コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
転移魔法で直接“トランク”の中へ転移した私は、女の子を半ば放り込む勢いで自分のベッドに寝せて直ぐにコクピットへ戻った。
「アリア!ゲート始動!行き先は適当に!出来るだけ離れる!」
シートに座ると私は直ぐに操縦桿を握って全速力でその場を離れた。モニターには、惑星の重力に引き裂かれていく船が見えたけど、思い悩むのは後回し!急がないと!
『了解しました、ゲートオープン』
近くにあるゲートへ向けて私は全速力で“ギャラクシー号”を走らせる。
「突入と同時にゲートは自爆させて!」
『はい……!?ティナ!ワープアウト反応多数確認!数が多すぎて測定できません!』
「わかってる!飛び込むよ!ちゃんと自爆させてよね!アリア!」
ゲートへ飛び込む寸前、センサー類を埋め尽くすセンチネルの反応を見て私は身震いをした。これがセンチネルの怖いところ。その圧倒的なまでの数の暴力。いざ戦闘となれば戦わずに逃げるのが鉄則。撃墜なんてしたら、数えるのもバカらしくなるくらいの増援が送り込まれてくる。
間一髪間に合った私はゲートへ飛び込み、同時に追跡を避けるためにゲートを自爆させた。
極彩色の空間に切り替わった瞬間、ドッと疲れが出た。嫌な汗もたくさんかいちゃった。
「っ!はぁーっ……危なかったぁ……」
『間一髪でしたね、ティナ』
「ん、アリアのお陰だよ。ありがとう」
『私は貴女を護ることが使命なのです。次からはこのような無茶をしないでくださいね』
「約束は出来ないけど、気を付けるよ」
似たような状況が起きたら、私はまた無茶をするだろうしね。
『心に留めてくだされば幸いです』
「あははっ。それで、目的地は?」
『緊急時のため1万光年先となります。36時間は掛かるかと』
「一気に進むなぁ」
一万光年が1日と半分。もし10万光年進むなら15日。往復するなら一ヶ月かぁ。
いや、10万光年を半月で移動できるんだから充分にすごいけど。
「つまり明日の夜まで暇なんだね?」
『そう考えてください』
「じゃあ、助けた女の子の様子を見てくるよ。状態は?」
『簡易スキャンの結果、リーフ人のバイタルデータと照らし合わせても健康状態に問題はありません』
「ん、了解」
私は“トランク”の中へ戻って、自分の部屋に入った。ベッドで寝かせてるリーフ人の様子を見るためだけど、改めて見ると違和感を覚える。
リーフ人は綺麗な銀髪をしてるんだけど、女の子はきめ細かい綺麗な金髪。そしてなにより目を引くのは、一対ではなくて二対の透明な羽。バイタル的にはリーフ人みたいだけど、特異体質かな?
まあ、私もアード人ではあり得ない銀髪だし、何となく親近感が湧いた。
服装は膝まである若草色の半袖タイプのワンピース。足元は草で編んだサンダルかな。アードにいるリーフ人もサンダルか素足だったはず。
……足フェチ天国かな。あいにく私は前世で胸フェチだったけど。いや、要らない情報か。
しばらく様子を見ていると、女の子は静かに眼を開いた。金の瞳が綺麗だなぁと思った。少しだけ視線を迷わせて、そして私と眼があった。
「っ……貴女は……?」
おっと、怯えてるのかな?
「大丈夫、敵じゃないよ。ほら、見て」
私は翼を大きく開いてパタパタしてみた。それを見て女の子も少しだけ警戒を弱めてくれた。
「もしかして……アードの方ですか……?」
「そう、アード人だよ。貴女はリーフ人、で良いかな?」
ちなみに私の言葉はアリアが瞬時に翻訳してリーフ語に変換される。便利だよねぇ。通訳要らないもん。
「はい……あのっ!私以外には……」
気になる、よね。本当は先に自己紹介とかしたかったけど……。
「落ち着いて聞いてね。何があったのか私も知りたいから、貴女からも教えて」
私はあの場所で何を見たのか、何をしたのかを包み隠さずに話した。女の子も何が起きたのかを話してくれた。
どうやら彼女達はリーフ星系がセンチネルに滅ぼされる前に宇宙へ出た開拓団の生き残りだったみたい。
永い年月宇宙を旅して、それでも彼女達に適した環境を持つ星は見付からなくて、惑星アードへ向かう最中にセンチネルの偵察艦隊に見付かった。
艦隊からは逃れることが出来たけど、スターファイターに追撃されてバイオウェポンを撃ち込まれた。
この子の両親は、奇跡を信じてこの子をポットへ入れた。私が駆け付けたのはその時だったみたいだね。
「ここは一体……」
「“ギャラクシー号”の“トランク”の中だよ。“トランク”は分かるかな?」
「はい、アードから提供された素晴らしい技術として普及しましたから……その……私以外に生存者は……」
「……ごめん……」
私は俯いてそう言うことしか出来なかった。助けられなかった。もう少し早く来ていれば、もう少し早く……後悔ばっかりが頭に浮かぶ。
「そんなっ……お父様……お母様……」
泣きそうな声で呟く彼女の言葉を聞いて、自己嫌悪が加速した。
でも、今はそれより。
「ごめん!ごめんね!貴女しか助けられなかった!」
私は彼女をぎゅっと抱きしめることしか出来ないけど、それでもそうしないと気が済まなかった。
私が間に合えばなんて考えは傲慢なのかもしれないけど、それでも助けられたかもしれない命が目の前で失われたのを見ると私も悲しくなる。
泣きたくなるけど、今は我慢。だって、誰よりも泣きたいのはこの娘なんだから。家族や仲間を全員失ってしまったんだからね。
私は涙を流して泣く彼女を強く抱きしめたまま謝り続けた。謝るのは違うと言われるかもしれないけど、そうすることしか出来ない自分に腹立たしさを感じながら、彼女を抱きしめ続けた。
この世は理不尽だ。例え生まれ変わってもそれは変わらない。センチネルはたくさんの悲劇を産み出す存在。今私はその事を実感させられてる。