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みんなに引っ張られて、円陣を組む。全く、こんな小っ恥ずかしいことまだやれるんだなお前ら。
「にっこにこじゃん麦。ほら早く」
大きく息を吸う。
「麦茶同好会ボーカルベース担当、野中麦!」
「麦茶同好会メインギターサブボーカル担当、清水葵!」
「麦茶同好会サブギターサブボーカル担当、村瀬柚!」
「麦茶同好会ドラムサブボーカル担当、木戸樹!」
全員と顔を合わせて、少し笑った。
「みんな、麦茶は持った?」
「yes,sir!!」
「今日からの活動やる気は!?」
「もっちー!」
「もちろんです!」
「あったりめーよ!」
「麦茶同好会結成日は?」
「6月1日!」
「俺の恋人の名前は!?」
「しずえさん!」
「よっしゃあ、気合い入ったあああっ!!」
葵の雄叫びで締め。バンド初期に決めたこの掛け声もしばらくやってなくて久しぶりの円陣に嬉しくなった。
「前から思ってましたけど、ダサいですよねこれ。」
「言うなよ葵泣いちゃうだろ?」
作詞が苦手な葵がいちばんバンドっぽいことをしたがってたから勝手に考えてきて俺らにさせてたやつ。俺らもダサいダサい言いながら割と満更でもなくてそのままライブ前の気合い入れに使っていたものだ。葵が考えたのになんで俺が中心になってんだよ…
「おいお前ら聞こえてんだからな!」
葵が涙目で突っかかってきた。
「そんなにダサいダサいって言うなら、変えるかよ」
葵の拗ねたような表情と不貞腐れたみたいな物言いが懐かしくて嬉しくなった。
「それはないですね」
「それはねえよ」
「葵もばかだなあ」
俺ら3人の否定にそうでなくっちゃ、と言わんばかりに葵は満足気だ。
「だろ?」
「最初に決めたもんね、変わらないよ」
麦茶同好会は、そのまま。解散、してないし。解散しかけたとしても、してないから麦茶同好会は変わらないまま。新しく始めるんじゃなくて、続きから。
「あー、そういえばさ。俺らがいつも使ってるスタジオのマスターが俺らのこと気にしてたみてえ」
スタジオのマスターにも、もうすぐ4人でスタジオ入りするよ、って伝えなければ。しずえにも。
「今日はとりあえず再活動記念してファミレス行こうぜ!」
「葵くんはなにかにかこつけて呑みたがりますよね」
「いいだろこんな時くらい。麦もほら行くぞ」
ああもうやばい。むりだ、幸せすぎる。いろいろありすぎて頭が回らない。でもそれでいいんだ。何も考えずぱっぱっと出てきた言葉は本心で。本心で語り合えるようになるには考えなくてもいい。だからもう幸せで嬉しくて楽しくてほんとに…
「また泣きましたねー!」
柚は泣かなかったけどちょっと鼻声だったね。泣かないようにしなくてもいいのに。こんだけ泣いた奴がいるのに。
「情けねえの。」
うるさい。葵も泣いてたじゃん。あと顔が笑ってる。
「ほらほらティッシュ。そんな顔じゃ愛好家達に示しがつかないぞ?」
男前だなあお前は相変わらず。愛好家にも会いに行かないとね。
「…っふう。よしじゃあ行くか!」