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小さい頃から、赤が嫌いだった。
ふとした瞬間に、あの時の光景が目に浮かんでくるから。
誰かの悲鳴と、肉が潰れる音と、骨が砕ける音。
僕はその中で、息を殺して生きてきた。
誰かが喰われようが、殺されようが、正直どうでもいい。
君に、あなたに、出会うまでは_____。
「兄ちゃん、帰ったよ」
山菜を採りに出かけていた俺は、下駄を脱ぎ捨てて小屋に入る。
「おかえり。早かったね」
そう言って布団の上で手を広げ、俺を出迎えてくれたのは
数年前、台湾の路地裏で震える俺を助けてくれた”鬼”だった。
「…あ、またご飯残してる。少しは食べてくれてもいいんじゃない?」
俺は布団の隣の粥に目を向ける。
長年生きているからなのか、兄ちゃんは衰弱してしまった。
今まで通り元気に走ることも、勿論戦うこともできない。いつか、俺より先に逝ってしまうんじゃないか。最近も 縁起でもないことを考えては毎日を過ごしている気がする。
「ごめんねぇ、迷惑かけて。俺が元気だったら、璃夢にも負担かけないで過ごせるのに。俺ってば、自分で守るとか言ったくせに何してんだろ、。……璃夢、きついと思ったら、すぐに出て行っていいからね。」
兄ちゃんはそういって、青くて綺麗な目を伏せる。
「……きつくなんかないよ、むしろ、恩人にはこうでもしないと気が済まないっしょ」
俺はそっぽを向いて答える。兄ちゃんは俺を見て、すくりと笑った
「そうだね、璃夢はやさしいなあ」
「優しくないし」
「このツンデレめ笑」
これからも、こうやって過ごせたらいいな、なんて。
当然のように思っていた俺は、馬鹿だったのかもしれない。
シャキン、ズルズル、という金属を引きずるような音。そして、鉄のような悪臭に鼻をつかれて目を覚ました。
「兄…ちゃん?」
寝ぼけ眼で兄ちゃんを探すが見当たらない。
外から人間の声が聞こえる。
そして何より、この臭い。
……まさか。
俺は布団から飛び起き、家中の扉を開けては走る。
どこだ。どこに行ったんだよ。
最悪の事態を察した俺は、庭に転がるように出た。