テラーノベル
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研究所中に警報が響いていた。
赤い警告灯が光る。
慌ただしく走る兵士達。
無線の怒鳴り声。
施設全体が騒然としている。
だが。
モトキ達は止まらなかった。
「右!」
ヒロトが叫ぶ。
三人は分岐路を駆け抜ける。
背後では追手の足音。
けれど今は戦っている時間も惜しい。
目的は一つ。
涼架を連れ帰ること。
それだけだった。
⸻
最深部。
実験室。
涼架は目を閉じたまま座っていた。
機械音だけが響く。
脳波モニター。
記憶干渉装置。
そして無数のデータ。
研究員が慌てていた。
「先生!」
「侵入者が第三ブロックを突破!」
榊は落ち着いたままモニターを見る。
「予定より早いな」
「迎撃部隊を….」
「いや」
研究員が固まる。
榊は静かに笑った。
「ちょうどいい」
そして。
涼架へ視線を向ける。
「最終確認をしよう」
⸻
数分後。
モトキ達は巨大な扉の前へ辿り着いた。
地図によれば ここが最深部。
涼架がいる場所。
ヒロトが息を整える。
「この先だ」
モトキは迷わず扉へ手をかけた。
レイも隣に立つ。
そして。
重い扉が開く。
⸻
広い部屋だった。
白い光。
大量のモニター。
研究員達。
そして中央。
椅子に座る涼架。
「涼ちゃん!」
モトキが駆け出す。
やっと会えた。
助けられる。
そう思った。
だが。
涼架はゆっくり顔を上げる。
その瞬間。
全員が止まった。
瞳の色が違う。
冷たい。
何も映していない。
まるで知らない人を見るような目。
「……涼ちゃん?」
返事はない。
代わりに。
榊が後ろから現れた。
「ようこそ」
モトキは睨みつける。
「返せ」
榊は肩をすくめる。
「返す?」
「彼はここにいるよ」
その言い方が癇に障る。
モトキは一歩前へ出た。
「涼ちゃん」
今度は真っ直ぐ呼ぶ。
「帰ろう」
涼架は数秒黙っていた。
そして。
口を開く。
「……対象確認」
モトキの表情が止まる。
ヒロトも息を呑む。
レイの赤い目が揺れた。
涼架は立ち上がる。
103
Riri
63
Riri
199
動きが不自然なほど滑らかだった。
「侵入者」
感情がない。
いつもの優しい声なのに。
何もない。
空っぽな声。
「排除します」
その瞬間。
空気が変わった。
床が砕ける。
涼架が消えた。
「っ!?」
モトキが反応するより早い。
衝撃。
身体が吹き飛ぶ。
壁へ叩きつけられる。
「モトキ!」
ヒロトが叫ぶ。
だがモトキ自身が一番驚いていた。
見えなかった。
涼架の動きが。
涼架は静かに立っている。
白い髪。
冷たい瞳。
そして。
頭の上。
獣の耳。
レイに似た銀色の耳が生えていた。
ヒロトが息を呑む。
「そんな……」
獣人化。
もう始まっている。
いや。
始まっているどころじゃない。
完成に近い。
榊が満足そうに微笑む。
「素晴らしいだろう」
モトキが立ち上がる。
口の端を拭う。
それでも目は涼架から逸らさない。
「……涼ちゃん」
呼ぶ。
何度でも。
「オレだよ」
涼架は無表情だった。
「識別不能」
「違う」
一歩近づく。
「モトキ」
「涼ちゃんと三年一緒にいた」
「鹿肉焦がして」
「怒られて」
「一緒に逃げて」
声が震える。
「覚えてるだろ」
沈黙。
涼架の瞳が微かに揺れる。
ほんの一瞬だけ。
だが。
榊が静かに言った。
「命令を実行しろ」
その言葉で。
揺れが消えた。
涼架はゆっくり手を上げる。
冷たい声。
「排除します」
次の瞬間。
強烈な衝撃が部屋を駆け抜けた。
モトキは歯を食いしばる。
目の前にいるのは敵じゃない。
ずっと探していた人だ。
だから。
拳を握りながらも。
本気では戦えなかった。
そして。
それが最悪の隙になる…
コメント
1件
あ、もうこれ…やばかったです。 涼ちゃんのあの目が、ほんとに何も映ってなくて震えました。モトキが必死に呼びかけるシーン、声震えてるのが伝わってきて胸が締め付けられましたよね。しかも涼ちゃんが一瞬だけ瞳揺らしたのに、榊の一言で消えるところがもう辛すぎる…。そして獣耳って、そういうことか、って。モトキの「本気で戦えない」気持ち、めちゃくちゃわかるけど、それが“最悪の隙”って…続きが気になりすぎます🖤