「お前があの女兄だと?」
「そう言う事だ」
目の前に憎いあの女の兄、そしてネギの話によればコイツが俺に取り憑かせた張本人。俺の怒りの矛先の相手だ。しかし、こんな展開を全く予測してなかった俺は拍子抜けしてしまった。
「なんだ、飛び掛かってくると思ったが、拍子抜けだな」
「。。。。であんたがなんのようだ」
男はタバコに火をつけて話し始めた。
「あいつは10年前14才と言う若さでこの世を去った、腹違いの父親からの性的虐待で自殺した。それからだ、霊感が生まれつき強い俺は、成仏出来なかった妹の霊を毎日見るようになった。自殺霊っていうのは基本その場から移動は出来ない、移動できたとしても生前に行ったことのある場所という制限がある。殺人であればあのクソ親父に取り憑けたかもしれないが、あいつは神に背き自害した。」
「くそ親父は自宅に戻らなかったのか?」
「あぁ、自殺して取り調べで勾留されそのまま自宅に戻らず蒸発した。母親は男依存症があり、すぐに違う男を家に招きいれた。それからだ、妹は連れ込む男を次から次に呪殺し悪霊に変化していった。」
「どういう事だ?」
「あいつは、あの男をやらない限り成仏はできない、ただ母親といる男というだけで判別できず呪い殺していった。」
男はタバコにまた火をつけ話を続けた。
「俺も成長とともに霊力が上がり、霊との対話ができるようになったが、遅かった妹は完全な悪霊となり、対話のできる俺を宿とした、俺の中に入り移動してターゲットを見つける、そしてあいつの目的も見失った。復讐ではなく生への憧れと死への後悔だ」
「それがたまたま俺だったわけか?」
「たまたまなのか、波調なのかは、わからないが岡山のあんたのLive中継を動画で見ていた時に妹は電波を利用してあんたの元へ行った。」
「だからあのキャンプ場に呪術じゃなかったのか?」
「呪術かぁ、そう言われてみるとそうかもしれない。対話ができて唯一の家族の俺が野放しにしていたからな」
「今、妹はどうなってる?」
「あの女に浄化された」
「京子か?」
「そうだ、あの女は妹の霊波を辿り宿主の俺と住んでいるところまで突き止め出向いてきた」
「そして俺は妹の浄化の生贄にされた。」
「けどなぁ、あの女は選択肢は与えてくれた、ただ俺は生贄の道を選んだ。」
「お前、生きてんじゃねぇかよ、ふざけんな」
「確かにまだ生きている、霊能力は全て奪われて生命エネルギーも半分以上持ってかれた、霊能力がなければ即死だった。」
「京子は無事なのか?」
「あぁ、あいつはマジやべえ奴だ、あいつの領域に俺と妹は入らされ、あのコントロール不能の妹を諭した。でこう言われた」
「妹は無事に成仏させた、だが天が地獄かはこのあと審判がくだるが、その先は私にもわからない、お前はだいぶ寿命を削ったが残りの人生改心して人の為に尽くせ、これは契約だ、それと今回の件はお前の口であのオッサンに説明しろ」
「そういうと女は顔色変えず帰っていった。だからあんたとここに居る」
俺は複雑な心境だった、確かに被害者だが、この兄妹も苦しんでいたのは確かだ。京子もきっと俺が許すというかこういう心境になると思ってこの男を俺のもとへ送ったのだろう。
「すまなかった」男はその一言を最後に告げ、咳き込みながら店をあとにした。
俺はネギに電話をした。
「あの女の兄と会った。。。」
「姉御から聞きました、あの人の体はもって2年くらいだそうです。。。命を代償にしたようで切ないですが」
「たしかに別れ際は体調が悪そうだった。」
俺は久しぶりに実家に戻り、母親と妹に会い、3人で親父の墓参りにいった。
なんとなく親父がほっとしてるように感じた、これからは俺が家族を守る、そう親父の墓の前で誓った。
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