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#異世界転生
しめさば
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耀聖(ようせい)
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シヴァに体を乗っ取られた釈迦如来は手を上げると、謎の生物達の目の前に弓矢が現れ、手に取った謎の生物達は弓矢を構えて弓道弦を引く。
阿修羅と阿弥陀如来、悟空達がいる地面にも向けられ、釈迦如来が腕を下げると一斉に矢が放たれる。
シュシュシュッ!!!
星熊童子は放たれた矢の存在を気にする事なく、小桃に向かって引き金を引きながら走り出していた。
パンパンパンッ!!!
キンキンキンッ!!!
放たれた弾丸を小桃は視界に捉えきれる範囲の中で刀で弾くが、弾き切れなかった弾丸が小桃の太ももに当たり血が噴き出す。
ブシャッ!!!
小桃は太ももから血を流しながら、頭上から降り注ぐ弓矢達を走って避けていると、物凄い速さで星熊童子が小桃の目の前に現れ刀を振り下ろした。
ブンッ、キィィンッ!!!
「あはははっ、怪我しているのに反応が良いね?お姫様」
「はぁっ、はぁっ、殺気を隠さずに攻撃してくるんだもんっ。嫌でも、星熊童子の居場所も分かっちゃうよ」
「お姫様は今まで出会って来た妖怪の中で、私の事を理解してくれそうな子だなって思ったよ。だって、私達?同じ存在から産まれた人を愛しているでしょ?」
「同じ存在…?小桃は悟空が好きなの。美猿王が好きなんかじゃないよ」
「悟空は美猿王の中から産まれて、美猿王は悟空の産みの親みたいでしょ?私達が封印されてる間に、悟空って言う存在が産まれくるとは思ってもなかったけど」
二人が話してる間も謎の生物達が空から矢を放ち、地面に数えられない矢が突き刺さり、小桃は横目で悟空の事を確認する。
鬼達は戻って来た美猿王の周りに立って降り注がれる矢を刀で弾き、悟空の周りには誰もいない。
三蔵達は天界に行っており、小桃達と共に下界に残って三蔵達より一足先に美猿王達に追いつき、二人の視線が交じり合っていく。
「ゴホッ!!!」
「兄者!」
天の腕の中で意識を失っていた邪の意識が戻り、胃からこみあげて来たものを吐き出したのは血の塊だった。
荒くなった呼吸を整えながら邪は体を起こす為に天の両肩に触れた時、片腕がない事に気付くと唇を強く噛む事しか出来ない。
邪は邪なりに妹である天の事を大事にしていたし、彼女の事を家族として愛していた。
自分が居ない間に鬼達の相手を一人で相手させたのも自分、こうなる事くらい頭の回転が速い邪なら簡単に想像がついていた事だ。
あの砂の中にある神殿で美猿王と話した時から冷静ではいられなくなり、邪自身も自分の心の中で激しく動いている感情をどう説明したら良いのか分かっていない。
バチバチッと静電気のようなものが邪の肌に走り、自分達兄妹の前に悟空が居る事を肌で感じた。
「そこに居るのは悟空様ですか」
「今にも死にそうな体の状態で、ここに来たのは何故だ」
「フッ、それは秘密ですよ。僕達は今すぐに死ぬ訳じゃありませんから、悟空様が気にする事じゃないですよ」
「そこの兄妹は、お前の事が好きらしいぜ?悟空」
邪と悟空の会話を聞いていた美猿王は意地悪な笑みを浮かべ、天と邪魔に視線を向ける。
悟空の目に映った美猿王は体から神々しい光のオーラが放たれ、美猿王が妖怪でも人でもない何か他の存在になってしまったと悟った。
美猿王の首に金色のチェーンのネックレス、太陽と蓮の花が彫られた円型のチャームが眩い光を放つ。
「お前、この世界を牛耳ってる奴を知ってるだろ?ソイツがあの神の事を操って、馬鹿みたいな攻撃を仕掛けてきてる。違うか?」
「アンタも操られてんだろ、シヴァの駒としてだ」
悟空の言葉を聞いた温羅達の眉間に深い皺が入り、悟
空に対しての嫌悪感を示す。
天邪鬼の二人も初めて聞く神の名前を聞き、美猿王の方に顔を向ける。
「俺は天耳通を使えるだろ?故に世界のありとあらゆる言葉、声を聞けてしまう。知っていたさ、今世の潰すべき存在が誰なのか」
「ちょっ、王!それなら、何で俺達に話してくれなかったんだ⁉王の事を操ろうと考えてる輩が居るって事を!!!俺達、そんなに頼りないですか」
「金平鹿、ちょっと落ち着けって」
感情が高ぶった金平鹿を温羅が宥めていると、美猿王は空にいるシヴァに乗っ取られた釈迦如来を見つめた。
「お前等は俺の家族だ、信用していない訳がないだろ?アイツを騙す為に、お前等に話していなかっただけだ。この時が来るまでな」
「この時が来るまでって、どういう意味だ。アンタ、どこまで聞こえてんだ?世界の声を」
「全てだ、シヴァが俺の事を敵対視し始める事も、観音菩薩が死んだって事もな」
ドンッ!!!
美猿王がそう言った瞬間、悟空達の前に鳥居が現れ、中から三蔵達が勢いよく後ろから背中を押されたような状態で現れる。
「うわっ!?悟空っ!?え、美猿王達と戦ってる時に戻っ
て来た感じ?これ」
「悟空、俺の言葉が信じられないなら、人間のガキに聞いてみたら良い。天界で、観音菩薩が死んだかどうか」
「何で、美猿王が知ってんだよ…?」
三蔵の反応を見たら美猿王が言っている事が事実で、観音菩薩が本当に死んでしまった事が分かった。
「観音菩薩もあっけなく死んだんだな」
「今の言葉を取り消せ」
「手も足も出なかったんだろ、シヴァに」
「あの時の状況を見ても居ないのに、知ったような口を叩くな」
「お前等の中で、観音菩薩は戦力に入ってなかっただろ。アイツは結界を作り出す事を得意とし、先頭は明王とお前で請け負っていたって所だろ。まぁ、お前等を下界に送る為に無駄死にしたか」
ガシッ!!!
美猿王の心無い言葉を聞いた弥勒如来は、唇を強く噛みながら美猿王の胸倉に手を伸ばし、乱暴に自分の方に引き寄せる。
だが、温羅達がすぐに弥勒如来を囲み、首筋に刃を向けていた。
「観音菩薩の死を無駄死にだと決めつけるな!!!アイツはっ、三蔵達に思いを託して死んだんだ」
「お前が神よりも人間の方が似あっているな、思考が人間に近い。観音菩薩を王のように称え、武士のように忠義を誓って。他の神のように欲がない、人間のように怒りの感情が豊かだ」
「何、冷静に俺の事を分析してる。これは遊びじゃないんだよ、お前もこの戦いに参加してんだよ。お前は鬼達が死んだとしても、そんな風に冷静でいれんのか」
「俺の胸倉を掴んで、何を話すかと思ったらそんな事かよ」
ガシッ!!!
そう言いながら美猿王は弥勒如来の手首を掴み、乱暴に胸倉を離させた後、今度は美猿王が弥勒如来の胸倉を掴んで引き寄せた。
「観音菩薩の側で何を見て来たんだ?お前も、そこにいる人間のガキも、どいつもこいつも何を分かってねぇ」
「何だと?お前に何が分かってんだ」
「俺達は経文を奪い合ってんだ、自然と殺し合いになるのは当たり前だろ。まさか、争いにならないとでも思ってたんじゃねーだろうな」
「は?お前等がさっさとこちらに渡せば、こんな事になってなかったんじゃねーのか」
弥勒如来が怒りに身を任せた言葉を吐いた瞬間、温羅と夜叉、金平鹿、縊鬼の四人が同時に弥勒如来に刀を振り下ろすが、刀が弥勒如来の体に触れる事が出来ない。
キィィンッ!!!
目に見えない壁のような物に触れた感触が刀の刃から伝わり、温羅っがゆっくりと三蔵の方に視線を向ける。
「へぇ、コイツに結界を張った感じか。なんの小細工も無しに、王に近付いてくると思ってなかったが鬱陶しいな」
温羅は温厚な話し方で言葉を吐いたが、言葉を向けられた三蔵は全身鳥肌が立ち、額からは冷汗が流れ落ちた。
美猿王は横目で哪吒と風鈴の二人の姿を捉え、頬についている妖石と三蔵達が持っている神器を見つけ、温羅と夜叉に視線を送る。
視線を送られた夜叉はすぐに風鈴の元に行き、何かを察した沙悟浄が鏡花水月を構えて夜叉を待ち構えるが、夜叉の背後から縊鬼が飛び出して沙悟浄に向かって刀を振り下ろす。
ブンッ!!!
キィィンッ!!!
沙悟浄が縊鬼の攻撃を受け止めている間に、夜叉が風鈴の元に向かい、風鈴が刀を構える前に夜叉の刃が風鈴の体に届く。
ブシャアアアッ!!!
「風鈴!!!」
「ガハッ⁉」
夜叉に腹を斬られた風鈴の体から勢いよく血が噴き出し、血肉と共に小腸がズルッと血で滑ったように傷口から姿を現す。
ビチャビチャッと嫌な音を立てながら小腸が溢れ出てしまい、風鈴はこれ以上出てこないように手で押さえるが無駄な事は人気で分かる。
地面に出来た血溜まりを踏みつけ、夜叉は痛みで苦しんでいる風鈴の前に立つ。
「クソッ、どけっ!!!どいてくれっ」
「僕達に逆らいに来たんでしょ?だったら、黙って見てなよ。仲間が殺される瞬間を、記憶に刻み込みなよ。本当の絶望を知らないくせに」
「何だって?本当の絶望を知らないって…、どう言う意味だ」
「君達ってさ、大切な人が死んだのって一回だけでしょ?一回しか死ぬ姿を見た事がないんでしょ?良いね」
縊鬼の言葉を聞いた沙悟浄の眉間に深い皺が入り、愛猫の玉が自分の為に命を落とした姿が脳裏に浮かんだ。
「良いねってなんだよ、馬鹿にしてんのか?お前等だけが悲しんじゃないんだよ、俺達だって悲しい思いをしてきたんだ。お前達だけじゃない」
ブンッ!!!
縊鬼が振り翳してきた刀を払い除けると、沙悟浄の周囲に水の塊が浮き上がり、縊鬼の足元の地面から何本か骸骨の手が飛び出す。
ドコドコドコッ!!!
沙悟浄と縊鬼の二人が本格的に戦いを始めようとしている中、縊鬼の背後に大きな影が伸びる。
縊鬼は後ろを振り返らなくても、誰が自分の後ろに立っているのか分かった。
「その人は僕が殺します、僕が殺します」
「お前に殺せるの?」
「殺せますよ、姫の役に立たなければ…。そうだよな?陽春」
そう言って現れた緑来の姿は、沙悟浄が知っている緑来ではなく、大きな骸骨の足に抱きついている緑来は廃人そのものと化している。
痩せてこけた頬、落ち込んだ目、大きな黒い隈、爪を噛んでボロボロになった指先、ぶかぶかになった服を見て、沙悟浄の表情が歪んでいく。
「緑来っ…、お前。なんて姿をしてるんだよっ、それは陽春なんかじゃないんだよ」
「沙悟浄…、アンタ羨ましいんだろ?俺と陽春との仲を羨ましいと思ってるんですよねぇ?頭ぁ」
口の両端を横に広げさせながら笑う緑来の表情は、目の前にいる沙悟浄を怖がらせるのに十分な笑みだった。
死んだ魚のような目をして、楽しくもないのに笑っている姿は恐怖でしかない。
緑来がこうなってしまったのは陽春が死んでしまったから、緑来は愛していた女を目のまで失ってしまったから。
痛々しい姿の緑来の姿を見て、沙悟浄は仲間であった緑来の事を救いたかった。
「このまま陽春の幻覚を見たまま死なせるのが、緑来にとっては幸せなのかもしれない」
「…」
「けどな?緑来、陽春はお前のこんな姿を見たくて死んだんじゃねーだろ。お前に、愛した男に生きてほしくて死んだんだろ⁉緑来、お前だって本当は分かってるんだろ?陽春が死んでるって、事実から目を逸らしてる事も、自分自身でも分かってんだろ」
「黙れ、黙れ黙れ黙れ!!!」
沙悟浄の言葉を聞いた緑来は自身の髪を掻き毟り、指先に地肌を傷付けた所為で血が付着し、同じ言葉を何度も繰り返す。
「あぁ、やっぱり姫の言う通りだった。頭はおかしくなっちまったんだ、そうか俺達の敵だったんだ。ははっ、敵なら殺さないと」
緑来は指に絡まった細い糸を引っ張ると、糸に吊るされたナイフが何本か現れ、緑来が糸を引っ張るとナイフ達が沙悟浄の元に向かって飛ばされる。
シュシュシュッ!!!
カチャッ、パンパンパンッ!!!
猪八戒が紫洸を構え、沙悟浄の元に飛ばされたナイフ達を次々と撃ち落とすと、縊鬼がゆっくりと猪八戒に視線を向けた。
人間の本能で温羅の事を危険人物として認識してしまったのか、三蔵の指先が小刻みに震え始め、温羅が一瞬で三蔵の目の前まで距離を詰める。
「っ!!!」
「お前は先に殺しておくか」
ブンッ!!!
キィィンッ!!!
目の前に来た温羅が三蔵に向かって刀を振り下ろした時、太刀を抜いた哪吒が三蔵の前に移動して攻撃を受け止めた。
温羅の力が込められた刀は太刀の刃を通して振動が伝わり、ビリビリと手のひらに痛みが伝わり、哪吒の一瞬の隙をついた温羅が哪吒の腹に蹴りを入れる。
ドカッ!!!
「ガハッ⁉」
腹を蹴られた哪吒の体が後ろ向きで宙に浮き上がり、空中で体の自由が利かなくなった哪吒に向かって温羅が肩に刀を突き刺す。
グサッ!!!
「哪吒っ!!!」
温羅に肩を刺された状態のまま地面に押し倒された哪吒を三蔵が助けに行こうとしたが、地面に次々とシヴァの使いである謎の生物達が地面に降り立ち、ゆっくりと悟空達と距離を詰めて行く。
ドサッ!!!
「あの化け物、下界にも居たのね。しかも数が多いって、え?」
シュンッ!!!
ブシャブシャブシャッ!!!
泡姫の横を青龍刀が通り過ぎ、謎の生物達の体を次々と貫き、自由自在に動き回る青龍刀は血肉を浴びる度に強度が増しているように見えた。
押し倒された哪吒は肩に刺さった刀を手で抜こうとするが、温羅は力を入れて抜かれないように抑え込み、妖石が付いている頬に触れる。
「妖怪の気配も神の気配を纏わせていると思ったら、この石から放たれてたのか。この石は君の体を生かしてる命の源か」
「ゔっ⁉は、なせっ!!!」
「離す訳にはいかねぇな?毘沙門天の操り人形だったんだろ?お前の愛しの御主人様は釈迦如来の隣に居るぜ?見てもろよ」
温羅に言われて哪吒は視線を空に向けると、釈迦如来の左右隣に浮いている面を着けた異様な姿をした化け物が視界に入った。
綺麗な白髪の長い髪と自分達と同じ金色の長い髪、毘沙門天と吉祥天の特徴なのは哪吒がよく知っている。
【まさか、二人は死んだのか?誰に殺されたんだ?もしかして、釈迦如来の手のよって姿を変えられてしまったのか?】
変わり果てた姿を見ても、哪吒がすぐに沸いた感情は困惑と怒り、二人にされてきた仕打ちの数々ばかり。
哪吒が抱いた感情は当然の事で、毘沙門天と吉祥天がしてきた事は非道そのもので、けして作られた存在でもしてはいけない事だ。
だが、哪吒の中で毘沙門天が優しかった頃の記憶も蘇ってきてしまう。
毘沙門天が自分の子供のように大切に哪吒を抱き上げ、読み書きや言葉、普通の子育てと変わらない事を一番最初にしたのは哪吒だった。
幼い日の暖かな記憶は、確かに毘沙門天と哪吒の間にあり、哪吒が心の奥底にしまい込んでいた感情が蘇る。
哪吒の中に残っている二度と戻る事ない美しい記憶、取り消す事が出来ない汚れてしまった記憶、殺された哪吒の同志達。
【あの時は、私の事を愛してくれていましたか】と、ずっと毘沙門天に聞きたかった言葉を哪吒は言いたかったのだ。
「へぇ、君は毘沙門天に酷い事をされてきたと思うけど、そんな顔をするって事は…さ。毘沙門天の事を愛しているのか?」
パァァンッ!!!
温羅がそう言った瞬間に頬に小さな痛みが走り、頬から何か垂れて来る感覚がして指で拭うと液体の正体は血液だった。
発砲音がした方に温羅が視線だけで追うと、三蔵が構えている霊魂銃の銃口から灰色の煙が出ているのが見える。
「哪吒から離れろよ」
「…」
三蔵が温羅の事を睨みつけている時に、美猿王が悟空に見えないように長い爪で自身の指を傷付け、その指を軽く動かす。
ビュンッ!!!
キィィンッ!!!
視界には捉えきれない速さで、血統術で作られた矢が三蔵の目の前まで迫り、三蔵が矢の存在に気付く頃には悟空が如意棒で弾き返していた。
「悟空っ!」
「ボサッとすんな、三蔵。今までの美猿王とは訳が違う」
悟空の姿を見た三蔵はホッと胸を撫で下ろすも、悟空の言葉で安心感はすぐに消えてしまう。
「美猿王から妖気を感じないんだっ、あのネックレスから強い何かを感じる」
「あのネックレスは、太陽神が身に付けていた神器だ」
悟空と三蔵の会話が聞こえていた弥勒如来が、刀を構え直しながら会話に入っくる。
「太陽神かなんだかは知らないが、これはもう美猿王のモノ。お前達ではなく、美猿王を選んだのだ」
話しながら自分の元に帰って来た青龍刀を手に取った美猿王が、一気に悟空と距離を詰め鋭く光る青龍刀の刃を突き、悟空は如意棒を構えて攻撃を受け止めたのだが、青龍刀の破壊力は凄まじかった。
キィィンッ!!!
「っ⁉」
バキッと音を立てながら如意棒にヒビが入り、悟空の足元が青龍刀とぶつかった衝撃で浮き上がり、美猿王が青龍刀を持つ手に力を入れて押し込む。
ドンッ!!!
如意棒に重圧を掛けられた悟空は唇を強く噛んで攻撃に耐えている姿を、星熊童子と戦っている小桃が見ていた。
「悟空っ」
「王子様が気になる?お姫様。だけど、だーめ」
カチャッ。
悟空に視線を取られている小桃は腹に冷たい感触がし、視線を向けると星熊童子が銃口を突きつけているのが見え、小桃の感情を読み取ったように刀から冷気が放たれる。
パキパキッ…。
小桃の腹に突きつけていた銃の銃口が白く凍り、銃としては使い物にならなくなってしまい、星熊童子の左足の太ももの皮膚に氷が張り付く。
刀から放たれた冷気は吹く風と共に広がって行き、空から降り注がれる矢すらも白く凍り、地面も砂漠の砂さえも白く凍り始める。
真夏の太陽の灼熱さえも冷やし、木々も建物も全て凍って行き、真夏の季節から真冬に早変わりした。
神力身代わり代行を加えた刀は白虎の意志が強く込められている為、小桃を守護する事に尽力を注ぎ、彼女を守護する役目を忠実に守っている。
【分かってる、白虎が守ってくれたんだよね。白虎が側に居てくれてる、小桃は一人で戦ってる訳じゃない】
そう心の中で強く思った小桃の目付きは真剣なものに変わり、星熊童子も何かを感じ取ったのか、へらへらする事をやめた。
タンッ!!!
小桃と星熊童子は同時に動き出し、同時にお互いに向かって刀を振り下ろす。
ブンッ、キィィンッ!!!
「あの二人の間に私達は入れないよ」
「小桃達が入れないって、どう言う意味?」
「分からない?王と悟空はこの世界で、誰よりも特別な関係なの。だって、そうでしょ?同じ体の中から、もう一つの人格が生まれたんだもん」
「小桃達が思ってる以上に、二人には強い縁で結ばれてるのは分かるよ。貴方も小桃も同じようなものじゃない」
「私とお姫様が同じ?同じじゃないよ」
ドカッ!!!
そう言いながら星熊童子が小桃に蹴りを入れ、小桃は瞬時に受け身を取って体へのダメージを半減させて、再び星熊童子から距離をとった時だった。
グサッ。
「鬼熊般若黒死」
星熊童子が地震の刀を地面に突き刺して鬼の仮面を顔に装着すると、星熊童子の影が大きく膨張し、中から
出て来たのは紫色の肌をした大柄の般若。
浴衣のはだけた部分から見える鍛え上げられた筋肉、浮き上がる血管、蓮の花が体に巻き付き、星熊童子よりも一回りも大きい男が刀を構えている。
鬼熊般若黒死《おにぐまはんにゃこくし》とは、星熊童子が数々の神達の命を奪い、殺された神達の怨念が集まって作られた鬼。
星熊童子自身の罪とも呼べる死霊の鬼を侍らせる姿は鬼の姫そのもの、彼女は言葉の通り修羅の道を自ら進み、王の為に全てのものを差し出した結果であった。
「私は王の為に自分から修羅の道を歩み、多くの神達の命を奪った。我が、王を本物の王にする為に。王の女として、鬼達を束ねる姫として、お前の事を殺す」
【全ては愛する我が王の為、王の進む道に敵が居れば殺すのみ。全ては御身の御心のままに】
星熊童子が数千年経っても変わる事のない近いをたて、小桃に刀を向けた。
コメント
1件
お疲れさまです、読み終えました。小桃が白虎の意志を受け取って、星熊童子と真正面から向き合う場面がすごく熱かったです。あと、沙悟浄の「本当の絶望を知らない」って言葉に縊鬼が返すシーン、あそこ胸にきました。哪吒の過去と美猿王の覚悟、二人が特別な縁で結ばれてるのも、この物語の重みを深くしてるなって思います。次が気になりすぎます🌙