退院13日後の検診データ
氏名 星導 ショウ
身体状態 正常
臓器状態 正常
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欠損部は指先まで完全に再生しています。関節の動きに多少違和感が残っているようですが、リハビリと日常生活における動きで徐々になくなっていくでしょう。
カウンセリングデータ
氏名 小柳 ロウ
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フラッシュバックの頻度がかなり減ったとのことで本人の表情も以前より明るく見えました。睡眠もしっかりとれているようです。
再診の必要はありません。もしお困りのことがありましたらいつでもいらっしゃって下さい。
退院から2週間後。
星導の体は元通りになった。退院から11日経った時点で指まで復活していたのだが、細かい動作までできるようになったのはこの日がはじめてだった。
伊波やカゲツは元通りになった体を見てとても喜んで、安堵の表情を浮かべていた。
「俺ら2人仕事入ったから今日はお前ん家に戻らん」
「そうなの…?」
「うん」
「何?もしかして寂しいとか?」
冗談めかして伊波が言う。
「うん」
素直に頷けば照れくさそうに目線をずらした。
「……もうちょっと茶化せよ。反応しづらいだろ」
「だって居なくなったら無茶苦茶静かになるよ」
「まぁそうだけどさ」
「小柳はいるやろ」
「いるけども」
「なら大丈夫やろ」
「んじゃ、行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
手を振る2人を見送る。バタン、と玄関のドアが閉まる音がして静かになった。
小柳はまだ寝ているらしく、家の中が早速静かになる。
遡ること数日前。スーパーで買出し中のカゲツと伊波。
「なぁ」
「うん?」
「あいつらって付き合ってんの ?」
「やっぱそう思った?」
「え、違うん?」
「うーん……。前々からそういう雰囲気あって聞いてみたことあるんだよね。その時は付き合ってないって言ってた」
「前々から?あったっけそんな感じの時」
「うん。気付かなかった?」
「全く気付かんかった」
「あはは、そっか」
どうやら伊波は以前から気付いていたらしい。手にとったおでんの具セットを買い物カゴに入れる。
「付き合ってないんか。それであの……なんて言うん、小柳が一緒に居たがるのはやっぱ心配だから?」
「なんかね、前からそうなんだけど小柳が星導を凄い気にかけてんのね。それを星導がこう…遠慮してる?避けてる?のかな。そんな感じがずっとある」
「……小柳が片思いしてるってこと?」
「その節があるように見える」
カゲツが見ている限りではそういう空気感をこの2週間の間で多々感じた。伊波はもっと前からそれに気が付いていたらしい。
「でもね、俺が思うに最初に片思いしてたの星導だったと思うんだよね」
「両片思いってこと?」
「多分?」
「え、でも星導は小柳が自分を気にかけてるって気付いてるんやろ。なら両想いって分かるやろ」
「俺の想像だけど、星導は両想いにはならなくて良いって考えなんじゃないかな」
「……難しいこと言う。そういうことってある?」
「あるんじゃない?カゲツもよく分かってると思うけどヒーローって無茶しなきゃいけない時があるから」
「そっか」
言われてみれば理解は出来る。でも、とカゲツは思う。
「それでもそばにいてくれる人を大事にしない理由にはならないと思うけどな」
「……漢だねぇ、カゲツ」
「だってヒーローだけがぼくらのアイデンティティじゃないやろ」
「確かに」
2人が実際どう考えていてこの先どうなるかは分からないが、大事な同期として2人にとって良い方向に向かって欲しいと密かに願う。
「提案あってさ、小柳の休息の最終日は2人とも出勤にしない?」
「そうだね……なんや、伊波も2人のこと気にしてたんや」
「ほら、俺ったら過保護だからさぁ」
明るく笑って伊波は言った。
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メインふたりじゃない💡🥷の会話も含めて関係性がはっきりしていく過程が最高です…!!続き読めるのを楽しみに今日もがんばります😭✊🏻毎日の生きる糧です、ありがとうございます!!✨