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その日は銀河一美少女ティリスちゃん号で過ごすことにした。地球もバタバタしているだろうし、爆破した衛星の残骸なんかが浮遊していたら危ないからその調査もしたかったし。 幸いと言うか、超高速ミサイルのエネルギーは尋常ではなかったみたいで爆破と同時に発生した熱エネルギーは残骸を瞬時に蒸発させてしまう規模だったみたいだ。お陰で他の衛星に被害はないし、スペースデブリが増える危険性も無くなった。これは直ぐにジョンさんとハリソンさんに連絡しておいたから大丈夫なはず。
尚、過酷な宇宙空間で稼働するため人工衛星と言うものは基本的に頑丈に作られている。なのだが、それらの物質を瞬時に蒸発させながら周囲に被害を与えない超限定的な爆発と言う意味不明な兵器の存在を知ったハリソンは、激しい胃痛に苛まれたがいつものことである。
ついでにこの時観測されたエネルギーは核兵器を軽く上回り、にも拘らず一定の範囲外には一切影響を与えないと言うこれまた意味不明なデータに、合衆国を始め各国軍部が青ざめたのは言うまでもない。
最初に降下する場所はかなり迷った。フィーレは日本に興味津々だし。アニメの誤解は……まあ何とか解けたけどさ。
「ふぅん、つまり架空の物語で架空の技術なんだ」
「そうだよ。だからこれは娯楽作品で実際には存在しないんだ」
「なら実現しようよ」
「へ?」
「ティナ姉ぇ、技術は発想から始まるんだよ?こんな明らかに技術レベルが違うことを想像できるなんて、地球人の想像力は予想以上だよ。つまり、技術水準が満たされたら実現できるって事なんだから!」
「ちょっとー?フィーレ~?」
「ティナ姉ぇ、取り敢えず現地の技術者に会わせてよ。何が足りなくて、地球の技術がどのレベルなのかを確かめたいから」
ダメだ、地球人。もっと言えば日本人の妄想力に強い感銘を受けてしまった。まあ、SF作品にある超技術は大抵実現しているのがアードなんだけどね。フィーレも居るし、その気になればガ◯ダムやスーパーロボットだって作れちゃうんだろうなぁ。
まだあるなら、前世で見かけた実物大の物の中身を作り替えてしまえば完成だ。ロマンはあるけどさ。
「フィーレのお願いはあるけど、先ず最初に合衆国へ降りるよ。フィーレを異星人対策室の皆さんに紹介したいし、交易品をハリソンさんに渡さなきゃいけないし」
前回は渡せないままだったんだよね。今回はバタバタしたけど収入もあったから前回と合わせてトランク百個、医療シートは二千枚を用意できた。本当はもう少し集められたんだけど、時間がなかった。
ただ、ばっちゃんにお願いして次に帰還した時はもう少し多めに用意して貰うことになった。
他にも交易品になりそうな品はあるし、そのリストを渡すのも大切な仕事だ。もちろん見返りは地球の食べ物。今回は前回分も合わせてタンカー数隻分を用意してくれた。
こんなにたくさんの食料を渡して大丈夫なのかな?って心配したけど、どうやら私が生きていた時代に比べて食料生産効率が劇的に上がったみたいだ。
畑を見せて貰ったけど、作物が記憶にあるものより明らかに大きくてビックリした。遺伝子工学が進歩して、作物を巨大化させて更に生育スピードを向上させたらしい。もちろん問題もあって、他の生態系に異常を与える危険性が大きいから野外での栽培は厳禁で専用の施設で育てられているらしい。
設備投資や用地確保にお金と手間は掛かるけど、その恩恵は大きい。ドクターさんは、十年以内に世界から飢餓を無くすと意気込んでいたなぁ。
正午過ぎ、私達はホワイトハウスへ転移することにした。いつもフェルに頼りっぱなしだから、今回は簡易ポータルを持ち込む予定だよ。ゲートと似たような原理で、二つの地点を結ぶ転送装置。
取り敢えず異星人対策室の本部と、日本のやすらぎ旅館に設置する予定。ジョンさんと朝霧さんには許可を貰っている。
事前にハリソンさんから指定された場所へ転移すると、広いホールに大勢の報道陣が集まっていた。そして転移した私達をハリソンさん達が笑顔で迎える。転移してきたことにビックリするだろうし、それを分かってて迎える図が出来るわけだ。上手いなぁ。私達と合衆国は良好な関係だと内外にアピール出来るしね。
ただ、報道陣のどよめきが強すぎるような気がする。それに何故だか合衆国要人の皆さんもビックリしてるよ。なんで?
「おい、あれを見ろ。フェル嬢じゃないぞ!」
「髪の色が違うし、もっと幼い感じだ。衣服は同じで羽根もある……まさか、新しいリーフ人か!」
「そんな連絡は無かったぞ!」
「新しいリーフ人だと!?何故政府は事前に知らせてくれないんだ!?」
「大統領お得意のサプライズって奴じゃないか?」
「それでも事前に知らせて欲しいよな、予定が狂うじゃないか」
「なあ、写真はダメかな?」
「止めとけ、以前ビックリさせてしまったらしい。出禁を食らうぞ」
「羽根は一対?髪の色も銀髪だし、同じ種族でも違いがあるのか?」
「リーフやアードにも人種の違いがあるんじゃないか?とにかくスクープだ!」
あっ、フィーレのこと伝えるの忘れてた。
ハリソンさんの笑顔がひきつってる……ごめんなさい……。
「ティナちゃん、やらかしたなぁ?☆」
「まあ、ティナですから…」
「ティナ姉ぇらしくて安心したよ。出来る女なティナ姉ぇとかティナ姉ぇじゃないし」
「ちょっとフィーレ、どういう意味?」
フェルも苦笑いしながら軽くフォローしてくれた。いやまあ騒がしくなるよね、新しいリーフ人が追加でやって来たんだからさ。
「地球へようこそ、ティナ嬢。再び来訪してくれて嬉しいよ。彗星の件でお礼をさせて貰いたいが、先にそちらのお嬢さんを紹介していただけるかな?」
ハリソンさんが声をかけてくれた。もう満面の笑顔だ。流石は政治家さんだね。
『ハリソン氏の消化器官に深刻なダメージを確認しました』
「アリア、分析しないの。ハリソンさん、連絡が遅れてごめんなさい。この娘はリーフ人のフィーレ。私の後輩……まあ妹みたいな娘で、アードのメカニックです」
「ほう、メカニック。それは興味深い。初めまして、フィーレ嬢。貴女の来訪を心から歓迎しますよ」
ハリソンさんが握手を求めてフィーレが応じた。握手の概念はアードにもあるし、その辺りは大丈夫な筈。
「こんにちはー、フィーレだよ。ティナ姉ぇから色々聞いてるよ。取り敢えず地球の技術データ全部見せて。軍民関係無しでよろしく~」
あっ、場の空気が凍り付いた。
……これも私のせい……じゃないよね?