僕は彼女の名前を知れて、彼女に出会えて少し浮かれていた。会いたくなかったはずなのに、やっぱり会えて嬉しいのは彼女だから。でも……
「遅刻します〜!!!」
僕は走って教室まで行く。席に着いたと同時に、チャイムがなったのだった。
休み時間。
「るぅちゃんが遅刻しかけるなんて珍しいね〜!」
そう言いながら、莉犬が声をかけてきた。莉犬は僕の中学からの親友だ。
「もしかして、例の人に会えたの?」
そして、僕の前世の話を信じてくれる人。唯一、前世のことを話したことがある。莉犬は真面目に話を聞いてくれた。そして、『会えたらいいね。そんでもって、今度は結ばれたらいいね』なんて言ってくれた。
「会え……たよ……」
僕はそう言った。
「どんな人?どんな人!?」
莉犬は少し嬉しそうに尋ねる。
「ん〜……。優しくて、可愛くて、礼儀正しい……。けど、ちょっと抜けてるお嬢様……かな、笑」
「そっかぁ〜!!よかったね!」
莉犬は自分の事のように喜んでくれた。
「で、!!どうなったの!?」
「どうって……?」
僕は莉犬の質問に少し首を傾げる。
「友達になれたの?それとももう付き合ったの?」
「つ、つ、つ、付き合うって!!出会って1日の男女がするわけ!!!」
「あ、お見合いで出会ったわけじゃなかったんだ〜!るぅちゃんのおじいさん、るぅちゃんにお見合いさせようとしてるって前聞いたからさ〜……。」
「あっ……。」
僕は莉犬の一言でそのことを思い出す。
「えっ……るぅちゃんもしかして忘れてたの……?」
「はい……。」
その時、父からLI○Eが届く。
『お前、お見合いすることになったから〜!ちなみに、今週の日曜な〜!!場所はまた連絡する!』
「りいぬぅ……」
僕は情けない声で莉犬を呼ぶ。
「るぅちゃん……これは……ピンチだね!」
「僕、この話は無かったことにしようかな……」
「そうしたら……?」
「うん……」
僕は父親に連絡を入れる。
『お父さん……あのね。僕、好きな人が出来たから、お見合い……したくないです……』
そう言うと、すぐ連絡が帰ってきた。
『だよな〜!じいさんにやれって言われたけど、父さん乗り気じゃないし、そもそも遠方にまだ声掛けてないんだ!!お前の意志を尊重したいしな!ってことでさっきの話は聞かなかったことにしてくれ!』
「るぅちゃんぱぱって……その……面白いよね……!」
莉犬は何とか慰めようとしてくれている。
「僕は疲れました……。」
反抗しようとしたその意志を汲み取ってくれるのは嬉しいけれど、ちょっと意気込んだのが馬鹿らしく感じる。
「とりあえず、一件落着したし、例の人に合わせてよ!友達になったんでしょ?」
莉犬は僕に尋ねる。
「友達……になんですかね?」
「え、?なんで疑問形?」
「いや……ちょっと話しただけですので……」
僕は不安になる。
「それは確かめてきなよ!同じ学校?クラスは!?」
莉犬の怒涛の質問に、僕は思わず答えてしまう。
「同じ学校の1年3組、夢野○○さん……」
「よし!じゃあ行くよ!!」
「えぇぇぇ!?」
莉犬の行動力には毎度驚かされてるが、行くよ!は流石に無理だ。怖いし。しかし、僕は莉犬に負け、背中を押されながら、○○の教室に向かったのだった。
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