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今日は雨。
桜、この雨で散ってしまうかも。
もうすぐ大好きな季節が終わってしまう。
それが、少し寂しい。
「今日は暇ですね~」
「雨だしね。結構降ってるから」
時計は13時半を回ったところだ。
ランチが終わって、今は『杏』にはお客様が誰もいなかった。
「こんにちは」
「あ! 東堂社長~お久しぶりです」
果穂ちゃんが元気に手を振る。
「果穂ちゃん、雫ちゃん、あんこさん。こんにちは」
50代半ばくらいのダンディな東堂社長。
私達に、いつも優しく声をかけてくれる。
「東堂社長、今日はどしたの? 私に会いにきた?」
「そうだよ。たまにはあんこさんの顔見ないと元気出ないからな」
「嬉しいこと言ってくれるじゃない。じゃあ、たくさんパンも買っていってね」
東堂社長とあんこさん、美男美女で本当にお似合いだ。
あんこさんの好きな人は、やっぱり東堂社長なのかな。
「わかったよ、買ってく。その代わりうちの小麦粉もよろしくな」
慧君もその後ろから入ってきて、
「父さん、いつもたくさん買ってもらってるだろ。本当にありがとうございます、あんこさん」
って、微笑んだ。
東堂社長の息子の慧君は、穏やかでとても物腰が柔らかい。
「いいのよ、慧君。うちには東堂製粉所の小麦粉が1番なんだから。こっちがお礼を言わなきゃね」
あんこさんも微笑む。
「いらっしゃいませ~あれ、この前の大学生君じゃない」
果穂ちゃんがまた手を振る。
「希良君、来てくれたんだ。いらっしゃい」
「こんにちは。雫さん」
テーマパークの時から会ってなかったから、突然の来店にドキッとした。
「あら、彼がイケメン大学生の希良君?」
「初めまして。イケメンではないですけど……渡辺 希良です」
希良君は、あんこさんに頭を下げた。
「十分イケメンだよ。困ったね~慧君に希良君。2人とも素敵だから目移りしちゃう」
「あんこさんはもう若くはないんだから、若造を相手にするのは諦めた方が無難だぞ」
「もう、失礼しちゃう~」
みんなで笑う。
あんこさん達は、そんなやり取りでみんなを和ませてくれた。
東堂社長、きっとヤキモチ妬いてるんだな。
2人とも可愛い。
「渡辺君、こんにちは」
「東堂さん。いつもありがとうございます」
「こちらこそ」
「あれ? 慧さんとイケメン大学生君、2人は知り合いなんですか?」
果穂ちゃんが聞いた。
私も知らなかったから驚いた。
「僕がバイトしてるスーパーにも小麦粉を卸してもらってるんで、たまに東堂さんとは顔を合わせるんです」
希良君が言った。
そっか……そういえば、東堂製粉所の小麦粉、あのスーパーにもたくさん置いてあったな。
そういう繋がりがあったんだね。
「嘘、嘘!!」
その果穂ちゃんの慌てぶりに、みんなが一斉に自動ドアの方を見た。