テラーノベル
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准は封筒を押し返した。涼の横を通り抜け、外の通路へ向かう。
「そ、そんな……准さん、待ってください!」
涼は慌てて追いかけようとしたが、彼はそれを分かっていたかのように振り返って車のキーをちらつかせた。
「いらないから。代わりに、俺の言うことを聴いてよ」
「は……な、何ですか?」
准の言葉に涼は安堵の表情を浮かべる。しかしその眼には不安と警戒の色も混ざっていた。
それでも構わない。
どっちにしろ今日は逃がすつもりはなかった。
自分ももう、逃げるつもりはない。
深く息を吸い、彼の瞳を真っ直ぐ見据えた。
「涼。今から俺とデートしてくれ」
「……はいっ!?」
案の定、涼は露骨な驚きっぷりだった。
「な、何故そういう流れに? ま、まさかデートとは名ばかりの地獄巡りを計画されてるとか……?」
相変わらずのペースでぶつぶつ言っているが、そこは無視して准は彼の手を引いた。
「ちょっと、准さん!?」
「どうせお前も今日は暇だろ? それとももう俺と一緒にいるのは嫌か?」
「……っ」
手を引きながら、涼の顔を一瞥する。彼はまだ頬を紅潮させていて、混乱している様だった。
「そんな訳ないじゃないですか。准さんは変なところで……人が悪いです」
「まあな。でもお互いさまだろ」
笑って言うと、涼も下がり眉のまま笑って見せた。
「ですね。……わかりました、今日はどこでもお付き合いします」
「言ったな? じゃあ思い切って遊びに行くぞ」
涼の了承を得たところで、准は揚々と手を引っ張った。今は不思議と、足取りも軽い。
今日はある意味記念日だ。初めて仕事をサボって、初めて誰かをデートに誘ったのだから。
准の車に涼も同乗し、ナビを操作する。
「さぁ、どこに行きたい? 誘っといて悪いけど、ノープランなんだわ」
「俺は……准さんの好きな所で」
「んん~……映画もいいし海もいいし、美術館やミュージカルなんかもいいな。いや、ここは王道で遊園地とか?」
「あはは……そうですね。俺、遊園地なんて何年も行ってません。もし准さんさえ良ければ、行きたいかな」
「じゃあそうするか」
どこの遊園地に行きたいのか訊くと、涼はどこでもいいと答えた。なのでここは雰囲気を大切に、時間もあるから海沿いの遊園地をナビに入力し、車を走らせた。
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