コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
エルフの村を離れる際、ルーヴァもやってきた。ムツキと彼女は露払いということで先行して進み、ナジュミネとリゥパはその後ろから追う形になる。
自然とナジュミネとリゥパの会話が始まる。
「ところで」
「ん?」
リゥパが先に口を開いた。少し聞きづらそうにしていて、口を開いたはいいが、中々先に進まない。ナジュミネは催促することなく、彼女の言葉が出てくるのを待っていた。
「……えっと、ムッちゃんって、その、どうなの?」
「どうとは?」
ナジュミネはリゥパの方を見ながら首を傾げる。何となく言わんとしたいことが分かったとしても、確定でないのだからそう聞き返すしかなかった。
「その、夜の……営み? 的な? もう、結婚するんだから、気になるじゃない?」
リゥパはエルフ特有の長い耳の先まで真っ赤に染めながら、小声で声を荒げている。目と鼻の先にはムツキがいるのだから、さすがの彼女も大声が出せない。
「あ、あぁ……というか、あんな大胆に迫っていたのに、ここで恥ずかしがるのはズルいぞ! 妾まで恥ずかしくなるではないか!」
ナジュミネもまた首から額まで真っ赤に顔を染めながら、同じく小声で反応した。
「だって、仕方ないじゃない! あの時はやぶれかぶれだったんだから」
リゥパは自分がムツキ相手に築き上げようとしたお姉さんポジションを半分ほどかなぐり捨ててまでアタックしたのだ。ナジュミネも彼女の捨て身の強さには感服するばかりだった。
「そ、そうか。まあ、そうだな。夜の営み、か。こう言うのも恥ずかしいが、妾は旦那様しか知らないし、まだ数回だけだが、妾は……その、えっと、大満足だ」
ナジュミネは頬をポリポリと掻きながら、リゥパにも聞こえるか聞こえないかくらいの微かな声を発する。リゥパは一言も逃してはならないと耳に全神経を使っていた。
「へ、へぇ……初めてを捧げたわけね……そうなのね……」
リゥパはそう返しながら、自身の初めてという希少性が薄れていると感じた。いくらエルフ最高峰の美貌とはいえ、ナジュミネの美貌だって負けていないどころかほぼ互角である。
そう、リゥパは自分に何か有利な部分がないかを探ってもいた。ただただ座して待つだけではなく、何か自分にしか出せないムツキを惹きつける魅力を探しているのだった。
「そうだぞ。リゥパもまだなのだろう?」
「ま、まあね。エルフは一途だからね。ところで、満足なのはどういうところで?」
ここで終わるわけにはいかないリゥパは、さらに深く聞き出そうとする。ナジュミネは驚くが、彼女は彼女で訊ねられていることへの優越感が働いて、ムツキとの情事を思い出して、何か答えることができないか考えた。
「ぐいぐい聞いてくるな。まあ、そうだな。まず、旦那様はすごく激しい」
「……は、激しいのね」
リゥパは、ムツキが夜はケダモノになる妄想を膨らませる。さすがモフモフ好き、彼自身もケモノになるのだ、と。そして、きっといろいろなことを経験してしまうのだろう、とイメージが先行して思わず喉が鳴ってしまう。
「でも、一つ一つがすごく丁寧だ」
「……丁寧なのね」
リゥパは丁寧という言葉を聞いて、ムツキがただただ己の欲求を満たすためだけに動いていないようなので、そういう一面を見てみたいと思ったのと同時に少しだけホッとする。
「そして、いろいろと気に掛けてくれてすごく優しい」
「……優しいのね」
リゥパはムツキとの睦言を妄想する。彼のあの声で、自身に優しい言葉を掛けてくれることを考えただけでさらに鼓動が早くなる。
「それと、妾だけかもしれないが、旦那様に頭を撫でてもらうと、語彙力がほぼなくなる」
「まあ、思い出を振り返っている今でも、既に語彙力がなくなっている感じを受けるわね」
リゥパもナジュミネもお互いの顔がこれ以上真っ赤になることがあるのかというくらいに真っ赤になっていることを確認し、そして、自身もそうなのだろうなと思い、より恥ずかしさが増してきた。
「……あ、ただ」
「ん? ただ?」
何かを思い出したのか、急にナジュミネの顔色は素に戻り、表情も先ほどとは打って変わって無表情に近くなる。
一体何を思い出したのか、とリゥパは一瞬顔が凍り付く。彼女は、何かムツキに変態的な何か性癖があるのだろうかと不安を覚える。