テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
宙に舞う俺の体
投げ出された体はすぐに落下をはじめる
この下はどうなっているんだろう
岩場だったりしたらひとたまりもない
いや、高さが高さだったらどちらにせよ終わりか‥‥
一瞬の出来事なんだと思うが、まるでスローモーションの様に時間が過ぎる
ふと背中に温かさを感じた
手にもそれが触れると俺は思わずそれを握りしめていた
何がどうなっているのかわからない
それでも俺はそれに必死にしがみついた
それは何度か地面に脚を着いたのか、ピョンピョンと跳ねながらどうやら地面に到達した様だった
俺がようやく固く閉じた目を開けるとそこには真っ白な狼がいた
「‥‥え、狼?」
「‥‥‥‥‥‥」
「お前‥‥‥‥ロウ?」
「‥‥‥‥クーン」
まるで返事をしているかの様に鼻を鳴らす
そして座り込んだ俺の足元にロウが鼻先を近づける
切り裂かれた服の合間から先程傷を受けた箇所が顕になった
そこを迷う事なくロウがペロペロと舌で舐め始める
「ロウ⁈汚いからっ‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
俺の方をチラチラと見ながらそれをやめない
パックリと開いた皮膚は痛いはずなのに、ロウが舐め始めると不思議と痛みが消えて行った
数分舐め続けると俺はロウの体も傷付いている事に気がつく
「ロウ‥‥お前の脚だって血が‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
前足や後ろ足に傷があるのを自分で確認すると、体を丸めて自分の体を舐め始める
「‥‥‥‥それで治るの?」
「‥‥‥‥フンフン」
ロウは鼻を鳴らし、俺の足を見ている
俺もつられて自分の足を見た
「えっ‥‥?血が止まってる⁈‥‥ってか、傷口が塞がってない?」
俺がマジマジと傷口を見て驚いていると、もうこっちには興味がない様に自分の足を舐めていた
「お前って凄ぇな‥‥それって狼の力?」
「‥‥‥‥‥‥」
ひとしきり舐め終わるとロウがスクッと立ち上がった
そしてジッと俺を見つめる
「え‥‥なに?」
「‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥ロウ?」
何か言いたげな瞳で俺を見つめたままロウが振り向いた
そしてそのまま歩き出そうとする
「ちょっと待って!何処に行くんだよ!」
「‥‥‥‥‥‥」
それでもこちらを見ずに向こうに行こうとするロウ
俺はその体を捕まえ、抱き抱えた
「ワフっ!ハゥハゥ!クゥーン‥‥」
「何言ってっかわかんないし、暴れるのやめてもらえる?とりあえず疲れたから休むとこ探すぞ」
「クゥー‥‥」
俺は大きな木の根元に丁度身を隠せる穴を見つけた
そこに腰を下ろす
ロウを抱いたまま‥‥
「今日はここで休もう」
「‥‥‥‥‥‥」
あくまでも離さない俺の意志を汲み取ったのか、ロウも諦めて目を瞑った
離さないよ?
離すわけないだろ
.
Kojigyu
7,768
コメント
3件
いやもう、今回めちゃくちゃ沁みました……! 落下のスロー感、そこからふと背中に感じた温もりって表現、すごく好きです。一瞬の出来事なのに時間が伸びる感じとか、映像が浮かぶようでした。 それにロウ、自分も怪我してるのに主人公の傷を真っ先に舐めて治すところ、グッときましたね。「離さないよ?」の最後の一行で、もう涙腺緩みかけました。狼と主人公の距離が確かに変わった回、続きが気になりすぎます……!