テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
三枝視点
不破先輩は言葉を続ける
「確かにちょっと嫌だったよ、でもな、あきながあん時だけは、自分の思ってる本当のことを言ってたから」
『え』
「だから嬉しかった、いつも嘘っぽくて、だからこそ、嬉しかった 」
『なんで…そんなこと…』
「ずっと…我慢してたんやな…」
不破先輩は俺の背中を優しくさすってくれる
その優しさに、どうしても耐えられなかった
『…っうあ…ッ俺は、ッ、俺は先輩に酷いこといッたのにっ…なんで…』
「もう無理せんでええから、あきなには、たくさんの仲間がおるから…」
俺は不破先輩の腕のなかで泣きながら、昔のことを思い出していた
『お母さん!俺しょーがくせいになったよ!』
母〈いっぱい友達作れるといいねー!なんかあったらお母さんに言うんだよ?〉
『うん!約束!』
春、小学校に入学して、間もないころ、俺は少しずつクラスから孤立していた
笑顔だったら友達増えるとか嘘じゃん…
『…』
もう自分でも諦めがついて、人と関わることを避けるようになった
でも、お母さんの前では普通に、元気な俺を演じた
友達はたくさんいるよーって…いつしか俺は、道化師になっていた
そこから2年になったぐらいだろうか
グループがたくさんできていて、俺はそこにいじめられていた
最初は、物を隠されるとか、悪口とかそういうのだったから平気だったけど、だんだんエスカレートして、いつしかいじめでは暴力を受けていた
学校じゃばれるから、河川敷の、川の近くで
さすがに耐えれなかった
そのいじめをうけながら、3年生になったころ、俺はお母さんに打ち明けた
『お、お母さん…俺さ、学校でいじめられてて…だから…その…』
母〈…え、そうなの?〉
母の驚いた声、でも、やっと話せた
これでたすかるんだって
母〈…なにしてんのよ〉
母から返ってきた言葉は心配でも、優しい言葉でもなかった
怒りに満ち溢れた、そんな声
『……え?』
母〈そんな弱い子に育てた覚えはないのにッ…いじめだなんて…やり返しなさいよ!〉
『いやッ、でも!』
向こうは大人数、抵抗できるわけがない
母〈…こんなことになるならあんたなんて育てなきゃよかった…〉
冷たく放たれたその一言は、俺を壊すのには十分で、その日から、お母さんは俺と顔を合わせてくれなくなった
ドコッバキッ
『い”…ッた』
いじめっこ〈うわッきも…血ぃはいたぞーッ〉
きもとか言いながらも、ずっと殴る手は止めてくれなかった
…なんで俺なの、?なんで誰も助けてくれないの?
なんで…俺はこんなに弱いの…?なんで…ッ
「おいやめろ」
その場に、低い声が響いた
いじめっこ〈は?〉
「聞こえなかった?やめろっていってんの」
その人を俺は知っていた
一個上の不破湊くん、同じ学校だ
髪色が派手で、女子にもよくもてるらしい
いじめっこ〈お前さ、もててるからって調子乗んなよ〉
「それっていま関係ある?」
彼が冷たく言い放つと、俺を囲んでいた連中は舌打ちをして去っていった
『…』
「おい、大丈夫か」
湊さんは彼らが去ったのをみた後、俺の前に立ち、手を伸ばしてきた
パシッ!!!!!!!
「ッ!?」
俺はその手を振り払った
『…あ』
無意識にも、そうやって伸ばされる手が怖いと思ったから
向こうも驚いてる
『ぁ…あ、す、すいません!!』
「あ、ちょっ!」
俺はそれだけ言って、走って帰った
そして、その日からいじめられなくなった
逆にあいつらは俺と仲良くなろうとしてきて、噂によると、あのあとから湊くんがいじめられているらしい
謝りたかった、でもお母さんはすぐに俺を引っ張って引っ越しをした
『…ねぇお母さん、俺一人暮らししたい』
中学生のころ、母に打ち明けた
母〈え、一人暮らしって…なんで…〉
『実はさ、俺の友達の先輩が通ってる高校に行きたくて…』
先輩、それは叶さんだった
母〈だ、だめよ…いくらなんでも一人暮らしは…〉
そういう母の反対を押しきって、俺は故郷である町の高校に通った
叶さんがいるっていうのもあった、でもそれ以前に謝りたかったんだ
あの人に…
入学式で、代表としてステージにたってた不破先輩、一目みて分かった
だから彼が廊下を通ったとき、俺は教室を飛び出して、話しかけた
でも最初にでた言葉はごめんなさいじゃなかった
俺にはまだ心の準備ができていなかった
喉の奥で言葉がつっかえ、最終的にでた言葉は思ってもないことで、でも、それでよかった
俺は演じるのが得意なんだ
だから、初対面のふりして、不破先輩がほんとに好きなんだっていうのを体、表情で表した
…それでだんだんひかれてくなんて、思ってもなかったけどさ
苦手って言ってたのに関わることをやめようとはしなかったし、俺のことをよくみてくれていた
俺が不破先輩をずっとみてるのと同じぐらい、いや、それ以上
今、優しくされて泣いてる自分が情けない
ほんとに泣きたいのは先輩かもしれないのに、なんで俺なんかがっていまでも思ってる
…俺はどこからまちがえちゃったのかなぁ?
コメント
1件