テラーノベル
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「めめ、散歩!」「蓮、テレビ!」
二人の要求が、左右から同時に飛んでくる。
「いや、待って。ちょっと待って。君たち、誰? どこから入ってきたの?」
「だから、こーじやって!」
「俺、さくまだよ!」
「いや、そうじゃなくて……!」
目黒が頭を抱えたところへ、寝癖のついたラウールがやって来た。
「朝から何の騒ぎ……」
言いかけて、止まった。
居間の真ん中にいる、見知らぬ子どもが二人。
片方には茶色い耳と尻尾。もう片方には、ピンク色の髪と耳。
ラウールは目を瞬かせた。
それから、ゆっくりと目黒を見た。
「……目黒くん…、これ、何?」
「俺が聞きたい」
二人とも寝起きだった。寝起きであることを、こんなにもありがたいと思ったことはない。
もしこれが夢なら、早く目を覚ましたかった。もし現実なら、誰かに説明してほしかった。
そのとき、居間の襖が勢いよく開いた。
「お前ら、朝からうるせぇ!」
現れたのは、二人より少しだけ大きな少年だった。
グレーの耳。眠たげな目。いかにも不機嫌そうな顔。
「お前ら、少しは静かにできねぇの?」
「しょっぴー、聞いてぇ! さっくんが割り込んできたん!」
「俺はテレビをつけてほしいだけなの!」
「ちゃうねん、めめは俺が起こしたんやで?」
三人が一斉にしゃべり始めた。
こーじは目黒の服の裾を引っ張り、さくまはラウールにリモコンを催促し、しょうたはそんな二人を怒鳴りつける。
誰もが自分の言い分を譲らない。朝の静かな居間は、あっという間に小学校の休み時間みたいになった。
「分かった、分かった!こーじは目黒と散歩!さっくんはテレビ!しょっぴーは……ええと、とりあえず静かにして!」
ラウールが叫ぶと、三人は一瞬だけ黙った。
その隙に、ラウールは目黒の腕をつかんだ。
「ねえ。ほんとに誰なの、この子たち」
目黒は答えようとした。
けれど、その前に、グレーの耳をした少年がラウールを見上げた。
「何言ってんの。俺たち、お前らに拾ってもらったじゃん」
その言葉に、目黒の身体が固まった。
拾ってもらった。
三日前。
段ボールの中で、三頭が身を寄せ合っていた光景が、急にはっきりと蘇る。
白い子。グレーの子。茶色い子。
目黒は、目の前の三人を見た。
茶色い耳と尻尾。ピンク色の髪と耳。グレーの耳。
まさか。
いや、まさか。
「……お前ら、もしかして」
「だから、そうだって」
しょっぴーは、あくびをしながら言った。
「俺がしょうた。こっちがさくまで、そっちがこーじ」
紹介された二人は、待ってましたとばかりに手を振った。
「さっくんでーす!」
「こーじやでぇ!」
目黒は口を開いたまま、言葉を失った。
ラウールも同じだった。何かを言おうとして、結局、もう一度三人を見直す。
耳がある。
尻尾もある。
しかも、よく見ると、こーじの顔には昨日までの茶色い子犬と同じような、人懐こい表情が浮かんでいた。
さくまは落ち着きなく跳ね回り、しょうたは眠そうに目をこすっている。
それぞれ、あまりにも見覚えがあった。
「……うそでしょ」ラウールが呟いた。
「俺も、そう思いたい」目黒は真顔で答えた。
その瞬間、こーじが目黒の手を握った。
「なあ、めめ。散歩、まだ?」
目黒は自分の手と、こーじの顔を交互に見た。
三日前まで、そこにいたのは小さな子犬だった。
それが今は、自分の手を握って、散歩をせがんでいる。
「……ちょっと待ってて…?」
ようやくそれだけ答えると、こーじは満面の笑みを浮かべた。
「やったぁ!」
その声を合図にしたように、さくまがテレビの前で跳びはね、しょうたがまた怒り始めた。
「だから!お前ら、うるせぇって!」
「しょっぴーが一番うるさい!」
「にゃは、みんな朝から元気でいいねぇ!」
三人の声が重なり、居間に響く。
目黒とラウールは顔を見合わせた。
段ボールに入っていた三頭の子。
名前を書いた、あの一枚の紙。
そして今、目の前で大騒ぎしている三人の子ども。
どう考えても、説明がつかない。
けれど、説明がつかないからといって、目の前の現実が消えてくれるわけでもなかった。
「……とりあえず、ふっかさん、起こしてこよう」
ラウールが言った。
「そうだね」
目黒は頷いた。
この家には、まだ二人。何も知らずに眠っている住人と、気持ち良さげにランニングをしている住人がいる。
そして、きっと二人とも、この状況を見て同じことを言うのだろう。
――何、これ。
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((o(´∀`)o))ワクワク