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#音駒高校マネージャー
アウラウラ
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ガーベラが咲くころに
第4話
君だけが気づいた涙
五月。
新緑が少しずつ濃くなり始めた頃。
「……望。」
病院の白い廊下。
医師の言葉が静かに響いた。
「お母様ですが、しばらく入院が必要になります。」
「過労による体力の低下もあります。」
「無理を続けたことで病気が悪化しています。」
望は小さく頷いた。
「……はい。」
分かっていた。
母はいつも働いていた。
朝早くから夜遅くまで。
「望には苦労させたくないから。」
その言葉を何度聞いただろう。
でも。
その結果が。
今だった。
🌼
翌日。
「望!おはよう!」
「おはよう。」
教室では。
いつも通り笑う。
「昨日の数学の問題教えて!」
「もちろん。」
「生徒会の資料できてる?」
「できてるよ。」
「今日のおしえて!のぞみ先生もよろしく!」
「うん。」
全部。
いつも通り。
誰も気づかない。
笑顔の奥で。
心が壊れそうなことを。
🌼
昼休み。
「望。」
清水が隣に座る。
「最近。」
「ちゃんと寝てる?」
望は少しだけ驚く。
「え?」
「目の下。」
「少しだけクマある。」
「……あ。」
慌てて笑う。
「勉強してただけ。」
「そう。」
清水はそれ以上聞かなかった。
でも。
(違う。)
そう思っていた。
🌼
放課後。
「今日はガーベラの丘行くの?」
菅原が聞く。
「うん。」
「少しだけ。」
「じゃあ俺も。」
望は笑う。
「お店の手伝い?」
「そう。」
「母さんに呼ばれてる。」
「そっか。」
いつもの会話。
でも。
菅原は気づいていた。
望の笑顔が。
少しだけ。
無理をしていることに。
🌼
夕暮れ。
ガーベラの丘。
海風が優しく吹く。
「じゃあまた後で。」
「うん。」
菅原は母のいる温室へ向かう。
望は。
いつものベンチへ。
花畑を見つめる。
「……。」
手を合わせる。
「お願い。」
「お母さんが。」
「元気になりますように。」
「お願いだから。」
「もう苦しまないで。」
声が震える。
「お願い……。」
涙が一粒。
頬を伝った。
その瞬間。
「……望。」
後ろから。
優しい声が聞こえた。
振り返る。
「……孝……」
そこには。
菅原が立っていた。
「ごめん。」
「盗み聞きするつもりじゃなかった。」
望は慌てて笑う。
「ち、違うの!」
「これは……。」
涙を拭く。
「なんでもないから!」
「望。」
優しい声。
「無理しなくていい。」
その一言で。
張りつめていたものが。
切れた。
「っ……。」
「お母さんが……。」
「入院したの……。」
「怖いの。」
「もし。」
「もし、お母さんまでいなくなったらって。」
涙が止まらない。
「でも。」
「学校では笑わなきゃ。」
「みんな心配するから。」
「私がしっかりしなきゃ。」
菅原は何も言わない。
ただ。
望の隣に座った。
「望。」
「一人で抱えなくていい。」
「俺もいる。」
「潔子も。」
「大地も。」
「旭も。」
「みんな。」
「望の味方だから。」
その言葉を聞いた瞬間。
望は。
声を上げて泣いた。
今まで。
誰にも見せなかった涙。
全部。
あふれ出した。
🌼
しばらくして。
泣き疲れた望は。
少し笑った。
「ごめんね。」
「こんなところ見せちゃって。」
「謝らなくていい。」
「ありがとう。」
「え?」
「話してくれて。」
望は少し照れる。
そして。
「……孝支。」
初めて。
その名前を呼んだ。
「!」
菅原は目を丸くする。
「今。」
「名前で呼んだ?」
望は恥ずかしそうに笑う。
「うん。」
「なんとなく。」
「孝支って呼びたくなった。」
その一言だけで。
菅原の胸はいっぱいになった。
(俺だけ。)
(名前で呼んでくれた。)
その日。
望にとって。
菅原孝支は。
“頼れる先輩”から。
“特別な人”へ。
少しだけ変わり始めた。
そして。
ガーベラの花は。
夕日に照らされながら。
静かに揺れていた。
コメント
1件
みぅ🤍🥀です。 第4話、読ませていただきました。 お母さんの入院、望ちゃんが一人で抱え込んでる感じがすごく伝わってきて、胸がギュッてなった…。でも、清水くんと菅原くんが気づいてくれてるところが、優しくて切なかったです。 特に、ガーベラの丘で涙を隠そうとする望ちゃんに「無理しなくていい」って言う菅原くんの優しさが、本当に沁みました。最後に「孝支」って名前呼ぶシーン、めっちゃ好きです。ずっと見守ってたくなるお話ですね🌙