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「お前、魔王軍に目をつけられたようだな」
賢者のおっさんのその言葉に、俺は思わず硬直した。どこからともなく漂ってきた、煙の匂い。遠くに見える黒い雲。俺の背後でおっさんが冷静に言った。
「魔王軍の動きが活発になっている。異世界で生きていくには、魔法と体力の両方を鍛えなければならん」
「魔法と体力か……」
それは簡単に言うが、実際にやってみろと言われると途方に暮れる。魔法は未だに使いこなせないし、体力は無職時代の俺にとってはまさに未開の領域だ。
「お前が魔王軍に捕まるなんて、まだまだ先だと思っているだろうが、そうは問屋が卸さない。この世界は、お前が思っているよりずっと過酷だ」
おっさんは俺の表情をじっと見つめた。確かに、転生してみたものの、俺が異世界で生き残るために必要なものは何一つ持っていない。ただ、社畜スキルしかない。
「魔法の基礎をお前はもう一通り覚えた。だが、それだけでは足りん」
「基礎って……まだ何もできてないだろ」
「魔法を使うためには、まず“魔力”を集める感覚を掴むことだ。それから、魔力を使う“集中力”を鍛えろ。お前のように無職でボーっと生きてきた者に必要なのは、集中力と忍耐だ」
「……俺、無職の時からずっとボーっとしてたけど」
「だから、ここで鍛えないと死ぬことになるぞ。魔王軍は、ただ力を持つ者を狙うだけではない。異世界のルールを乱す者を、徹底的に排除しようとしている」
おっさんの言葉が、だんだん重く感じられた。魔王軍が迫ってくることを考えると、無職だった自分がこんなに呑気にしていていいのかと、少し焦りを感じる。
「さて、まずは体を鍛えろ。魔法の修行と並行してやらなければならん」
「体を……?」
「体力がないと、魔法を使ってもすぐに疲れる。魔法の威力を維持するには、まずは体を鍛えることだ」
「そっか……」
俺は言われた通り、体を鍛えることを決意した。しかし、異世界の鍛錬方法なんてまったくわからない。最初はおっさんに指示されるまま、無理やり岩を動かしたり、体を重い岩で押させられたりした。
最初は一切動かなかった岩も、何度も挑戦するうちに少しずつ動くようになった。腕も、足も、全身が筋肉痛で痛みを感じたが、それでも「これが本当に役に立つのか?」と不安に思いながらも続けることにした。
「お前、少しずつ筋肉がついてきてるな。そうやって少しずつ鍛えていけば、魔法も強くなる」
そう言いながら、おっさんは次々と新しい修行を課してきた。最初はただの岩動かしだったが、今度は魔法を使いながら体を動かすという難易度の高い修行だ。
「まず、腕に魔力を通して、そのまま岩を持ち上げてみろ」
「腕に……魔力?」
「そうだ。魔力を使って物を動かす力を高めるには、体の中を通るエネルギーの流れを把握する必要がある。それを掴めば、魔法を使う時の感覚が違う」
俺は、岩に手を触れて魔力を集中させる。だが、最初のうちは全く動かすことができなかった。体力はすでに限界に近かったが、おっさんの指導は厳しく、休む暇もない。
「もう少しだ。お前が甘く見ていると、すぐに魔王軍に捕まるぞ」
その言葉に、俺の体の中で何かがこみ上げてきた。魔王軍が近づいてきている。俺が弱ければ、すぐに捕まってしまう。
「くそっ!」
その時、力を振り絞って岩を引き上げた。最初はびくともしなかった岩が、少しだけ浮き上がった瞬間――俺の体中に一気にエネルギーが駆け巡った。
「おお、やっとできたな」
おっさんが微笑んだその瞬間、俺は自分でも信じられないような力を感じていた。しかし、その時、再び空が暗くなり、魔王軍の影が少しずつ近づいていることを、俺は感じ取った。
「……次は、魔法を使う準備だ。だが、焦るな。無理して使うなよ」
おっさんが言うその言葉の意味が、次第に明らかになってきた。魔王軍が目をつける前に、何とか力をつけて生き抜かなければならない。
次回予告
そろそろ魔王軍の部下の軍隊が近づいている、果たして、俺は魔法を使いこなし、魔王軍に立ち向かう力を手に入れることができるのか?
次回VS魔王軍