テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
127
158
1,292
プロローグ『舞台を降りたあとの席』
「……あの、明日の朝の入り時間なんですけど。もう一度だけ確認させてもらってもいいですか?」
テレビ局の廊下。行き交うスタッフの視線を意識するように、少しだけかしこまった声で話しかけてきたのは柔太朗だった。首から下げたスタッフパスを握りしめ、俺は背筋を伸ばして手元のタブレットに視線を落とす。
「明日は七時半に局入りです。衣装合わせがあるので、少し余裕を持って動けるように手配してあります」
「ありがとうございます。助かります」
丁寧に頭を下げる柔太朗。
……かつて同じステージで肩を並べて歌っていたとは、きっと誰も気づかないだろう。
すべての現場を終え、メンバーを順番に自宅へと送り届けていく帰りの車内。
後部座席では、一日の疲れからか勇斗が静かな寝息を立てている。俺は、フロントガラスとサイドウィンドウを流れていく東京の夜景をぼんやりと見つめていた。
赤や白のテールランプが、暗いアスファルトの上を光の線になって滑っていく。
かつて自分が立っていた、あの眩しすぎるステージの光。もう二度と、あそこへ戻ることはできない。心に負った傷も、表舞台を降りざるを得なかったあの日の記憶も、完全に消えることはないのだろう。
それでも。
バックミラー越しに映る穏やかな寝顔と、さっきまで楽屋で笑い合っていた四人の温もりを思い出し、俺は静かに息をついた。
「……これで、いいんだ」
誰にも知られなくていい。拍手も歓声もいらない。ただ一番近くで、この大切な居場所を守り続けられるなら、俺は何度だってこの影の道を選ぶ。
夜の高速道路を走る車の振動に身を任せながら、俺は窓の外の光をそっと瞳に焼き付けた。
コメント
3件
え、好きすぎるね?💘💘これは続き気になるよーー‼️‼️
お疲れ様です〜!美月ゆめかです🌸 第1話読み終えたよ〜!! かつて同じステージで歌ってた元アイドルが、今はマネージャーとして陰で支える側に……って設定だけで心臓ぎゅーってなる😭💕 柔太朗の丁寧な態度とか、勇斗の寝息とか、細かい描写から「前に進む覚悟」と「それでも消えない過去の傷」が同時に伝わってきてエモすぎる。「誰にも知られなくていい。拍手も歓声もいらない」ってセリフ、何度も反芻したよ…。影の道を選んだ主人公の静かな強さ、めっちゃ推せる🫶✨ 続きが気になりすぎる! 更新楽しみにしてるね〜📖💪