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──二度寝をしてすっきりと起きられた朝、三度目のコーヒーを彼と飲みながら、ふと見れば、テーブルの上には、お互いの合鍵が付いたミコとリコのキーホルダーがあって、
朝の陽光に照り返して光るアクリルプレートのキャラの顔が、どこか笑って見えるようにも思えた。
お店で買った時、自分の名前に似ているミコの方を彼に持っていてほしいと切実に願ったことが、つい昨日のことのようにも浮かんだ。
「こんな日が来るなんて、あの頃は想像もしていなくて」
自分のキーホルダーに付いた彼の部屋の鍵を、感慨深い思いでスーッと指でなぞった。
「……あの頃?」
「はい、このキーホルダーを買ってもらった時にはまだ、こんな未来が訪れるだなんて、考えてもみなかったのにって」
「ああ、そうだな」と、彼が頷く。
「僕も、もしこれがきっかけになればとは思ったが、そううまくはいかないかもしれないとも感じていたし、何より君も、元は勘違いをしていたぐらいだったからな」
彼が拳を口にあてて、思い出したように喉元でククッと小さく笑う。
そう、私ったら、チーフがアピールのつもりで付けてくれたキーホルダーを、実は遠ざけようとしてるんじゃないかって全く逆の意味に捉えて……。
「……あの時は勝手に落ち込んじゃって、すいません」
ひょこっと頭を下げる。
「いや、いいよ。君の勘違いもあって、僕も告白をしやすくなったところはあったし、」と、そこで一旦言葉を切ると、
「それに、いいサプライズにもなったからな」
彼はそう言って、窓から漏れる明るい日差しを受けた、眩しいくらいの笑い顔を私に向けた──。
テーブルの上で、二つのキーホルダーをくっ付けると、併せ目がぴったりと嵌って、こんな風にずっと二人で離れないでいたいと思っていると、
キーホルダーに何気なく置いた私の手に、大きくて温かな彼の手が覆うように重ねられた。
「──これからも、一緒にいてくれるか?」
不意の彼の言葉が、なんだか愛の誓いのようにも感じられて、ドキドキと胸が高鳴る。
「……はい、ずっと一緒に」
いつか本当にヴァージンロードで誓い合う日を夢見て、はにかんで応えると、より強い力で手がギュッと握られた。
仕事ではクールだけれど、プライベートでは熱っぽく愛してくれる彼と、
これから先いつまでも、重ね合わせた手の温もりのように、温かで幸せな時を過ごしていけたらと、まるで祝福してくれているかのような晴れ晴れとしてまばゆい朝の光に包まれて、一途に願った……。
終──
※本編終了で、特別編に続きます。