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黒鬼院さんの背後から姿を現したのは、全てが変わったあの日、私の目の前で殺された――
「雪……乃…?」
「お久しぶりです。お嬢様。」
あの日、雪乃は死んだはず。チョーカーしか取り戻せなかった。
それなのに……なんで……一体どういうこと…?
「さて、ここからのコトは頼んだぞ。雪。」
「かしこまりました。ご主人様。」
「あの日……雪乃は死んだんじゃなかったの……?私の目の前で吸血鬼たちに……。」
「お嬢様、部屋へご案内します。続きはそちらでお話ししましょう。」
案内されたのは、家具1つ置かれていない殺風景な部屋だった。
こんなところで何を話すというの……?
「ねえ、雪―」
「お嬢様は吸血鬼などと一緒に生活をしているのですか?」
「え……?」
「旦那様…奥様…使用人たち…そして私を殺した吸血鬼と暮らしているのか、とお聞きしているのです。」
「殺したって……じゃあ、何で雪乃はここに……?」
「私が、先にお聞きしているのです。お答えください。」
怖い……あんなに優しかった雪乃じゃない。笑っていない目も、不気味な笑い方も……私が知っている雪乃じゃない。
「たしかに……皆は吸血鬼だけど……でも…優しくていい人たちよ。」
「がっかりですよ、お嬢様。貴女は賢い方だったはず。それがこんなにも簡単に騙されているだなんて……。」
「わ、私は答えたわ。雪乃も私の問いに答えて。なんで、殺された貴女がここにいるの…?」
「復讐を果たすためですよ。」
「復讐……?」
「あの日……私は殺された。私が殺されたのは貴女のせいですよ。死んでも死にきれなかった。私は何も悪いことをしていないのに……特別な血液を持っているだけの貴女のせいで殺された。だから……今度は私が殺してやる。そう思った。」
臆したら負ける……雪乃は本気で私を殺そうとしている。
「私のせいで殺されたことは……本当に申し訳なかったと思っている。私のせいでたくさんの人が死んで……たくさんのものが失くなって……。それは痛いほど分かっている。でも……それで雪乃が私を殺したって残るものなんて何もない。雪乃は……本当はそんなこと平気で言える人じゃない。平気でできる人じゃない。騙されているのは雪乃のほうよ。貴女も黒鬼院さんに利用されているだけなのよ。」
「……うるさいんだよ……。やっぱり殺さなきゃダメですね。口で言っても分からないなら、その命で理解してもらうしかない。」
「お願い、雪乃、やめて!」
「そんなにやめてほしいなら、私を殺してみてはいかがですか…?貴女の首にかけられているロザリオ、本当は剣が隠されているんでしょう。それで私を刺せばいい。まあ、もしできれば、という話ですけど。」
たしかに、このロザリオは聖さんからもらった武器だけど……これを使えば私は助かるかもしれないけど……
でも……そんなこと……
「そんな汚いことはできない……ですか…?自分の手では殺せない……?誰かに守られていなければ生きていけない……?」
「そうじゃない……雪乃は私にとって大切な人だから……だから……。」
「じゃあ死んでくださいよ。お嬢様。」
どうすればいい…?どうすれば……この場を切り抜けられる……?
どうすれば……
≪私にはもったいないありがたいお言葉です。≫
≪お嬢様が私にと言ってくださったドレスを着られるだなんて…夢のようです。≫
私が雪乃のためにできることは………
「かは……。」
雪乃が襲い掛かってくる寸前で、ロザリオを抜き雪乃の胸を貫いた。
私にできることは……できたことは……雪乃を逝かせてあげること。
それしか思いつかなかった。
目の前で少しずつ消えていく雪乃。
次に生まれ変われたのなら、何も不幸に遭わず…幸せに生きてほしい。
「さようなら……雪乃。」
「やはり、ダメだったか……。」
黒鬼院さん……今のを見ていたの……?
「しかし、素晴らしかったよ。下僕を思って殺すだなんて……大変芸術的だ。そう思わんかね?」
「初めてです……こんなにも許せないと思ったのは……。」
「ほう……面白いことを言う。」
「貴方の目的は私だったのでしょう……?なぜ…こんなにも……残酷なことをするんですか……?」
「はて……おかしなことを言うねえ。彼女が死んだのはお主のせいじゃろう……?お主のせいで殺された。そして今日……お主の手により殺された。違うかい……?」
「それは……。」
「お主のせいでこれから死ぬ奴らがまだいる。可哀そうなことだ。お主のせいでまた誰かが死ぬんだ。」
そうだ……このままじゃ劉磨さんたちも巻き込んでしまう。
「彼らを助けたいだろう……?巻き込みたくないだろう……?それならわしと取引をせんか……?」