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コメント
2件
フォロー失礼します。 こういう系のお話好きです… 語彙力無くてごめんなさい()
今日上がるくそでか楽しみ民
注意⚠️
自殺表現あり
ご本人様一切関係ございません
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「……ほんとに、逃げるの……?」
なつの声は細く震えていた。
怖い。でも、いるまのそばにいたい
――その葛藤が皮膚越しに伝わる。
いるまは、なつの頬をそっと指で
拭いながら言う。
「もう十分苦しんだろ。」
「……いるま……」
「だから いこ。」
その言い方はあまりにも静かで、
やさしすぎて。
なつは涙をぬぐいながら、小さく頷いた。
「……うん……」
いるまの胸にぎゅっとしがみつく。
いるまはその背をゆっくり撫でながら、
「じゃあ、準備しよっか。」
と言った。
◆
夜。
ふたりは手をつないだまま、いるまの
部屋の明かりもつけずに座り込んだ。
スマホを照らしながら、
ひとつずつ確認していく。
薬か飛び降り。
場所。
時間。
誰にも見つからないようにする段取り。
なつは途中でふっといるまの
肩にもたれた。
「ねぇ…いるま。」
「ん…?」
「最期まで……ちゃんと、隣にいてね?」
その一言があまりに弱くて、切なくて、
全部を捧げてるみたいで。
いるまは迷いなく答える。
「大丈夫、離さす気ないから。」
「……よかった……ッ」
なつは息を吐き、安心したように
目を閉じた。
◆
準備は細かく、現実的で、
淡々としているのに――
その実、ふたりとも胸の奥は焦げるみたいに熱く握り合っていた。
逃げる先が“終わり”でも、
ふたりにとっては“救い”で、
そして何より“ふたりきり”になれる
唯一の選択だった。
「なつ、怖かったら言えよ。」
「……怖いよ。でも……
いるまと一緒なら……いいの。」
その言葉を聞いた瞬間、いるまはなつの顎をそっと持ち上げてキスを落とす。
「……大好きだよ、なつ。」
「俺も……大好き……ッ!」
窓の外の街灯が、なつの涙で濡れた頬を
ぼんやり照らしていた。
いるまは、泣き続けるなつの顔を
覗き込んで、
少しだけ首を傾けた。
「なつ、飛び降りとかにしようと
思ってんだけどって…」
「怖くなっちゃった?」
その声音は、責めるでもなく、
ただ“確認するように”。
なつは堪えきれず、
またぽろぽろと涙をこぼす。
息が詰まりながら、
喉の奥でしゃくりあげる。
「……っ、ごめん……、、っ」ポロポロッ
いるまはその頭を自分の胸元へ抱き寄せ、
子供をあやすみたいに優しく撫でた。
「んーよしよし。
怖いよな。うん、わかるよ。」
掌はあたたかくて、包むみたいで。
なつはその腕の中で必死に呼吸を整えようとしていた。
「今日はやめとく?」
いるまは耳元で静かに問いかける。
「ん、やだっ……」
泣き声混じりの否定。
迷って泣いているのに、
決意だけは手放せない。
「やだね。」
いるまは優しく笑って、
なつの背中をぽんぽんと叩いた。
「薬にする?」
なつは少し顔を上げ、
涙で濡れたままの瞳でいるまを見た。
「…、いるまはどっちがいい?」
その聞き方があまりにも従順で、
委ねきっていて、
“自分の終わり”ですらいるまに
選ばせるほど。
いるまはほんの一瞬だけ考えるふりを
して、 すぐに答えた。
「んー……飛び降り??」
「じゃあそれ……っ」
涙を落としながら、
なつは震える声で答える。
その返事は“覚悟”というより“愛情の証”
みたいだった。
いるまは立ち上がり、なつの手をぎゅっと
握る。
「行こ?」
なつは目を赤くしたまま、
ぎゅっと握り返した。
「……ぅん」
ふたりの影が重なったまま、
ゆっくり、扉へと向かって歩き始める。
――――――――――――
屋上の空気は冷たくて、
でもいるまの手だけはずっと温かかった。
なつはその手をぎゅっと握ったまま、
薄暗い夜空を見上げていた。
「……いるま。」
「ん?」
「……ほんとに……大丈夫?」
その問いは、
“いく覚悟”じゃなくて、
“自分のせいでいるまが苦しんでないか”
を 確かめる。
いるまはすぐに笑う。
いつもの優しい笑顔。
「大丈夫だよ。なつの隣なら、どこでも。」
でも——
ふたりの指が絡んだまま、
ほんの一瞬だけ、
いるまの親指の力が弱くなった。
……弱くなったのを、なつは気づく。
なつが不思議そうに見つめると、
いるまは一度だけ視線を落とした。
そして、ぽつりと呟く。
「……なつ。」
「ん……?」
「本当はさ……俺……」
夜風がふっと強く吹き、
いるまの声をかき消しそうになる。
だけど確かに聞こえた。
「……ちょっとだけ……怖い。」
その言葉を言った瞬間、
いるまは自分の唇を噛んで、
苦笑した。
「バカみたいだよな。
なつを支えてるつもりだったのに……
俺が弱音なんてさ。」
なつの目が揺れる。
驚きと、切なさと、愛しさと。
「……いるま。
怖いのに……俺のために来てくれたの……?」
いるまは視線をそっと上げ、
なつの頬に触れた。
その瞳には
“覚悟”と“矛盾”と“愛情”が全部
混ざってる。
「当たり前だろ。
怖くても……なつがひとりで怯えるのは、
もっと嫌だから。」
なつの喉が震えて、
涙がまた滲んだ。
「……俺……いるまのそういうとこ……
ほんと大好き……っ」
いるまは優しく笑って、
その涙を親指で拭った。
「俺も、なつのそういうとこが好きだよ。
怖くても正直に言ってくれんの。」
なつは震える声で問い返す。
「……じゃあ……どうする……?」
いるまはゆっくり、
重い呼吸を一つ吐いて――
「……なつがどうしたいか、教えて?」
その声は、
“決めさせるため”じゃなくて、
“本音が聞きたい”と求める声だった。
ふたりの距離は近く、
握った手は温かいまま、
心だけが揺れている。
ふたりは抱き合ったまま、
何も言わず、お互いの鼓動だけを
聴いていた。
なつの指がいるまの背中をぎゅっと掴む。
いるまはその肩を包み込む。
「……ん、わかったよ。」
いるまは静かに、でも確かに言った。
すべてを受け入れた声だった。
そしてゆっくりと、
なつの唇に触れるようにキスを落とす。
温かくて、切なくて、
最期を確かめるような深いキス。
「俺……今幸せ……っ
いるまといれて……」
「俺もだよ。」
「……大好き。」
「ん、愛してる。」
なつの涙がひとつ、
いるまの頬に落ちる。
「……まって……っ
もっかい……キスしたい……」
その声はあまりに必死で、
幼くて、
愛しすぎて。
いるまは小さく笑った。
「はいはい。
なつはほんと……かわいいんだから。」
そして——
二度目のキスを重ねた瞬間。
“踏み出そうとした”その時。
――カラン。
どこからか落ちた小石が、
コンクリートを転がる音がした。
本当に小さな音。
でも二人の足元のすぐそばだった。
なつの身体がびくりと震える。
いるまの腕にも一瞬だけ力がこもる。
風が強く吹いて、
ふたりの髪と服を大きく揺らした。
その一瞬、
時間が止まったみたいに感じる。
そのままふたりは縁の前で抱き合い、
風の中で足を踏み外し落ちた。
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