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初投稿なので暖かい目で見てくださると嬉しいです。
稚拙な文章ですが、どうぞよろしくお願いします。
第一夜
「心スポだってさ、行ってみね?」
夏の特集一覧を指さしながら、翔は不敵な笑みを浮かべた
今は夏休み
民間センターの冷房がよく効いた図書館で、俺たちは夏休みの課題であるレポートに取り組んでいた
窓からは小学生の騒ぐ声が響き、蝉の音が鼓膜を叩く
そんな時に翔が席を外し、雑誌の置いてある本棚へと向かった
グラビア系の雑誌なんか置いてねーよなんて思いながらレポートに集中していると、俺の机の前にパサっと一冊の雑誌が置かれた
俺はキーボードを打つ手を止め、翔の顔を見上げる
翔は見てみろと言わんばかりの顔で表向きに置かれた雑誌を裏返すと、【夏の特集!!青春にはこれが欠かせない!!】と赤色で大袈裟に書かれた文字が目に映った
「何これ」
翔に聞こえるか微妙な声量で呟くと、翔は無言でその文字のすぐ下にある心霊スポットのコーナーへ指を滑らせた
「心スポだってさ、行ってみね?せっかくの夏なんだし」
☪
別に心霊スポットだとか幽霊だとか、そんなものは信じていないし興味もない
なら、なぜ俺は「行く」という二文字を翔に今、送ろうとしているのか
時計の針が午後二時を指す頃、集中力も切れてきた俺たちは図書館を後にした
うざいほど肌に絡みついてくる日光を睨みながら、コンビニで買った一番安いアイスを買って木陰で食べる
いつも思う
日本の夏はなんでこうも蒸し暑いのか
隣を見ると、翔は何食わぬ顔でアイスを頬張っている
顔には汗が一滴も張り付いていない
汗かきにくいタイプなのいいな、など呑気に思いながらさっき見た心スポコーナーを頭に浮かべる
「行くかどうかは帰ってから連絡しな、別に無理して行かなくていいし」
図書館から出た後、翔に言われた言葉だ
できれば行かずに勉強と課題に集中したいが、俺が一緒に行かなきゃあいつ一人で行きそうで怖かった
いや、一人で行ってしまうことが怖いんじゃない
行ってしまったら、翔が俺を置いて一人でぽつんと、どこかに消えてしまいそうで怖かったのだ、と今は思う
家に着く頃には、どことなく俺は疲れを感じていた
疲れを感じてない日なんてないか、と悲しくも心の中で呟き、俺はスマホを手に取りトーク画面を開く
相手はもちろん翔だ
一緒に行くむねを伝えなければいけない
と、そこで手が止まった
そういえば、こんな場所に心霊スポットなんてあるのか、?
俺の住んでいるところは都会だが、都心で暮らしているわけではない
どっちかっていうと都会の中の田舎みたいなもんだ
それに、この場所では心霊スポットなんて話題は一度も上がってこない
もし県外の方なら、親に色々と相談をしなければならないのだが……できれば両親とは話したくないな
送ると返信はすぐに来た
「おっけー、じゃ明後日の夜でもいい?行先とかはこっちで調べるから」
「全然いいよ。ありがとう。場所はどこ?」
「おっけーい、K神社ってとこ、知ってる?」
……K神社……どこかで聞いたことが……
「N市にあるやつ」
文面を見て少し驚いた
意外だった、心霊スポットがこんなにも身近な場所にあったとは、
N市は電車を使えばそんなにかからない場所だ
「意外よな、俺も最初びっくりしたもん、調べたらレビューが4.8でまじで怖いらしい」
……今は心霊スポットにもレビューなんてものがつくのか
☪
「それじゃあ決まりね、明日おれんち泊まりなよ、詳しいことは明日言うわ」
俺は了解スタンプを送りベッドに寝転んだ
窓を見ると夏の太陽を浴び、すっかり濃い緑色の葉を付けた木がこちらを覗くように生い茂っていた
……大丈夫
……胸騒ぎがするのはいつもの事なんだ
☪
当日
お昼頃にホテルのチェックインを終え、俺たちはマックで軽食を食べていた
2時間後にはあの神社に着いてればいいから、それまで買い物でもしてゆっくり過ごそう
ポテトを頬張りながら、翔は俺の方を見ずに言った
せっかく心霊スポットに行くというのに、翔はいつもの調子だった
もう少しテンション上げたらいいのに、と、翔の顔を見る度に思う
「そろそろ買い物行くか〜、俺なに買おーかな、」
食べ終わると、呑気にあくびをしながら翔は立ち上がり、俺の分のトレイも持ってゴミ箱の方へ向かった
「ごめん、ありがとう」
慌てて言うと、翔は「はいよー」と伸びた返事をした
その時ふと、翔の背中がいつもよりずっと小さく見えた
☪
「……なんかさ、写真で見た時より普通だな」
午後五時
翔はK神社に着くなり、ため息混じりにそう言った
その神社はかなり街から離れたところに位置していた
人が滅多に寄らないような場所、辺りを見渡せば家が何件か建っているが、その全部が無人だ
ぽつんと建っている廃れた鳥居に鬱蒼としている木々
何よりも不気味なのが、鳥や虫の音が何一つとして聞こえてこないことだ
まるで世界から閉ざされた禁忌区域
俺たちは、どこか知らない異世界のような場所に来てしまったのではないかと錯覚させられるほどだ
今からここに入るのかと思うと、より一層血の気が引いた
それに、隣の平然としている翔を見ると、本当にお前は感情がないのかと疑ってしまう
「……これのどこが普通なんだよ……」
「え、いやだって、なんかあんま怖くなさそーじゃん」
……本当に翔の感覚はよく分からないな
「まぁ、いいや!よーし、とりあえずパパっと行っちゃお、終電もあるし」
そう言うと翔は俺の腕を無理やり引き、懐中電灯を頼りに鳥居の奥へと進んで行った
ぽん
☪
「……まじでなんも怖くねぇな……」
お目当ての寺院に着いたと同時に、翔は不満げに呟き、足元に転がってきた石を蹴った
だいぶ山の奥まで来た
進んでも進んでも辺りは静まり返って、俺と翔の雑草を踏む音しか聞こえない
「……なんか、ごめん、つまんないよな……せっかく来たのに」
どうやらかなり落ち込んでいるらしく、俺は返す言葉が見つからなかった
「じゃあ、今日はもう帰る……?」
そう遠慮気味に言ったが、俺は一刻も早くここから出たいと思っている
確かに、道中は本当に何もなかった
歩く度に変な音や人間の呻き声だとか、そういうのが聞こえてくるもんだと初めは思っていたが、そうでもなかったのが拍子抜けだ
しかし、何も起こらなかったとて不気味さは異常だ
とにかく気色が悪い
生物の本能というか、直感なのだろう
ここにいてはだめだと、警報が頭に直接響いてきている感じだった
一刻も早くこの場から逃げたい、いや逃げなくては
「………………だね、そうするかぁあ、はぁーーー幽霊とか見たかったなぁ」
翔のため息とともに、俺は安堵の息をついた
ようやく出られる、
「………………ホテルついたらトランプでもしよ、ごめんね付き合わせて」
翔は顔の前で手を合わせてポーズを取ると行く時と同じように、俺の手を引いて元の道へ歩き出した
ぽん
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