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星降る夜に、君を想う

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星降る夜に、君を想う

1 - 星降る夜に、君を想う

♥

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2025年05月01日

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あの夜、空はまるで泣いているみたいだった。

冷たい雨の匂いが、放課後の教室にまで染み込んでいた。

「傘、持ってないんだろ?」

振り返ると、教室のドアに寄りかかるようにして、千景(ちかげ)が立っていた。

同じクラスなのに、話したことは数えるほどしかない。けれど、彼の声は、なぜかずっと前から知っている気がした。

「……うん。」

たったそれだけの返事に、彼は小さく笑って、自分の傘を差し出した。

「じゃあ、半分こな。」

その帰り道、傘の下で私たちはとても静かだった。

でも、不思議と心は満たされていった。


それから、ふたりで過ごす時間が少しずつ増えていった。

図書室で静かに本を読む午後。

屋上で風に吹かれながら交わす、他愛もない会話。

校舎の裏で見つけた、秘密の小道。

でも、千景はときどき遠くを見ているようだった。

どこか、この世界にいないみたいに。

「ねえ、千景くんって……何を見てるの?」

ある日、思いきって聞いてみた。

彼はしばらく黙っていたけれど、やがてそっと答えた。

「夢、かな。……叶わないかもしれない夢。」

その目は、どこまでも深くて、星空みたいだった。


季節は巡って、夏の終わり。

文化祭の準備で忙しくなってきた頃、彼が突然、学校に来なくなった。

心にぽっかりと空いた穴。

だけど、私は待ち続けた。

あの傘の下で交わした、無言の約束を信じて。

そして、文化祭の夜。

満天の星が降るような夜空の下、校舎の屋上で、彼は立っていた。

「待っててくれて、ありがとう。」

涙があふれそうだったけれど、私は笑った。

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