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同じ帰り道。
同じ時間。
同じ三人。
――の、はずだった。
「昨日さ、あの店のたい焼き食ったんだけどさ」
隣で歩く千冬が、いつもみたいに話し始める。
「めっちゃうまくてさ、また行こうぜ」
「昨日?」
思わず聞き返した。
「うん、昨日。お前もいたじゃん」
「……え?」
心臓が、変な音を立てた。
昨日。
その言葉に、強い違和感が走る。
「昨日は行ってねぇだろ。閉まってたし」
三ツ谷が普通にそう言う。
「は?開いてたって。な?」
千冬がこっちを見る。
「……私、行ってない」
口に出した瞬間、空気が少しだけ止まった気がした。
千冬が眉をひそめる。
「いや、行っただろ。三ツ谷とお前と三人で」
「行ってねぇって。お前の勘違いじゃね?」
三ツ谷は軽く笑って流す。
でも、千冬は納得していない顔をしていた。
「いや、絶対行ったって。なんならお前、あんこ無理って言ってたし」
――あんこ無理。
その言葉に、ぞわっとした。
それは確かに、私のことだ。
でも。
「……それ、いつの話?」
気づいたら、そう聞いていた。
千冬が一瞬だけ言葉に詰まる。
「え……昨日、だろ」
「違う」
はっきり言った。
「昨日は、行ってない」
空気が、少しだけ重くなる。
三ツ谷が間に入るように言った。
「まぁいいだろ。記憶違いなんてよくあるって」
軽い調子。
いつも通りの、空気。
でも――
違う。
何かが、違う。
千冬だけじゃない。
私の中でも、何かがズレている。
“本来の流れ”と、少しだけ違う。
ほんの少し。
でも、確実に。
(……なんで?)
今まで、こんなことなかった。
何度繰り返しても、細かい出来事は変わっても、大きな流れは同じだった。
なのに。
「……なぁ」
千冬が小さく呟く。
「お前らさ、ほんとに覚えてねぇの?」
その声は、少しだけ不安そうで。
――その表情を見た瞬間、嫌な予感がした。
このズレは、きっと。
小さなものじゃ、終わらない。
私は、無意識に手を握りしめていた。
(……また、何かが起きる)
嫌なほど、知っている感覚。
それでも――
今回は、まだ間に合うと思っていた。
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