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未熟者が作った物語
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未熟者が作った物語
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「So, where are we going?」
(それで、どこに向かうの?)
エマ・フロストは隣を歩く天宮湊に尋ねた。
「アイス専門店です」
「……?」
当然、日本語なので分からない。
湊は少し考えた後、スマートフォンの翻訳アプリを取り出した。
『Ice cream specialty shop.』
その文字を見た瞬間、エマの表情がぱあっと明るくなる。
「Ice cream specialty shop!?」
(アイス専門店!?)
「Yes.」
(うん。)
「Amazing!」
(最高!)
エマは目を輝かせながら、湊の前に回り込んだ。
「Minato, you’re a genius!」
(湊、あなたは天才よ!)
「いや、大袈裟だって……」
エマは既に聞いていなかった。
頭の中はアイスでいっぱいだった。
十分ほど歩くと、一軒の小さな店が見えてきた。
木目調の落ち着いた外観。
店先には色とりどりの写真が並んでいる。
『手作りジェラート』
もちろん、エマには読めない。
しかし――。
「Ice cream!」
写真を見た瞬間、エマは駆け出した。
「ちょっ、エマさん!」
慌てて湊も後を追う。
店内へ入ると、ショーケースの中には様々なジェラートが並んでいた。
ミルク。
チョコレート。
抹茶。
マンゴー。
ピスタチオ。
さらには季節限定の白桃味まである。
「Oh my gosh…」
(なんてことなの……。)
エマはショーケースに張り付いた。
「This is heaven.」
(ここは天国だわ。)
その姿を見て、店員は思わず笑った。
「外国の方ですか?」
「えっと……はい」
湊が代わりに答える。
「どれにしますか?」
「What flavor should I choose…?」
(どの味にしよう……。)
エマは真剣な表情で悩み始めた。
一分。
二分。
三分。
「……」
「……」
五分が経過した。
「まだ決まらないの?」
湊が呆れたように尋ねる。
エマは深刻そうな顔をしていた。
「This is difficult.」
(これは難しい問題よ。)
「そんなに?」
「Very.」
(とても。)
そして数秒後、エマは店員を指差した。
「One, two, three, four, five… please!」
(一つ、二つ、三つ、四つ、五つください!)
「五個!?」
湊は思わず声を上げた。
「I want to study them.」
(研究したいの。)
「研究……」
湊は額を押さえた。
この人、本当にアイスのことしか考えていない。
そう確信した瞬間だった。
アイスを受け取ったエマは、
まずミルク味を一口食べる。
「……!」
次の瞬間、エマは勢いよくメモ帳を取り出した。
『Rich milk flavor. Smooth texture. Excellent balance of sweetness.』
(濃厚なミルクの風味。なめらかな口当たり。甘さのバランスが素晴らしい。)
「何してるの?」
「Research!」
(研究よ!)
エマは真剣そのものだった。
そんな彼女を見ながら、湊は苦笑する。
「変わった人だなぁ……」
だが、不思議と嫌な気はしなかった。
むしろ――。
アイスを食べて、こんなにも幸せそうな顔をする人を、湊は初めて見たのだった。
コメント
1件
いやあもう、このエマさん、本当にアイスに恋してますね(笑)。ショーケースに張り付いて「天国だ」って言い出すところとか、五個注文して「研究したい」ってメモまで取り出す徹底ぶりが最高でした。湊くんの「変わった人だなぁ……でも嫌じゃない」っていう距離感も、二人の関係性がじわじわ伝わってきて好きです。アイス一つでこんなに幸せになれるって、なんだかこっちまでほっこりしちゃいました。