コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ごめん…。ごめんね…。私達が……。」
ぼやける視界…。
柔らかな声…。
明るい天井…。
「私達のせいで……。ごめんね…。」
女の人のすすり泣く声。
「ごめん…。ごめんなぁ…。俺達がこんな事しなければ………。お前にこんな思いをさせずにすんだのに……。」
男の人の後悔に溺れている声。
誰だ……。
思い出せない………。
でも、すごく暖かい…。
俺は、この人達を知っている…。
懐かしい感覚…。
あぁ…。眩しいな…。
「また…。あの夢か………。」
いつも夢に見る、明るい天井の部屋で名前も分からない夫婦がいる。
その夫婦は、ずっと後悔に打ちひしがれている。
なんで後悔しているのか、この夢は何を表しているのか、自分でも分からない。
「ねぇ…。貴方達は誰?」
俺は天井を見ながら呟いた。
「って…。返ってくるわけないか…。」
俺は苦笑いする。
〜孤児院の庭〜
俺は今、大変な危機に陥っている。
「ふたりはおにいちゃんといつもあそんでるじゃん!!だから、おにいちゃんはわたしとあそぶの!!」
俺の腕を5歳のリカが引っ張る。
「ダメダメ!リカだっていつも兄さんと遊んでるのに!!」
10歳の双子のルカとルイも俺の片方の腕を引っ張る。
「まぁまぁ…。3人とも…。少し落ち着こうか…。」
俺は3人を宥めようとするが3人は、ヒートアップするだけで止まらなかった。
「あっ!そうだ!じゃあ、4人でかくれんぼしようか!」
俺はかくれんぼを提案した。
「「ほんと!?」」
3人が同時に反応する。
「息ぴったりだな………。」
俺が苦笑いする。
ここは、身寄りのない子が集まって家族のように暮らしている。
俺が一応最年長で下に5人の兄弟達がいる。
俺は孤児院の入り口にゆりかごの中に入った状態で置かれていたらしい。
正直、自分の両親の事はすごく気になるが、今は兄弟達がいるから慌ただしくて考える暇がない。
でも、考えても無駄な事をいつまでも引きずっているより今が大事だと思っている。
ただ、俺には名前がない。
院長によるとゆりかごには紙に、
《この子の事をお願いします。》
とだけしかなく名前がないようだったけど院長は名前をつけるのが面倒くさかったらしい。
みんなに《お兄ちゃん》や《兄さん》ばかり呼ばれているせいか皆と一緒に過ごしているときは気にしないが、一人になると自分の名前について考えることがある。
「父さんと母さん…。どんな人なんだろうな…。」
ふと思う時は少しだけ寂しくなる。