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マリアベル (3歳) と ダンジョン・デレク に通い始めて5日が過ぎた。


攻略も8階層まで進んでいる。(おい!)


……やり過ぎなのは分かっているけど。


本人が『行きたい! 行きたい!』と言うんだから仕方ないよね。


なので、みんなでしっかりサポートしながら探索はおこなっている。


シロに跨った姿も堂々としたものだ。


右手には魔法バトンを握っている。


みんなと攻略をしていく中、それぞれが自分の得物でかっこよく戦っているのをみて、


「わたちも何かほちい!」


マリアベルに地団駄を踏みながらダダをこねられたのである。(汗)


そこで作ったのが叩いてもOKの ”魔法バトン” である。


軽くするため支柱は中空で長さは30㎝。


先端には金のお星さまが燦然と輝いている。


材質は軽くても強度を持たせるためミスリル50%配合のマジック合金製である。


本当にとんでもなく高価な代物なのだ。


もちろん、この事はみんなには内緒にしている。


――呆れられるので。


魔法の発動体としても優秀なのだが、後から行う魔纏の訓練でも使えるし…………まあ、いいだろう。






8階層に入ると動きの速いモンスターが増えてきた。


ブラックウルフやホーンラビットに対抗するため、みんなでフォーメーションを組むことにした。


前衛にメルとガルの子グマ姉弟、中衛をメアリー、そして後衛がシロとマリアベル、その横にメイドさんだ。


うん、なかなかに強力な布陣だな。


俺とナツは少し離れて様子を見ながらついていく。


すると何やら、メアリーを中心に子供たちが集まって話し合いながら進んでいるのだ。


レベルが高いメアリーがリーダーになっているのかな。


年齢でいえばメルの方が上のはずだが獣人族では力があるものが上となるようだ。


しかし、みんなが仲良く楽しそうでよかった。


フォーメーションを組んでからというものモンスターの殲滅力は圧倒的で、ガンガン先へ進んでいく。


例の『うさコロ』もちょちょいと突破していった。


宝箱は出なかったけどね。


まだメイドさんと二人で戦わせるには心もとないので、これは仕方がないよね。


そこで俺はデレク (ダンジョン) に頼んでメアリーが持っているリングと同じ物を作らせ、


うさコロ制覇のご褒美としてマリアベルに贈った。


これには何故かメアリーまでが喜んでいる。


「――?」


どうやら、お揃いのリングが嬉しかったようなのだ。


――なるほどね。


9階層に入ったが勢いは止まらずどんどん探索は進んでいく。


それに進行スピードが半端ない。


まぁ一度攻略しているし。このフォーメーションは反則だろう。


それにマリアベルには超音波で敵を倒す新魔法【デビルアロー】をおしえている。


――杖の先からビビビッだ。


うん、とっても魔法少女らしくて良き。


それを見ていたメアリーにも新魔法をせがまれたので、無属性魔法で亀仙人の奥義【かめはめ波】を伝授してあげよう。こんどね。


本気で放って月を壊さないようにな。


10階層に上がったところで俺は子供たちを一旦止めた。


昼食の時間になっていたのだ。






温泉施設へ戻り、みんなで昼食をとっているとシロが立ち上がって反応している。


転移陣が作動しているようだ。


しばらくすると、アランさんが何人か連れてこちらに顔を見せた。


メアリーは喜んでアランさんに抱きついている。尻尾をふりふり、まさに犬のようだ。


さて今日もお仕事ですかねぇ。


ダンジョン前に広がる町もだいぶ様になってきた。


冒険者ギルドをはじめ、商店・飲食店・武器屋・防具屋・肉屋・八百屋と軒並み建ちあがっている。


お店の出店準備をしている人や、衛兵になる訓練をおこなっている熊人族に向けて、すでに商売を始めている店も数軒あるようだ。


このように町の形成が急ピッチで進められているのもアランさんの打ち出した政策のおかげだろう。


王国が行っている審査に通れば、商店や家を即座に用意してもらえるということだ。


しかも最初の30日は無料で使用できるときている。


これには王都のみならず、近隣の都市からもかなりの反響があがっているそうだ。


既に400件を超える応募が来ているらしい。


それに、この募集は王都近辺だけにとどまらず、ダンジョン・デレクの近隣にある都市からも同時に募っているそうだ。


さすがだよなぁアランさん。この町やダンジョンの宣伝にもなるということか。


街道が通ったら人がわんさか押し寄せてくるだろう。


新しい町が出来るのだ。こういう事は地域ごと盛り上げていかないと意味がないからね。






モレスビーの町からも毎日のように馬車が訪れるようになった。


冒険者の送迎や物品の搬入なんかを行っているのだ。


街道も順調に整備されているのだろう。そのうち野営場に続き、宿場町もできるんじゃないか。


毎日少しずつだが賑やかになってきているなぁ。


そうそう、以前話をしていた熊人族であるが。30名程が町の衛兵隊として起用されたそうだ。


今は訓練が終わったものから次々に町へ配属されている。


まあ、これからは冒険者も多くなっていくし、腕っぷしの強さには定評があるからなぁ。


熊人族の人たちは『気は優しくて力持ちなんだよ』とナツも言っていたしな。


しっかりと町を守っていってほしいものだ。


………………


午後から予定していたダンジョン探索はシロとナツにお願いしている。


それで俺は何をやるのかと言うと、町の拡張と造成である。


今の現状だとすぐ手狭になってしまうそうだ。


だけど、こんな一気に広げてしまって大丈夫なのか?


普通に山崩れや鉄砲水なんかが心配になってくるのだが……。


そこでデレクに尋ねてみたのだが…………。まったく、これっぽっちも問題ないらしい。


うんそうね、わかってたけどぉ。


さすがはダンジョンさん、頼もしい限りです。


てなわけで、ガンガン ドカドカ町を拡張しているところだ。


今、町を囲んでいる土壁をどうするかアランさんに尋ねてみると、


壁はそのままにして門をいくつか作って欲しいということだ。


そして門外の整地した部分へは新たに小川を引き込んでいく。


ため池や長屋なども指示されたとおりに設置していった。


……んん、何をするつもりなんだ?


不思議に思ったのでアランさんに何を作っているのか伺ってみれば、


なんと町の外周に『農地』を作ってるそうだ。






えっ、農地なの?


いや待てよ……。すごく良い案じゃないか。


俺も気がつかなかったよ。――農地な。


詳しく聞いていくと、実にとんでもない事を考えているようだった。


まず人員の方だが、スラムの者を中心に募集をかけ王都の清浄化もついでに図る。


もう一つは、胡椒などの特殊野菜をここで育てるというものだ。


この町なら管理がしやすい上に、王都での消費量を考えても打って付けなのだとか。


「…………」


なるほど、名案ではある。


ただ、胡椒の栽培は場所を選ぶし、とても難しいと聞いた覚えがある。


――通常ではね。


お察しのとおり、ここはダンジョンの勢力下。


区画ごとの土壌や気候の調整まで思いのままである。


なので胡椒が栽培できるのか、試験的に試してみるようだが……。


99%ぐらいは成功するだろうね。


もちろん、このことはアランさんにも内緒にしている。


『今さらか?』とも思うのだけれど、何でもかんでもでは俺の身がもたんよ。


拡張した用地にそれぞれ温泉を引き共同浴場も建てておいた。


畑にはすぐにでも作付けできるように周りの腐葉土を集め畑の土と混ぜ合わせる。


作業がしやすいよう畑の区画も整えていった。


それに合わせて、小川から引いた用水路も通していく。


あとは気候だが山といっても低い位置だし、周りは樹海なのだから芋や小麦などは問題なく育つだろう。


砂糖がとれる甜菜やサトウキビなんかを育てても良いだろう。(こちらも戦争の種です)


食生活が豊かになるのは良いことだよな。


こうして、いろいろと考えながら町を作っていくのも楽しいものだなぁ。






せっせと作業を熟しながらも、アランさんと打ち合わせをおこなっていく。


まあ、実際に作業をしているのはデレクであって俺は何もしてないのだが。


その打ち合わせの延長で聞きたくない話も耳に入ってきた。


こちら『迷宮都市』の計画も順調に進みつつあるようで、


そろそろ後進に任せて、アランさんはひとまずクドーの町へ戻るということだ。


まあ、そうなるよなぁ。


もともとメアリーを迎えにきていただけなのだ。


あ~ぁ、『何となくこのまま行ってくれないかなぁ~』という俺の儚い願いも空しく消えていく。


(やっぱり無理があるよなぁ)


いっそのこと俺もクドーの町へ行ってみるかなぁ。


でもマクベさんには帰ると言ってあるし、それにナツ親子のこともある。


「ゲン殿……。もしゲン殿!」


「は、はい。すいませんアラン様」


「大丈夫か。すこし働き過ぎなのでは?」


「いえ、大丈夫です。それで何かございましたか」


「いや、それがな……、わが町に帰ることをメアリーに話したら絶対に嫌だと申してなぁ。そんなに父と居るのは嫌なのかと聞けば『大好きだよ』と答えてはくれるのだが……。どうしたものか、ほとほと困ってしまってなぁ」


「はあ……」


「それでアストレアともよくよく話してみたのだが……、結局アストレアと共に王都の屋敷に残ることになったよ。これにはおばば様も王妃様も賛成しておいででな、私はすこし寂しく思っておるのだよ。まぁ来ようと思えば馬で2日の距離ではあるのだがね」


「それは、なんとも……」


「メアリーも私のことは大好きだと言ってくれている。ここで無理やり連れ帰って嫌われてしまったのでは拙いであろう。ここは距離を置いて様子を見るしかないのかのう。ハハハッ」


乾いた笑いと共に寂しそうに打ちあけるアランさん。


(残念ながら、その件に関してはお力にはなれそうにありません) (*´▽`*)





どっと落ち込んでいる彼を慰めていると、


『メアリーは幼いころのエレナに瓜二つだ』とか亡くなったエレナさんとの馴れ初めなども話しだした。


なんでも、


第2王子であるアランは幼少の時分、王都を離れラエという町にて一時暮らしていたことがあるそうな。


かくある政治のいざこざを避けるためにである。


7歳になるまでの4年あまり、王子に付き添い身のまわりの世話をしていたのがメアリーの母であるエレナであった。


元来、人族と犬人族は友好的な関係にあったそうだ。


氏族長の娘であったエレナはとても気立てが良く、従順で笑顔が素敵であったと……。


なるほど、幼なじみに近い存在だったんだねぇ。


(あぁ、こんな話を聞いてると切なくなってしまうよ。べのあ~)


ほどなく話も終わり、俺とアランさんは温泉施設に戻ってきた。


そこでダンジョンから戻ってきたみんなと合流、汗を流したあと王城へもどった。

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