――誰にも言えない秘密がある。
誰にも知られてはいけない「僕」がいる。
それでも、君だけには……
本当は、知ってほしかったんだ。
闇の中で目を覚ました。
赤黒く染まった手が、まだ温かい。
誰の血だったかなんて、いちいち覚えていない。ただ、確かなのは――
またひとつ、“君を守るために”命を奪ったということ。
💎「……はぁ、またバレそうだったな」
耳に残る悲鳴。
目に焼き付いた恐怖。
胸に刺さる沈黙。
それらを引き換えにしてまで、僕は君を守ってる。
――初兎。
同い年のメンバー。
配信ではいつも冗談を飛ばして、みんなを笑わせて。
周りもしっかり見えて、空気を読んで、バカみたいに優しいやつ。
💎「僕なんかが、近づいちゃいけないだよね、本当は」
そう思うたびに、喉が苦しくなる。
でも、僕は……
“君の笑顔”を見るためなら、何だってする。
汚れることも、憎まれることも、嘘をつくことも、すべて。
🐱「ほとけー!」
🐱「おい、収録やでー!」
スタジオの扉がノックされる。
少し顔を洗って、血を流しきって、笑顔を作る。
🦊「……今行く!」
この世界の“裏側”を、君たちは知らない。
知らなくていい。僕が全部、背負うから。
そうやって今日もまた、「いれいす」としての僕が、世界の前に立つ。
けれど――
そう遠くない未来で、僕たちの関係は壊れていく。
最初に“壊した”のは、たぶん、僕だったのかもしれない。
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