんだね。」
涼ちゃんがボソッと言った。
外を見ると霧雨のような雨が降っていた。
元貴「ほんとだ。綺麗……」
俺がそう呟くと、涼ちゃんが少し微笑んでこっちを見た。
なんだなんだと思っていると……
涼架「元貴、好きな人いる?」
唐突すぎる質問に俺は質問に迷った。
好きな人はいる。だけど……
元貴「いや、いないよ。」
涼架「そっか……」
少し残念そうに、少し安心したように涼ちゃんが言った。
元貴「そういう涼ちゃんは?」
涼架「え、僕?」
涼ちゃんは少し戸惑った様子で訊いてきた。
涼架「ぼ、僕も……いないかな。」
元貴「そっか……」
「いない」ということに安心してしまう俺はどうかしているのかな。
「いない」ということにガッカリしてしまう俺はどうかしてるのかな。
好きな人、ホントはいるよ。
俺の一番近くで、何よりも明るい笑顔をいつも見せてくれる、
藤澤涼架っていう子がね。
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