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桃源暗鬼
先輩同期組中心の四季愛され
四季くんと同期組はお付き合いしてます
✦・┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ・✦
おれはさ、めちゃくちゃ幸せだ!
おれのことを自分のことみたいに大切に思ってくれる人に出会えて、
一人じゃ抱えきれなくなっちまうくらいの、あったかい愛を、3人からこれでもかってほど貰えたから!
だからさ、今度はおれが、3人におれの幸せを、おれのマジの愛を、いっぱいいっぱい返したい!
伝えてこれなかった分、ちゃんと3人に、この気持ちを伝えたい。
……なんか、すげー恥ずかしいけどさ!
でも、3人のことが大、大、大好きだって気持ちは、絶対に本物だから!
だから、────────
何百年、何千年と続いてきた鬼と桃の戦争は、
鬼側の勝利とともに、遂に終わりを告げた。
かといって、全て思い描いた通りに終わった訳ではなく、桃との戦闘により帰らぬ人となってしまった鬼達、 一命を取り留めたものはいいものの、今後の生活に後遺症が残ってしまった鬼が数え切れない程に存在していた。
そんな中、羅刹学園の保健室には、1年前に炎鬼の力を覚醒させ、先日終戦を迎えたあの戦争の主戦力として、多大なる功績をあげた少年。
一ノ瀬四季が一人、深い眠りについていた。
「四季くんが起きなくなって1ヶ月か…」
羅刹学園の保険医である僕は、終戦後、日課のように四季くんの容態を記録し、四六時中、身の回りの世話をしていた。
周りの人間は「ご愁傷さま」だの「もう楽にさせてやれ」だの、無責任な慰めを寄越してくる。……反吐が出る。僕が欲しいのはそんな言葉じゃない。ただ、四季くんが純粋無垢な笑顔で、笑って暮らしている未来だけ。それ以外は何もいらない。
その幸せに満ち溢れた未来を、何が何でも現実にするために。
僕は今日も、
四季くんが暗闇の中でさまよってしまわないように、
一人ぼっちになってしまわないように、誰もいない寂しさに、
独りで泣いてしまわないように。
随分と細くなってしまった
愛おしい”僕達の恋人”の手をしっかりと握る。
大丈夫、四季くんを1人になんて、絶対させないから。
◇
四季が目覚めなくなって1ヶ月。今は保健室で京夜が付きっきりで世話をしてくれている。
あいつが診ているなら、体調面での心配はない。それは分かっている。
だが、ふとした瞬間に、最悪の結末ばかりが脳裏をよぎる。
――四季はもう、目を覚ますことはないのだろうか。
元気に走り回る、愛くるしい恋人の姿を、 あのひだまりのような笑顔を見られる日は、二度と訪れないのか。
もうあの声を、俺の名前を呼ぶ声を、聞くことは出来ないのだろうか。
渦巻く、らしくもない不安感。いくら頭を振ろうが、胸の奥にこびりついて離れてくれない。
本日の業務を終えた俺は、急きょ足早に保健室へと向かっていた。どこかで縋っているのだ。
ドアを開けたら、あの頃と変わらない陽気な笑顔で「ムダ先!」と手を振る四季の姿があるんじゃないかって。
夢物語だ。
分かっている。
理解っているのに、今の俺はそんな都合のいい妄想に縋りつかなければ、立っていられそうにない。
年季の入ったドアを、音を立てないよう静かに開く。
「京夜、四季の様態はどうだ?」
「あ、だのっち。……変わりないよ。まったくね」
淡々とした、だけどひどく冷え切った声。振り返った京夜の瞳には、いつもの理性の光が消え失せているように見えた。
こいつも、幾ら足掻こうと変わらない、残酷な現状に堪えているのかもしれない。
俺は視線を、ベッドで静かに眠る最愛の恋人へと移した。
いつも周囲を明るく照らしていた、あの活発な気配はどこにもない。ただの、綺麗な人形のようだ。
夕日に照らされる麗らかな紺色の髪に指先を通し、優しく撫でる。
こんなふうに撫でてやった時、四季はいつも溢れんばかりの嬉しさを口角に滲ませて、心底幸せそうな顔で笑ってくれた。愛らしくて、思わず理性を忘れて抱きしめたくなるような、あの愛おしい笑顔。
(……頼むから、もう一度だけ、その眼を開けてくれ)
視界が、下から徐々に霞んでいく。涙が零れ落ちるのを拒むように、俺は喉の奥をグッと締めつけた。弱音を吐き出せば、本当に全てが終わってしまう気がして。ただ、目の前に映る色白い頬に、そっと手を添えた。
「……四季、」
叶うなら、もう一度あの笑顔を俺に見せてくれ。そのためなら、俺にできることなら何だってやってやる。
「……真澄隊長、顔色が宜しくないように見受けられます。一度、休まれてはいかがですか?」
一週間ほど前から休み無しで報告書を読み捌き、上層部への報告を繰り返している。そんな俺を見かねて、部下の馨が声をかけてきた。
「チッ、大丈夫だって何回も言ってんだろ。しつけぇな」
「しつこくとも声を掛け続けないと、真澄隊長がいつか壊れてしまいかねないので」
俺が壊れる、ねぇ。
笑えねぇ冗談だ。無理してでも今はこの無機質な数字や文字に頭を使ってねぇと、脳裏に“アイツ”の姿が焼き付いて離れなくなる。
やかましくて、でも愛おしくてしょうがねえ
恋人、一ノ瀬の姿が。
アイツは1ヶ月前からずっと、死んだように眠りこけている。無陀野と京夜が容態を何とか改善しようと試みてはいるが、希望の兆しは一向に見えねぇまま、時間だけが虚しく過ぎていく。
実のところ、本音を言ってしまえば、“隊長”なんていう堅苦しい肩書きなんざ今すぐにでも剥ぎ捨てて、一刻も早く一ノ瀬の元に駆けつけたい。だが、そんなことをしちまえば、馨に迷惑がかかるのは目に見えてる。――何より、一ノ瀬の眠る姿を前にした俺は、きっと二度と立ち直れなくなっちまう。
そんな苦しい思いを抱えて、この先起こりうるはずのない奇跡に想いを馳せるほど、俺は強い人間じゃねぇ。会いに行くなんて、到底できるはずもなかった。臆病な俺にできるのは、ただこれだけだ。
腹の底で蠢いている重く苦しい不快感を誤魔化すように、ただひたすらキーボードに文字を打ち込む。カタカタと響く電子音だけが、今の俺の輪郭を辛うじて保ってくれていた。
そんな俺の必死の拒絶を、馨は見透かしていたのだろう。確信を突くように、静かに口を開いた。
「四季くんが心配なんですか?」
「……」
「隊長は、本当に素直じゃありませんね」
「うるせぇんだよ、クソが」
痛いところを突かれ、いつものようにトゲのある言葉で突き放す。心臓を直接掴まれたような不快感に、自然と呼吸が荒くなる。俺がどれだけの覚悟でここにしがみついているかも知らない癖に。だが、そんな俺の苛立ちを受け流した馨は、しばらく黙りこくったかと思えば、とんでもない戯言を吐き出しやがった。
「……真澄隊長、暫く休暇を取られてはいかがですか?」
「……は?」
本気で言ってんのか。俺が休暇をとったとして、誰がこの代わりを担う。目まぐるしい量の報告書に目を通し、添削し、やっとの思いで上層部に送り付けたと思えば、また新しい書類が降ってくる。終わりなんてない、無限地獄のようなこの山を、誰がやってくれるってんだ。
「僕が代わりに終わらせますから」
その言葉に、俺は耳を疑った。こいつの仕事量だって俺と大差ないはずだ。過労で倒れるのがオチだろう。何より、そこまでして俺を、目覚めるかもわからねえ一ノ瀬の元に行かせてえのか。
「アホか、逆にお前が壊れるわ」
「大丈夫ですよ。既に一通りの仕事を終わらせている紫苑や猫咲達をこき使っ――ウウンッ、協力してもらうので」
呆れたように、だけどどこか楽しげに馨は笑いやがる。
――こいつなりの、不器用な優しさなのだろう。そこまでお膳立てされて、まだここに閉じこもるほど、俺も面の皮は厚くねえ。
キーボードから手を離すと、酷く指先が震えていた。認めたくはなかったが、俺の限界を、馨はとっくに理解していたんだ。
「……チッ、馨、後は頼んだぞ。」
「はい、隊長。」
屈託ない顔で笑うそいつを後にし、俺は次出航する予定の船目掛けて走り出した。
この校舎に足を踏み入れるのも何十年振りか――。
そんな感傷に浸る余裕など、今の俺には一微塵もなかった。ただひたすらに、一ノ瀬の眠っている保健室まで、一目散に駆け出す。
心臓が嫌な音を立てて波打つ。長い廊下を、足がもつれるのも構わず駆け抜け、目的の扉へと飛び込んだ。
その勢いのままに開いたドアの先には、見慣れた同期たちの姿があった。
「なんだ、お前ら居たのかよっ……」
「まっすー?!」
「なんだァ?来ちゃ悪かったかよ」
――たく、馨の余計なお世話ではるばるこっちに来てんだ。少しくらい居させろ。
そう心の中で悪態をつきながら、 つかつかと置物みてえに動かない一ノ瀬歩み寄る。1歩、1歩と足を前へと運ぶたんびに早まる心臓の鼓動を無視して、機械みたく。
「……… よぉ、一ノ瀬。随分と痩せこけたなぁ。」
俺の目の前で死んでるみてえに眠りこけてやがる、俺の……俺達の恋人は、
戦争前に見た時よか、肌には程よく血色感があった。ずっと日に当たっていないからだろう、透けるように白い。その健康そうな肌を見れば、京夜がどれほど必死に、付きっきりで世話をしてやってきたかが、痛いほど読み取れた。だが、それだけに、目の前の現実が虚しかった。
(……なんだよ、これ……)
あいつが、あの地獄のような戦いを生き抜くために、血反吐を吐きながらがむしゃらに鍛え上げてきたはずの筋肉。それが、今は見る影もなく、虚しいほどに衰えてしまっている。いつも俺の前に立ちはだかっていた、あの頼もしかった背中はどこへ行っちまったんだ。
ただ静かに横たわる一ノ瀬の細くなった身体を見つめていると、胸の奥をキリキリと締め付けられるような、言いようのない焦燥感と悲しみがこみ上げてきた。
その場にただ立ち尽くし、一ノ瀬の細くなった体を見つめていた時だった。
沈黙を破るように、コンコンと軽快なノック音が室内に響いた。静かに開いたドアの先に立っていたのは、いつかの中二マスクだ。
「無陀野、話がある」
「ここでは話せないことか?」
「……いや、いい。ここで話す」
(チッ、含みのある言い方をしやがるなァ……)
何か重要な裏があるのは間違いなかった。普通なら、その言葉に耳を傾けるべき局面なのだろう。だが、今の俺にとっては、そんなことはどうでもよかった。
(悪いが、今はアイツの話を聞くより、一ノ瀬の容態を見ておく方が何百倍も大事なんだよ)
世界の動向がどうなろうと、どんな不穏な火種が燻っていようと、今の俺の全神経は、目の前で眠り続ける一ノ瀬だけに注ごうとした。
その時─────
「四季の引き出しから、手紙が出てきた。おそらく、四季が書いたもんだと思う」
(……っ、手紙……!?)
その言葉を聞いた瞬間、俺の身体は反射的に強張っていた。あの一ノ瀬が、手紙を遺していた……?
(誰に宛てたもんだ? 俺達にか? 馨に? それとも黒マスク……いや、もっと別のやつの可能性だって――)
頭の中で、目まぐるしく宛先の候補が浮かんでは消える。あいつが文字にしてまで、誰かに伝えたかった言葉。そこに何が書かれているのかを想像するだけで、心臓の鼓動がうるさいほど跳ね上がった。
「……人のを勝手に見るという行為には気は引けるが、一度読んでみてもいいかもしれない」
「あっそ、俺は興味ねぇから、やる。」
読むことに対し、誰も拒むことはしなかった。いや、拒む理由などなかった。
封筒から、丁寧に折り畳まれた手紙が取り出される。その紙を早く持ってけと言わんばかりの強さで無陀野に突き出した。
無陀野が黒マスクから紙を奪い取るように受け取った。用が済んだからか、黒マスクは足早に部屋を後にした。その様子を尻目に、無陀野は静かにその内容を読み始める。─────
✦︎︎
おれのじゅ命は他のやつより短いんだってきいた時、正直めちゃくちゃこわかった。
これからやりたいことだって数え切れねぇくらいあるし、あらためてお礼を言いたいやつだって、たくさん、たくさんいるのに。
明日始まる桃とのデカイせん争で、おれは多分、ていうかぜってえ、炎鬼の力を使わなきゃいけねぇ。じゃねぇと、大事なみんなを守りたくても守れないから。
力を使えばじゅ命がけずれちまうことなんか、ちゃんとわかってる。いやだし、こえーし、何よりおれは死にたくねえ。
でも、それ以上に、みんなといれる時間が短くなっちゃうのが一番こわい。
もっとみんなとバカやってムダ先にしかられたい。その度にチャラ先にハグしてもらったり、なぐさめてもらったり、ちゅー、とかしてもらったり!
くんれんで上手くいった時は、ムダ先にアタマなでてもらって、そんでほめてもらって。
ねりまに行ったら、ますみたいちょうのへやに行ってさ、ますみたい長にウザイって思われてもいいから何回でもからみたい!
ますみたい長のね顔とかみてみてー!!
そんな風に心の底から思える3人に会えて、
おれはさ、めちゃくちゃ幸せだ!
おれのことを自分のことみたいに大切に思ってくれる人に出会えて、
一人じゃ抱えきれなくなっちまうくらいの、あったかい愛を、3人からこれでもかってほど貰えたから!
だからさ、今度はおれが、3人におれの幸せを、おれのマジの愛を、いっぱいいっぱい返したい!
伝えてこれなかった分、ちゃんと3人に、この気持ちを伝えたい。
……なんか、すげー恥ずかしいけどさ!
でも、3人のことが大、大、大好きだって気持ちは、絶対に本物だから!
だから、 明日のせん争で、守りてぇもん守って、ぜったい笑ってかえってきてやるんだ。
その時は、ムダ先とかますみたい長が、マジモンの笑顔で笑ってたらいいな。
そんで、チャラ先ふくめた4人で笑いたい!
そのためにまずはちゃんとねる!
そんで、明日のせん争にバッチリそなえてやるぜ!
もうだれも目の前でうしなわねーように!
✦︎︎
「ハッ、手紙のほとんどひらがなじゃねぇか」
「全くだ、始めの勉強は漢字からだな。」
「でも、四季くんらしいっちゃ、らしいよね。」
先程まで保健室を支配していた重苦しい空気が、嘘のように和らいでいく。
手紙に残された不器用な文字が、凍りついていた3人の心を、朗らかに溶かしていた。
(やっぱり、 俺達の太陽は一ノ瀬四季しかいない。)
けれど、温かい笑いは長くは続かなかった。
ふっと会話が途切れた瞬間、部屋を静寂が満たす。手紙を見つめるみんなの視線が、自然とベッドの上へと向いた。
そこにいるのは、穏やかな寝顔のまま、ぴくりとも動かない恋人。
――あいつが、いない。
あんなに不器用で、真っ直ぐで、みんなを照らしてくれた四季が、ここにはいない。
笑えば笑うほど、その事実が鋭いナイフのように胸に突き刺さり、猛烈な恋しさが押し寄せてくる。
「……起きろよ、一ノ瀬」
真澄の、掠れた声が溢れた。それを皮切りに、均衡が崩れる。
これまで必死に保っていた精神が、音を立てて軋み始めた。限界だった。四季を失うかもしれないという恐怖で、頭がおかしくなりそうだった。
その場にいるもの全てが、拳を血がにじむほど強く握りしめている。今にも崩れ落ちそうなほど精神が追い詰められていた。
頼むから、嘘だと言ってくれ。
ばかげた長い昼寝はもういい。
俺たちの太陽を、奪わないでくれ――。
言葉にならない祈りと、悲痛な叫びが、狭い保健室のなかに満ちていく。
縋るように四季の眠るベッドへとすがりつく。その冷えかけた手を握りしめながら。
世界が静止したかのような錯覚のなか、重く垂れ込めていた窓外の雲が劇的に割れ、一筋の、けれどあまりにも強烈な光が差し込んできた。
カーテンの隙間から滑り込んだ鮮やかなたいようの光。それは、血の気の失せた白いシーツを、そしてずっと閉ざされたままだった四季の顔を、眩いほどに白々と照らし出す。
「……ん、」
鼓膜に触れたのは、吐息ともつかない、微かな、本当に微かな声だった。
けれど、極限まで張り詰めていた俺たちの耳には、それが世界のどんな大音響よりも鮮烈に、確かに届いた。
光の粒子が舞うなかで、四季の長い睫毛が、羽ばたくように微かに揺れる。
息をすることさえ忘れて見つめるなか、ゆっくりと、本当にゆっくりと、その瞳が――見慣れた、俺たちの太陽の色彩が、こちらへ向けて開かれた。
「あれ、戦争終わった……??」
間の抜けた声だった。
あまりにも。
あまりにもいつも通りだった。
その瞬間。
張り詰めていたものが、一気に決壊した。
「ゔぁぁぁぁ!!し ゛き゛ くんっっ!ヒグッ、し ゛き゛く゛ん゛っ っ!!! 」
「四季っ……! っ、ああ、良かった……本当に、良かった……っ」
「ケッ、おせぇんだよ、……四季……っ!」
泣き声も、怒鳴り声も、嗚咽も、全部ぐちゃぐちゃだった。
誰も取り繕えない。
誰も格好なんてつけられない。
ただ、目の前で俺達を見つめるその瞳が、愛おしい恋人の姿が、どうしようもなく胸を焦がしていく。
暖かいひだまりのような体温が、四季はちゃんとここに帰ってきたと、そう教えてくれているようだった。
失ったと思っていた太陽は、ちゃんと、ここにいると。
「へへっ、心配かけてごめんな……みんな。」
そう言って笑う四季が、あまりにも眩しかった。
保健室を飛び出し、仲間たちの元へと向かえば、そこにはさらなる大洪水が待っていた。
「四季くんっ! 無事だったんですね、無事だったんですねぇぇっ!」
「おい、泣きすぎだ遊摺部、……って、ロクロお前も泣いてんじゃねぇか!」
「うるさいな矢颪くん、僕だって……僕だって怖かったんだから……っ」
「一ノ瀬さぁぁぁんっ!私達がどれだけ心配したと思ってるんですかぁぁ!」
「っ、このバカ四季っ、!!いつまで寝てんだよっ……馬鹿野郎、!!」
遊摺部が鼻水を垂らしてすがりつき、ロクロや矢颪、屏風ヶ浦と、皇后崎と漣までもが涙を堪えきれずに顔をくしゃくしゃにしている。
そして馨、紫苑、大河、猫咲、印南、そしてなんとメイまで、誰もが目を真っ赤にして、目覚めた四季の姿をただひたすらに見つめていた。
もみくちゃにされ、涙と鼻水でぐちゃぐちゃに囲まれながら、四季はどこか照れくさそうに、けれど最高に眩しい笑顔を浮かべた。
「みんな、ただいま! ……色々心配かけて、ごめんな」
「ありがとう!」
✦︎︎
あれから数年後。鬼の暴走を研究していた大学が、ついに暴走を抑える特効薬の開発に成功した。実戦での効果も証明され、国から正式に承認を受けた。
これにより、終戦後も命を懸けて暴走を食い止めてきた「鬼機関」と「桃機関」は、その役目を終えて同時に解体された。かつて戦う運命にあった者たちはみな、平穏な日々を生きる
「ただの一般市民」生きることができるようになったのだった。
「いや~、やっとだよな~」
そんな呑気な声を上げながら、軽快な足取りで街を歩く。
そのおれの隣には――
何故か無人さんと真澄さん、後ろには京夜さんがピタリとくっついていた。
俺今日一人で出かけるって言ってたよな!?
なんで!?!?
てか京夜さん歩きづらくねーの!?
頭の中を埋め尽くす疑問に翻弄されているおれを、真澄さんは「面白いものを見た」と言わんばかりの雰囲気を醸し出し、変わらない表情で眺めてくる。
京夜さんは「癒される~」なんて幸せそうに呟きながら俺の頭に顎を乗せている。
ちなみに、無人さんは何故かおれの手をぎゅっと握っていた。本人曰く「もう失わないため」らしいけど……正直、よくわからん。
そんなこんなで着いた場所は
『ゲームセンター』。早速クレンゲームやシューティングゲームで遊んでいると、不意に、プリクラを撮りたくなったため、評判の良いプリ機に入ってみることにした。
《はーい!まずは猫のポーズ!》
異常に高いテンションのアナウンスに珍しく戸惑っている無表情組二人に、京夜さんと一緒に笑いを堪えながらも、写真を全て撮り終えた。
落書き中も吹き出しそうになったが、真澄さんにしばかれそうだと思ったため、必死に耐え抜き、機械の外面からプリントアウトされた写真を取り出す。
その写真を見て、俺は遂に笑いを堪えきれなくなった。
「あっははは! 待って、二人とも顔不自然すぎんだろ!! 誰だよこれ!」
涙が出るほど笑うおれを、二人は最初、呆然と見つめ、京夜さんは俺につられてつい吹き出してしまった。
「ちょ、ブフッ、ダノッチとまっすー慣れて無さすぎでしょ!!」
2人してその写真に腹がよじれるんじゃないかってほど笑い転げていた。
──次の瞬間。
「……くくっ、確かにっ、ふっ、これは酷いな」
いつも殺伐としていた真澄さんが、 ただの「一人の人間」としての、 “楽しい” ”面白い”と言う感情に満ちた笑顔を咲かせ、
「ふはっ、四季笑いすぎだ……ふっ、でも確かにこれは……っ、 誰が誰だか分からんな」
無人さんは、四六時中顔に貼り付けている “戦場に立つもの”の表情ではなく、この世の何よりも優しく、柔らかい笑顔でおれの顔を覗き込んできた。
張り詰めた緊張感も、背負わされた重責もない。
二人がただ、目の前の可笑しい出来事に、作り物じゃない、自然に溢れた笑顔で笑っていて、
俺と京夜さんの4人で、心の底から笑ってる。
その光景に、おれの目尻はじわじわと熱くなった。
(あぁ、やっと、やっと、叶った……)
あの日の手紙に書いた、 沢山のしょうもない願い事。
他の人よりも短い一生でどこまで叶えられるかなんて分からない。
でも、全部叶えたい。叶えてみせる。
その選択が、どれ程長いものだったとしても。
✦・┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ・✦
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!!
感謝してもしきれませんっ!
文才もなく、まだまだ未熟ですが、これからもっといい作品が書けるよう頑張っていきます!
それではまた別のお話で会いましょう!
コメント
2件
わあ〜〜〜〜〜!!!!😭💕💕💕 もうね、最初から最後まで胸がぎゅーってなったよ…!! 四季くんの手紙、全部ひらがなで不器用なのにまっすぐで、読んでるこっちまで涙腺崩壊した…「大、大、大好き」って書くところとか愛しすぎでしょ…!! 3人それぞれの四季くんへの想いも重くて切なくて、でも最後にみんなで笑顔でプリクラ撮ってるシーンで全部報われた気がした…「やっと叶った」って四季くんが思うところ、もう泣くしかなかった😭✨ 作者さんの愛が詰まったお話、めちゃくちゃ伝わったよ!!続きも読めるの?ってくらい世界観に引き込まれた〜〜!!素敵な作品をありがとうございます🌸💖