注意:ソ日帝/NL(日帝は女の子)/何でも許せる方のみどうぞ
眩い秉燭の灯りに影が浮かぶ逢魔時。蕭条と降る驟雨に濡れた肩を払う所か無頓着な表情で水鞠の音を立て逍遥を続ける。
爽籟を待ち焦がれる彼女に薫風が通り過ぎ初夏の訪れを静謐に告ぐ。簾名残はまだ先だと肌で実感させられた。
「ん‥?」
枝垂れ柳に目を留める。鼎俎を免れず枯れた紋白蝶が折れた羽を抱き寄せていた。
頬を叩き沈んだ気分を払う。
不気味な程に寂寥に包まれた空気も黎明の陽射しが顔を出せば嚠喨たる喇叭音が響き渡り活気に満ち溢れた赫耀の雰囲気を醸す。
力強く胸の内に言い放てば渦巻く靉靆とした気持ちが刹那と共に去る。
気を緩もうとした瞬間に無駄に高い身長の割には器は小さい野郎の姿が視界に入る。不運な邂逅に目を逸らしたい。
「‥何をしている」
質問を投げれば舂いた陽に惑溺している影が揺らぐ。高殿から見下ろす目を此方に向ければ表情筋を緩め嗤う。
倦厭の感情を深淵に隠す。相変わらず反感を買うのは得意だな。
「久し振りだな。日帝。お前ならもう少し早く俺に気付くと思ったが‥意外と時間が掛かったな」
遠回しに羸弱していると言われ沸騰する血を必死に頭の中で抑え込む。
感情に左右されず俯瞰的視点を常日頃から心掛ける。呪文を唱えるように何度も脳に言い聞かせる。
「何をしているんだと聞いている。質問に答えろ」
「俺が何をしようが俺の勝手だろ?不貞腐れた顔で威嚇するなよ。少しは笑ったらどうだ?」
太平楽を並べる事にも倦厭するかと浅慮な考えを持った私が馬鹿だった。吐きたい溜息が喉に閊える。
無害な人物なら素通りをしていた。跳梁跋扈な輩が増えていると聞いていたが悪事に最も関与している城狐社鼠な奴と遭遇するなど本当に運が悪い。
「無視は酷いな。日帝?」
柔膚に触れようと伸ばした手が宙を舞う。彷徨い続ける憤りの感情が灼熱の渦に呑まれた紅い瞳を突き刺す。
「穢らわしい手で私に触れるな。己の立場を理解しろ」
慇懃な言葉遣いと称賛された口から毒を吐かせるほどに彼女の恨みが骨髄に徹する。
牙を剥き出された顔に彼の邪恋は制御が利かず更に募る。
「何をそこまで怒っているんだ」
相容れない者同士なのは端から理解しているのにも関わらず毅然とした態度で嘯く。
「貴様の巫山戯た態度に怒っている」
「お前らしい理由だな」
「‥私ばかり恨み言を言って腹が立つだろ。貴様も何か言えば良い」
仁王立ちの体勢を崩さず口を噤む。日帝との間に空いた身長の差はどう足掻いても埋まらない距離感の隙間のようだ。
居心地の良い悪意に彼は本音を伝えた。
「癒えない話は控えてくれよ」
平然を装いながら哀に染まった心は昏い夜に隠した。
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