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アピカQ⭐️❄️🎨_qdm
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心なしか微笑んでいるような顔のぼんさん。
輪っかを作った紐を首にかけ、首一つでその体重を支えてる。
足は垂れ、椅子が転がっている。
「ぼん、ぼんさんッ…!」
ぼんさんの足を掴み、体重を首にかからぬように持ち上げる。
紐から首を外し、頭を打たぬように彼を横にさせる。
「しっかりしろ…!しっかり…!ぼんさん…!!」
携帯で救急に電話をかける。
『首を吊っていた。顔は青白い。唇も紫色。心臓も動いてない。息もなし。』
言えば言うほど彼が死んでいると言う事実を突きつけられる。
『では、心臓マッサージと人工呼吸をし続けながら、救急車をお待ちください』
そんな案内を聞き、言われなくてもしてるわ、と悪態をつく。
オペレーターに当たっても仕方ないのに、焦りでうまく頭がまとまらない。
「ぼんさん!ぼんさん、ぼんさんぼんさん!!起きろ!寝るな!死ぬな!勝手に死ぬな!!」
胸を圧迫し、唇同士をつけ息を吹き込み、また胸を圧迫し続ける。
目を閉じたまま疲れ切ったような表情の中、安心したような顔で眠るぼんさんを、叩き起こそうと胸を圧迫し続け、頬を叩く。
「起きろっつってんだろ!?いつまでッ、いつまで寝てんだ!」
一向に改善する気配のないぼんさん。
遠くからサイレンの音が聞こえる。
救急隊員の人が入ってきて、引き継ぐ。
やっと冷静になってくる頭。
いつから首を吊っていたか分からぬが、助かる見込みは低いだろう。
ストレッチャーに乗せられたぼんさんは救急車へと運ばれる。
それに僕も同乗し、救急車はサイレンを鳴らし走り出した。
処置室に運ばれ早数時間。
後輩組と猫おじが血相を変え走ってきた。
「ぼんさんが、首を吊っていたって本当ですか…!?」
「どんな状況や…!?死ぬん!?死んじゃうん!?」
「なんで首吊ってたんすか!?てか、今どんな状態…!?」
「容体は…!?ぼんさんの容体はどんな感じなんですか…!」
口々に言われ、何から説明しようかと考える。とりあえず言えることは一つ。
「……分からない……死ぬかもしれない…」
そう呟けば、4人は膝から崩れ落ちた。
「俺が……もっとぼんさんを気にかけてれば…」
「もっとぼんさんを焼肉に誘っとけば良かった…」
「もっとなんか…悩みとか聞いときゃ…」
「くそっ…俺も昔っからの仲だったのに…」
僕から言えることはない。後悔のみだ。
相方なのに。相方なのに、知らんぷりしていた。彼が背負っている物を知ろうともせずに。
パチッと手術室のランプが消えた。
扉が開き、ストレッチャーが出てくる。
横たわっているぼんさんの顔を覗き込む。
穏やかな顔。
「……ぼんさん」
「ぼんさんは…ぼんさんは、助かったんですか…?」
そうおんりーが聞く。
医師は、微笑み、コクリと頷いた。
力が抜け、腰が抜けた。
「間一髪、一命を取り留めました。あと一足遅かったら間に合わんかったでしょう」
ガラガラと音を立て、動き出すストレッチャー。病室へと運ばれていく。
「いき、いきてる…いきてる…ぼんさん…まに、間に合っ…」
ポロッと涙が溢れ落ちる。
死んだと思った。
失ったと思った。
後戻りできないと思った。
僕のせいで死んだと。
謝れないと。
僕がどんだけぼんさんを想ってるのか伝わらぬまま彼は1人旅立ってしまうのかと。
みんなに支えられ、歩く。
ぼんさんの病室へと、一歩ずつ。
ぼんさんは穏やかに眠っている。
きっと死ねたとでも思ってるんだろう。
勝手に死なせない。死なれちゃ困る。僕はぼんさんに会う前はメンヘラだったんだぞ。
メンヘラに戻っちゃったぞ。
ぼんさんに全てメンヘラするぞ?
温かい手を握り、頬を撫でる。
次からはもっと褒めて褒めて甘やかさないと。
そうしないと、液体みたいな彼は僕の手のひらから消えてしまう。ずっと僕の手のひらに掬っておかないと。
「ぼんさんっ…く、くくく…くふふふ……起きたら覚えとけよ…勝手に死のうとしたんだから、減給とお叱りしてやる……」
「怖いっすよ、ドズルさん」
誰かが呼んでいた気がする。
『はよ、起きれやぁ…』
誰かが呼んでいる気がする。
『寝坊なんて、いつもの事じゃないですか…』
誰かが呼んでいた気がした。
『かぁ〜、まだ起きれんかぁ〜…年っすねぇ〜』
誰かが呼んでいる気がした。
『ぼんさ〜ん、社長、泣いちゃってますよ…』
ドズさんが呼んだ気がする。
『ぼんさん、なにしてんすか……マッジで…』
手を伸ばしたら、温かくて。
落ち着く。気持ちいい。
引き上げられていく意識もそのままに。
彼らの、声へと近づいていった。
目を開ければ白い天井にカーテンが目に入った。
確か俺は首を吊って…。
横を見れば、ドズルさんが隣でベッドに頭を預け突っ伏し寝ていた。
俺にかけられている布団を掴み、まるで肩に掛けてあげましたよと言わんばかりに。
もう反対を見れば後輩組が並ぶように寝ている。
おんりーはドズルさんと同じように寝ていて。
俺の頭の近くに手があった。まるで今まで撫でていたかのような…。
おらふくんはおんりーに寄りかかりながら寝ていた。おらふくんは俺の右腕を抱きしめ離さない。
腕を抜こうとすれば、離さねぇ…と呟く。
MENはベッドに背中を預けていた。俺の右手を自分の胸に乗せて寝ている。MENの心音を感じられるが動かすと起こしちゃいそうだ。
視線を動かし、どうするべきかと悩んでいたらカーテンが開いた。
見れば猫おじで。
目が合った猫おじは固まった。
「ね、こ、ぉ……じ…?」
掠れた声で囁いても、彼は微動だにしない。
もう一度、彼の名を呼ぶ。
「ね…こ、おじ……こ、こ…ど、k「ぼんさん!?」
びっくりした。いきなり大声で叫ばないでよ。心臓持たんて。
「ぼんさん!ぼんさん!!分かります!?猫おじです!」
「わ、わか、分かる、からっ…ここ、どこよ…」
「ここは、病院です。あなた首吊って、死のうとしたでしょ?そのせいですよ」
「……あ…ぁ…しくった…」
「しくったじゃないですよ!? 」
ゴソリ、と音を鳴らし4人が起きる。
「……猫おじ……うるさ……ぼんさん!?」
それからワーワー煩くなって、叱られて泣かれて喜ばれて。
気づけば、ドズルさんから悩み相談室を開かれていた。
「なんで死のうとしたんです?」
「……いや……だって…ってかさ、遺書見てないの?」
「見ました。助かったって聞いてなお、穴の空くほど見ました。保管してますしコピーしてますし、なんならスタッフさん諸共配りました」
「それは良いのか?仮にも“遺書”だぞ?俺に対しての侮辱ぞ?」
「ぼん死に対してなんで敬意を払わないといけないんです?あれはぼんさんの悩み相談の手紙だと思ってます」
「ぼん死って言うな。敬意を払えとは言ってませんけど」
「どちらにしろ、無かったことにはさせませんからね、あの遺書」
「マジかよ…保管し続けんの…?」
「もちろん。ぼんさんを失わないようにする為にずっっっと保管しますし、なんなら毎日見ます」
「ちょっと…やめてよ、恥ずかしいじゃん… 」
「で?なんで死のうと?」
「………俺がここにいる意味が分かんなくなったんでしょうね。俺いなくても良いじゃないかって…」
「駄目です。僕が許しません。あなたがいる意味を見いだせなくても、僕が分かってるから良いんです」
「強引だなぁ…」
「説明されるよりも良いでしょ。僕がいて欲しいから置いてるんです」
「それがずっと続くとは限らないじゃないっすか」
「ですね。でも、今必要なんで」
「強引だぁ……」
「だから、今、死ぬなつってるんです。僕があなたを捨てるまで」
「え〜……」
「え〜、じゃない。今あなたは僕のなんですよ?僕の所有者なのに勝手に死なれちゃ困ります」
「でもさぁ、楽になりたかったもん…」
「楽にしてやりますよ、YouTuber無期限休止してください」
「それは遠回しにクビって言ってる?」
「いえ?YouTuber無期限休止して、僕のヒモになってください」
「そこまで俺を手元に置いときたいの!?」
「そこまで置いときたいです、そこまでしてでもあなたに生きていて欲しいんです」
「強引だなぁ〜…?」
「ね?はい、決定。僕があなたに死ねって言うまで生きてること。OK?」
「はいはい…了解ですよ」
「ほんと?分かってます?」
「うん、分かってます分かってます」
「………じゃあ、ぼんさん、GPS付けて、これからおんりーの家に泊まってください」
「……え?」
「おんりーは食事管理出来ますし、ちゃんと逐一報告してくれますし、セキュリティ面も良いから」
「え……?あなたは?」
「僕は嫁ちゃんいるので。ぼんさん、居づらいでしょ?」
「そうですけど…」
「そういう事なんで」
「はぁ…分かり、ました…w」
「なんで笑ってるんです?事の重大さ、分かってます?」
「分かってます、分かってますw」
「ほんとかなぁ〜?」
「はぁ〜あ、ちょっと疲れました、寝ても良いですか?」
「起きる保証があるならどうぞ」
「あります、起きます、おやすみ」
「ちゃんと起きてよ」
「はいはいw」
「いい夢見ろよ?」
「はいはいw」
「温かくして寝てね?寒くないよね?」
「大丈夫です大丈夫ですw」
「寂しかったら言ってね?ここにいますから」
「っふふ…wはいはいw 」
「手、繋いでますからね」
「はいはいw」
「あっ…寒くないですか?布団ちゃんと掛けましょうね、どうです?」
「も、も〜!寝wかっw寝かせてよ!」
「はいはい…wおやすみなさいね、起きろよ、ぼんじゅうる」
「はいはいwおやすみ、ドズルさんw」
「ぼんさん、見て」
「え?な、えっ、遺書やん、俺の」
「現物は家ですけど、コピー持ってきました」
「なんで?」
「会社の人全員に配ったので、本人にもと」
「本人には現物よこさない?普通…」
「現物は僕が保管します」
「え〜…w分かったよ、ちゃんと保管してね? 」
「はい、あ、あと、アツクラのみんなにも配りました。LINEでデータ送りましたから」
「えっ?」
「今、アツクラのみんな来るんじゃないですかね?」
「えっ。待ってよ」
「さて、僕は帰りますわ、また明日」
「待てって、ちょ…」
「明日、退院できるそうなので、おんりーの家に行ってくださいね?」
「待っ……て……って…行っちゃったし…」
その後、押しかけてくるであろうみんなから逃げるように病室から出たのだった。
※ちなみに後日ドズルさんから怒られた