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9月 1日_
夏休みが終わりに近付き
憂鬱な気持ちを溜息で誤魔化していると
図書館で静かに本を読んでいると
« しゃららんっ »
何処か遠くで 鈴の鳴る音がした気がした
僕はその音を聞いて もうすぐ行われる
『 宵祭 』の事を思い出した
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宵祭___
この街で開催される ごく普通のお祭り
だけれど そのお祭りは何故か
“数十年に一度しか行われない”
僕は 不思議で仕方がなかった
普通 お祭りっていうものは
毎年行われるものだと思っていたからだ
でも この街の老人は みんな”イカれてる”
ある日突然
道端に蹲って 『宵闇様』と祈りを捧げるのだ
だから 数十年に一度 行われる この祭りの事を
僕は 『呪い納め』だと思っている。
そういう気の悪いものを納めることを
祭りとも呼ぶことができるから
そして 宵祭には きまって 舞が行われる
《 水守家 》と呼ばれる 一家が披露する
何とも言えない 神秘的な舞だ
鈴を« しゃん しゃん »と鳴らしながら
女性達が着物に身を包み 舞を踊る
本当に普通な舞 特に変わった所はない
だけれど、僕はその舞を初めて見た時
ふと思った
この人達_本当に人間なのだろうか
そんな単純で証明しようのない 問い
誰も信じようともしないし
答えようともしない
ただ…僕はやっぱり思う…”アレは人間じゃない”
何故なら 舞を踊っている人達の笑みは
非常に不気味だから
笑顔だけれど、笑顔じゃない
誰かに操られているような気がする___
僕は読んでいた本を閉じ、溜め込んでいた息を
ゆっくりと吐き出してから 短く息を吸い
静かに天井を仰いだ
« 今年の祭りの舞も あんな感じなのだろうか »
舞自体は 非常に綺麗だと思う
だけど 踊っている人達だけは やっぱり
不気味に思える。
「………そんな事言っても仕方がないか」
今年の祭りの舞は 見ないようにしよう
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宵祭 当日
独りで 屋台を巡っていると
[ どんッ ]
誰かとぶつかってしまった
「すみません…」
僕が謝るのとほぼ同時に
ぶつかってきた女性が僕の腕を掴んで
涙を流しながら必死に僕に助けを求めてきた
「助けて下さいッ!この祭りは…呪われてる!」
「……え?」
女性を近くでよく見てみると
短髪の白い髪に 黒い切れ目が特徴的で_
着物___浴衣ではないだろう
だけれど これはただの偶然かもしれない
この人は……踊り子ではないかもしれない
そんな事を考えていると、大勢の人集りから
少人数の大人達が現れ 彼女を抱えて行った
「……嵐みたいだったな」
僕は 深い溜息をついてから
また屋台を巡って行った
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【 どどんっ 】
太鼓の音が辺りに響き渡った。
その後を着いて行くかのように
三味線の音・笛の音
鈴の音が聞こえてきた
「舞が……始まったのか?」
僕は 少しだけ躊躇してから 音が聞こえる方へ
足を運んだ
段々 音が大きくなるに連れて、前の観客も
何故か 老人ばかりになる
そして 舞が見えた瞬間 僕は息を呑んだ
何故なら 舞を踊っていた人の中に
先程の女性が不気味な笑みを浮かべて
鈴を鳴らしていたのだから
[か~ごめ かごめ]
ただの偶然じゃなかった……
でも……さっきまでは 普通の人だったのに
まるで別人になってしまったかのように思えた
「………この街は一体……どうなってるんだよ」
僕の口から 言葉が溢れた瞬間
誰かにハンカチで口元を押さえつけられた
僕は後ろを振り向く前に 急激な眠りに襲われ
そのまま 睡魔に負けて 眠ってしまった
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そこからの事は あまり覚えていない
でも……一つだけ分かった事がある
これだけは 何故か 分からないけれど
はっきりと鮮明に分かった
ただこの街は 成すべき事をしていただけで
舞を踊る人達は “神様の元に送られている人”
というだけだった。
何も可笑しな事なんてない
ましてや 怖がる事も 不思議がる事も必要ない
全ては 僕の変哲なによるものだった
だからこそ
だからこそ
コメント
2件
おぉ……!?!不穏な感じですっごく良きです……✨