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「タクヤ、そこ、俺の場所……」
そう呟くなり、NAOYAは吸い寄せられるようにタクヤの隣へ腰を下ろした。というか、腰を下ろしたというよりは、半分崩れ落ちるように体重を預けてきたと言った方が正しい。
「お前、どんだけ眠いんだよ」
呆れた声を出しながらも、タクヤは肩に落ちてきた弟の頭を追い払うようなことはしない。ずっしりと伝わってくる体温と重み。今日のNAOYAは朝から様子がおかしかった。撮影の合間も、移動の車内でも、まぶたが重そうに何度もくっつきかけてはハッと起きる、を繰り返していたのだ。
「んー……だって、目が開かない……。タクヤの服、なんか落ち着く」
普段なら照れくさがって絶対に言わないようなセリフが、まどろみの中でぽろぽろと零れ落ちてくる。NAOYAはタクヤのパーカーの袖を指先でぎゅっと掴むと、そのままタクヤの肩に額を擦りつけた。完全に猫のそれである。
「はいはい。力抜くなよ、倒れるぞ」
タクヤはため息をつきつつも、掴まれた腕とは反対の手を伸ばし、NAOYAの背中をポンポンと優しく叩いた。
「もうちょっとで家着くから。そしたらベッドで寝ろ」
「やだ、いま寝る……。タクヤ、動かないで……」
「わがままかよ」
文句を言いながらも、タクヤはNAOYAが寄りかかりやすいように少しだけ体勢を崩し、肩の位置を下げてやる。
ふわふわと意識の海を漂っているNAOYAは、自分の頭の上に置かれたタクヤの手のひらの温もりを感じていた。力仕事や練習で少しだけゴツゴツした、知っている手。その手が髪をゆっくりと撫でるたびに、頭の中の霧がどんどん濃くなっていく。
「タクヤ」
「ん?」
「……ありがと」
「なにがだよ」
「なんとなく」
小さな寝息が、タクヤの肩口に規則正しく当たり始める。
「ほんと、世話が焼ける」
完全に夢の中へと落ちて行った弟を起こさないよう、タクヤは静かに姿勢を固定した。普段は生意気なことを言ったり、しっかり者ぶったりする弟だが、極限まで眠い時だけ見せるこの無防備な姿は、兄である自分だけのものだ。
タクヤは小さく苦笑しながら、肩の上で幸せそうに呼吸を繰り返すNAOYAの頭を、もう一度だけ優しく撫で下ろした。車窓の外を流れる街灯の光が、二人の影を静かに照らしていた。
朱璃
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