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渋滞に巻き込まれなかったため、早めに帰って来ることが出来た。夕食を済ませてから都心部にある高級ホテルの駐車場に車を停め、荷物を持ってフロントに向かう。
宗吾が受付をしている間、六花はロビーのソファに座ってその様子を眺めていた。再会して間もないのに、不思議と離れていた時間を感じない。
そういえば今までもこんな感じだったかも──お互いに距離があっても、縮むのはあっという間。一瞬で身近な存在になってしまう。
その時に入口の自動ドアを抜ける親子の姿が目に入る。両親に挟まれ、女の子が楽しそうにおしゃべりをしていた。
いつかはまーちゃんとあんなふうにおしゃべりをしたりするのかな……どんな女の子になるのかしら──そんなことを考えていると、突然娘のことが恋しくなってきた。
六花は宗吾の姿を確認してから席を立ち、ホテルの外に出る。それからスマホを取り出して、母親に電話をかけた。
呼び出し音が鳴り、
『はいはーい』
と母親の明るい声が耳に響く。
「お母さん、六花だけど」
『どう? 久しぶりの友だちとの時間は楽しく過ごせてる?』
「うん、思っていた以上だったかも……。あの、まーちゃんはどうしてる? ちゃんとミルクも離乳食も食べてる?」
『大丈夫。だけどやっぱりお母さんが恋しくて泣いちゃう時もあるけどね。まーちゃんにはお母さんの匂いとか肌触りとかがわかるみたい』
そんなことを言われたら胸が苦しくなって、今すぐ家に飛んで帰りたくなる。知らずうちに目からは涙が溢れ始めた。
「どうしよう……まーちゃんに会いたいよ……」
やっぱり一週間なんて長すぎる──今まで二人で頑張ってきたのだ。心の支えになっていた娘と突然離れされてしまい、胸にぽっかりと穴が空いたようだった。
宗吾のことは好き。再会をしてから二日と少し、久しぶりの感覚に新鮮さを感じていた。だけど娘の代わりにはならない。
『あらあら、六花を不安にさせるつもりはなかったのよ。ごめんなさいね。まーちゃんは元気だから、久しぶりの休みと思ってゆっくりしなさいね!』
通話が切れても六花の涙は止まらず、急に寂しくなる。一度家に帰りたいな……でも帰ったらもう戻って来られなくなりそう──そんなことになったら過去の繰り返しになってしまうのはわかっていた。
だからと言って宗吾のそばを離れたいわけではなく、むしろそばにいたいとすら思う。矛盾している考えに六花は苦笑する。
どうにもならずに立ち尽くしていると、ひんやりとした夜風が体を撫でていく。ぶるっと体を震わせた瞬間、背後から突然肩を掴まれた。
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#再会
#一途な思い