TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

離婚します  第一部

一覧ページ

「離婚します  第一部」のメインビジュアル

離婚します  第一部

42 - 第42話 結婚離婚祝い

♥

10

2024年11月01日

シェアするシェアする
報告する

次の週末、綾菜と翔太、健二がやってきた。

料理はテイクアウトのお寿司、それから何故か旦那が得意になったけんちん汁、私がサラダを作って、綾菜がケーキを焼いてきた。


テーブルに料理が並べられて、お昼だというのにビールも出して和やかにお祝いの宴が始まった。


ホテルで健二を見かけたことは、誰にも話していない。

そのせいか、健二もいつもと変わらない態度だ。


「やっぱりさ、ここは乾杯だよね?」


旦那が言う(元旦那だけど、元は面倒だからはずしとくことにする)。


「そうだね、じゃあ…綾菜と健二君、結婚記念日おめでとう!末永く幸せにね」


わざとらしく、乾杯の音頭を取る。


「お母さんと進さん、離婚おめでとう!これからはそれぞれ好きなことして元気に生きてってね」

「あはは、ありがとう」

「うん、ありがとう」

「離婚おめでとうって、変ですよね?」


健二が言う。


「もめずに離婚なんて、おめでたいよ」


綾菜が答える。


「そうよ、浮気!とかじゃないから揉めないんだよ」


わざと浮気を強調して、私も答える。

健二の顔色がちょっと変わった気がしたけど、すぐに戻った。


「ぼく、ケーキたべたい」

「わかった、切ってあげるね」


わいわいと食事が始まった。


「進さん、料理始めたんだって?」

「そう、未希ちゃんに教えてもらって少しずつやってるよ。このけんちん汁は、なかなかうまくできるようになったんだ」

「どれどれ?ん、あ、ホントだ、美味しい。お母さんの味に似てるね」

「先生だからね、似てくるんだろ」


旦那とこんなにしゃべる綾菜を初めて見た気がした。

もしかすると、今が二人にはいい距離感なのかもしれない。

健二は、ビールを飲みながらお寿司をつまんでいる。


「ねぇ、健二君も料理しない?」


私から話しかけてみる。


「え?いやぁ…仕事、忙しいんでちょっと」


目を逸らす。


「いまからおぼえとけば後々助かるよ、たとえば…」

「え?なんですか」

「離婚したときとか…」

「ぶっ!は?え?なんで…」


ビールを吹き出した健二。

慌ててティッシュを取る。


「いやぁだ、どうしたの?健二、こぼしちゃって」


綾菜が振り返った。


「あ、慌てて食ったから、なんでもないよ」

「私が、健二君も料理したら?いつか離婚したら助かるよって言ったんだけどね」

「離婚?私と健二が?ないないない」


綾菜は、大袈裟に首を振った。



「そういえば、最近、すごく忙しいんだって?健二君。綾菜が言ってたけど」


わざと仕事の話を振ってみる。

先週ホテルに来た時も、綾菜には残業だと言っていたはずだから。


「あー、はい、ありがたいことに忙しくさせてもらってます」

「でもさ、サービス残業なんかやっちゃダメだよ、働いた分はきっちり手当てをもらわないと!ね、綾菜もそう思うでしょ?」


綾菜も話題に巻き込む。


「そうなのよ、帰りが何時かわからないとご飯の準備も、翔太を寝かしつけるのもタイミングがわからないし。そんな思いして待ってるんだから、ちゃんと残業代は欲しいよ」


つんつんと、健二の脇をつつく。


「うん、わかった、これからは出来るだけ早く帰るよ」

「違う違う、残業はしてもらってもいいの、お給料が増えるのは助かるし。サービス残業をやめてほしいかな?」


わかったよ、と健二。


「お金の切れ目が縁の切れ目、これは事実だよ、だから今のうちにある程度の貯蓄は必要!」

「あ、進君、実感こもってますねー♪」


旦那の発言に、私は少し笑ってしまった。

こんな風に話をする人だったんだ。

離婚してからわかることが、いくつかある。


「あーっ!!そういえば!」

「びっくりした、何、綾菜、突然大きな声を出して!」

「結婚記念日のサプライズ、どうなった?」


どうなった?と聞かれているのは健二。


「え?何か約束したっけ?」


少々慌てた様子。


「違う、私がサプライズを仕掛けたんだけど。健二が何も言ってこないってことは、まだ見てないってこと?」

「なんのこと?」

「あ、今日は仕事用のパソコンバッグ持ってないか」

「持ってないよ、さすがに。パソコンがどうかしたの?」


うーんと首をかしげながら、何か考えている綾菜。


「でも言ってしまうと、サプライズじゃないしなぁ…」

「言われないとわからないかもしれないよ」

「あのさ、健二がいつも使ってる仕事用のメモリー、あるでしょ?こう、なんかこれくらいの、パソコンに刺して使うヤツ」

「あぁ、フラッシュメモリー?」

「それ!最近、一個増えてなかった?」

「え?」


健二君の顔色が変わったのを私は見逃さなかった。

あの日の403号室の忘れもの。





離婚します  第一部

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

10

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚