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#ファンタジー
俺が藁人形の前に立つ。
「体術試験、はじめ!」
そう言われ、俺はわざと下手な剣術、蹴り、殴りを繰り出す。控えめに言ってカスみたいな攻撃だ。正直教官や周りからの目が痛い。まぁ手を抜いているから人の目なんて今更気にしたところでだ。だがその中で、妙な視線を感じた。上に目線をやると十六夜が侮蔑や嘲笑などではなく、どこか興味を持った目で見ていた。
(ひえっ、なんやあいつ。なんで興味ある目で見てくんの?実力隠してんのになんで?…首席だからかぁ)
そう思いつつも適当にやって体術試験が終わった。
「お前さぁ、手ぇ抜くなって。」
「いいだろ、面倒ごと嫌だし。」
なんの音もせずに、背後に十六夜が立っていた。まぁ俺は気づいているが、驚いたフリでもしておこう。
「君、本気でやらなかったわね?」
「「うわぁ!」」
「なに?あの酷い動きは。」
「あはは、あれが実力なので…」
「嘘でしょ。わかるわよ、私には。」
「…」
「本気でやりなさい。これは首席命令よ。」
首席命令。本来SランクやAランクに出る、余程重要な案件じゃない限りでない命令だ。
「しかし首席!こんなEランク如きに首席命令など…!」
「あら、聞こえなかったのかしら?教官殿。私はこの者に本気でやれと命令したのだけれど?首席命令が聞けないのかしら?」
「…ぐっ、」
「そういうことだから、やりなさい。」
「…はぁ、わかりました。」
十六夜に言われるがままに俺は藁人形の前に立った。
「じゃあ、危ないので離れてください。」
「?そんなに危険なわけないんじゃないかしら?」
その言葉が十六夜の口から零れ落ちた瞬間、俺はその場にいた全員の視界から消え、その次のフレームには、藁人形が内部から大爆発し、破片が空中で塵になった。
「…え?」
「お前さぁ、手加減しろって、こうなるからよ…」
「あはっ、ごめんごめん。」
「…貴方、今何したの?いきなり消えたのはまだわかるわ。私だってできるもの。でも、瞬きしない間に藁人形が爆発したわ。普通、魔法なら詠唱の時間があるはず、私だって0.1秒はかかるのに…」
「あぁ、あれ魔法じゃないですよ?」
「魔法じゃ、ない?じゃあどうやったというの?」
「簡単です。指先に力を集中させ、的の脆い部分に力をこめてあげれば中からドカンです。」
「…はは、貴方すごいわね。気に入ったわ。今日から貴方にSランクの称号を与えましょう。」
「あ、いらないです。」
「はぁ?!なんで?!Sランクよ?!普通喉から手が出るほど欲しい地位でしょう!?」
十六夜のクールな印象が既に崩れていた。どんだけ焦ってんだよ。
十六夜がようやく周りの視線に気づく。
「こ、コホン…きょ、拒否権はないから、甘んじてこの地位を受け入れなさい、首席命令よ…」
あんまりにも語尾が弱々しい。もはや最後の言葉は聞き取れるかどうかの声量だった。
「じゃあこいつも一緒にダメですか?」
そう言い俺は、クロを指差す。
「は!?俺!?」
「だってお前体術*だけは*すごいだろ?」
「だけってとこ強調すんな!」
「…ふふっ、良いわ。仲がいい学友がいた方が楽しいものね。」
「ありがとうございます。」
「俺の意思は無視かよ!?」
「うるせぇ。」
そんなこんなで、なぜかSランクになってしまった。めんどくさ
コメント
1件
うわ、十六夜さんのクールが一瞬で崩れるの、めっちゃ好きです(笑)。「喉から手が出るほど欲しい」って言葉に本音が出てる感じが可愛い。あと魔法じゃない“指先に力を集中”って説明、なるほどな〜って思いました。主人公がSランクを「いらないです」ってバッサリ切るところも清々しいし、クロ巻き込み芸も含めて三人の空気感がもう既にいいですね。めんどくさがりな首席って新鮮。次が楽しみです。