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とにかく今はとても充実した結婚生活を送れてる。
祐誠さんは私を愛してくれ、正孝を可愛がり、そして、私の両親まで大切にしてくれる。
「仕事もできて家庭も守れる、こんな素晴らしい立派な男はいない!」って、両親も太鼓判を押してくれてるし。
本当に……この人と出会えて良かった。
たくさんの愛情と思いやりをもらって、そのお返しに、私は少しでも祐誠さんを支えられる良き奥さんでありたいと思ってる。
常に努力はしていたい。
祐誠さんに言ったら、きっと「そのままでいい」って言ってくれるんだろうけど。
妻、母、そして女性として、いつまでも自分らしく輝いていられるように……
私はこれから先も、毎日しっかり前を向いて生きていこうと思う。
そんなある日、正孝が私に言ったんだ。
「お母さん。僕、理科の授業で星座を勉強したんだけど、プラネタリウムじゃなくて本物の星空を見たいんだ」って。
「本当の星空……?」
「そうだよ。日本一の星空が見れる場所。先生が長野県にあるって言ってた! 僕、行ってみたい」
そうだった……
毎日の生活に追われ、希良君が教えてくれたこと、すっかり忘れてた。
「うん、そうだね。日本一の星空なんてすごいね。行ってみようか。お父さんが休みになったら」
「やったぁ!! 早く行きたいなぁ」
正孝が素直に喜ぶ姿を見て思った。
懐かしいな……希良君、どうしてるかな? って。
もうずいぶん前になるけど、東英大を卒業して2年くらい経った頃、久しぶりに希良君から電話がかかってきた。
『雫さん、久しぶり。ごめん、電話なんかして』
『びっくりしたよ。希良君元気なの?』
卒業した時にメールだけはもらってたけど……
『突然ごめん。僕はすごく元気だよ。雫さんは? 元気でいるの? って、あの人と結婚したんだから元気に決まってるよね』
『うん、元気だよ。とっても』
『なら良かった。今日はさ、どうしてもちゃんと直接伝えたかったから。だから電話した。僕、小学校の先生になったんだ』
『本当に!? すごいじゃない!』
そう聞いた時は心の底から嬉しかった。
『ありがとう。結構いろいろ大変だったけど、大学の時、雫さんが『杏』に行った時に頑張れって声掛けてくれたり、話せなくても雫さんの顔を見るだけで元気になれたから』
『希良君……』
『そりゃあ、雫さんにフラれてすぐの頃は、正直すごく落ち込んだけど、雫さんの可愛い笑顔に元気をもらって、笑って毎日を過ごすことができた。だから……感謝してる』
『感謝だなんて、私は何もしてあげられなかったから……』
『そんなことないよ。十分だよ。雫さんは『杏』を辞めちゃったけど、それでも何とか卒業まであなたとの思い出のおかげで乗り切れた。卒業したってメールだけして……それからは雫さんに連絡しないようにしてたんだ。先生として少しでも成長できたら、いつか電話しようと思ってた』
『嬉しいよ、本当に嬉しい。何だか泣けてくるよ。きっと……ものすごく頑張ったんだろうなってわかるし。本当に……偉いね……』
胸に感動が湧き上がり、頬に熱い涙が流れた。