1時間ほどカフェに居座り、他愛のない会話やお互いの話などをしたりした。
「いい服も買えたし、幡中さんといろんな話できてよかった。ありがとう」
「こちらこそ。カフェ代ほんとにありがとう。今度絶対何かでお返しするから」
お会計のときに佐倉くんがいいよ、と言ってカフェ代を払ってくれた。デパートかどこかで何か差し入れを買って今度渡そう。
「いやいいよそんなの、俺がやりたくてやったことだし」
佐倉くんは笑ってそう言い、左腕の時計を見た。
17時20分。少し涼しくて過ごしやすい。
「、、もう少し一緒にいてくれない?」
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「すごい、綺麗」
「でしょ、好きでたまにここ来るんだよね」
カフェから歩いて数分、海がよく見える。
「海とか景色好きなの?」
「うん、なんか見てたら心が綺麗になってく気しない?」
「浄化されるよね」
そうそう、と言って佐倉くんは笑った。
風が心地よくて、綺麗な夏だと感じた。
「俺、幡中さんのこと好きだよ」
横を見ると、真っ直ぐ海を見つめる横顔が少し綻んでいた。
「中学のときからずっと可愛くてかっこよかった。、、最初はただの憧れだと思ってたけど、好きなんだって気づいたんだ」
佐倉くんは私の目を一瞬見て笑った。
「改めて言うようで変だよね」
「…ううん」
私は少し微笑んだ。
きっと、すごく悪いことをしているんだろう。
佐倉くんにも上岡にも、ずっと返事しようとしないでそのまま、よく分かろうとしないでそのままだ。
二人が優しいだけなんだろう。
「、、花火行けたら、その時にもう一回告白しようと思ってたんだ」
横顔はずっと綻んだままだった。
「だから、今の時点で考えてみて、正直な気持ち聞かせてほしい。わからないじゃなくて、幡中さんの答え。俺自分が思ってるより短気かもしれなくて、きっとそんないい男じゃないんだ」
よく見る、困ったような笑顔。
「諦めた訳じゃないよ、好きだから。部活に真剣なところとか、いっつも後輩のサポートしてたりアドバイスあげてたり、自分を持ってるとこがかっこよくて、…でも笑うとめっちゃ可愛いところとか、好きなんだ」
「花火の日までに聞かせてほしい。持ち越してその日迎えたら、きっと上岡くんに失礼だから」
本当に、誠実で優しい人だ。
「…うん、わかった」
「、、ありがとう」
佐倉くんは笑って、帰ろっかと言った。