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試験が終わり、会場が静まる。
ダミー相手を次々と仕留めた雷は、無表情のまま立っている。
ショートヘアの先端に混ざる黒い毛が、ライトにわずかに光るだけだ。
審査員たちがメモを取りながら、小声で話す。
「正確さが凄まじい……音もほとんど立たない」
「狙い撃ち型の個性をここまで完璧に使える者は、滅多にいない」
周囲の受験者たちも、驚きと畏怖の混ざった視線を向ける。
「無表情なのに、あの集中力……本当にすごい」
教室のざわめきと違い、体育館の空気は一瞬、緊張で張り詰める。
雷はそれを感じ取ることなく、ただ静かに立ち、次の指示を待っている。
その存在だけで、場の空気を支配してしまう――
無表情のまま、冷静に、計算された行動を取る雷の姿は、誰もが忘れられない光景となった。
昼休み、教室の一角に静かな空気が漂う。
みんなは机を囲んで話しているが、雷は一人、無表情のまま自分の席に座る。
すると、クラスメイトの一人が勇気を出して声をかけた。
葉隠「……あの、上鳴くんって、個性テストすごかったね」
雷は瞬時に視線を向け、ゆっくりと頷くだけだ。
声は出さず、言葉も返さない。
「え、返事……」
周囲の生徒は少し戸惑う。
さらに別の生徒が話しかける。
芦戸「ていうか、女の子だったんだ……知らなかった」
雷は表情一つ変えずに、ただ目を向けるだけ。
頷きもせず、否定もせず、反応は最小限だ。
その沈黙の中で、クラスメイトたちは不思議な存在感を感じる。
無愛想だけど、何か考えている――
言葉に出さずとも、雷が全てを把握していることが伝わるのだ。
しばらくして、雷は再び視線を机の上に戻す。
会話はそこで途切れるが、クラスメイトたちは密かに心の中で、「あの子……すごい」と思っていた。