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午後一時、北斗は玄関口に立っているアリスを見て息をのんだ
本日のアリスのピクニックファッションは、三つ編みのおさげに、麦わら帽子そして腕には大きな手さげの籠を抱えている
茶色の目は嬉しそうに輝き、体の曲線をふんわりと覆う。紺と白の水玉のスナイデルのワンピースと白のファーベスト、靴はふくらはぎまでの、茶色い編み上げブーツを履いている
フフフッ
「赤毛のアン、ファッションよ!」
そう笑う妻のあまりの愛くるしさに、北斗は倒れそうになった
その横で明が外出できるのが嬉しくて小躍りしている
そして明とアリスは北斗が乗って来た、大きな木製の車輪が付いた、レトロな荷台付きの馬車を見て歓声をあげた
「ジュリアン!!」
荷台を引っ張っている馬を見るとなんとジュリアンだった。アリスが嬉しそうにジュリアンの鼻先を撫でる、ジュリアンも尻尾を振って挨拶する
「あれからコイツの見方が変わってね、里子に出すのをやめたんだ。コイツのポテンシャルは君が乗った時に見せてもらえたからね 」
ブルルルッとジュリアンが鼻を鳴らす
「ただ・・・見ての通り、普段はこんな感じで走らないんだ」
アリスは笑った
「きっといつか走ってくれる時が来るわ、ねっ!ジュリアン!」
ニッとジュリアンが歯茎を見せた
明は、荷台に茶トラの仔猫を連れて行くと言って一匹つづ乗せている
その横でトラ猫母さんが、怒ってシャーッと威嚇している
北斗が御者でその荷台にアリスと明と、トラ猫家族が乗った楽しいピクニックの始まりだ
明が荷台に乗っているバカでかいクーラーボックスから、ファンタオレンジとグレープの500ミリリットルのペットボトルを出す
二人同時にゴクゴク飲んで、プハァーと気持ちよさそうに息を吐く
アリスがダッシュボード(車で言う運転席)にいる、北斗にファンタを渡して言う
「ねぇ!どこに行くの?」
「山道を抜けた所に小さな貯水池があるんだ、そこなら手も洗えるし、べーべキューも出来る 」
北斗は大の大人が二人でうんうん言って、やっと担げそうな大きなクーラーボックスを楽々と肩にかつぎ
片手には水の入ったバケツと、もう片手には薪の束を持っている。アリスはそんな逞しい彼の後ろ姿をうっとりと見つめた
あんなに逞しい人が、夕べの夜は信じられないくらい、優しく自分を触ってくれたことを思い出して思わず頬が熱くなった
背中の白のトレーナーがなんとも眩しい
そしてもうアリスも認めているが、成宮家で一番の料理人は北斗だ
北斗の家のキッチンには柑橘類と、塩やその他もろもろの調味料に、ハーブまでもが揃っている
一面シロツメクサの丘の上にブルーシートを広げて、目の前の折り畳みテーブルの上には、三つのスペアリブの塊を広げて載せたトレーが置いてある
その横で北斗がべーべキューコンロの炭にバーナーで火を入れる
「こういうヤツは何でも本格的にやる方が楽しいんだ 」
「素敵!私べーべキューやったことないの!」
北斗が驚いた
「バーベキューを?その歳で?やったことがないのか?」
えへへ・・・
「うん・・・手やお洋服が汚れるから・・・うちではバーベキューは禁止だったの 」
「さすがはお嬢様だな」
にやりと北斗が笑った
「夏は毎日のようにバーベキューだよ~」
北斗がアリスに向かって、仰々しく左手を振り下ろし片膝を曲げて挨拶した
「それでは!お嬢様の初バーベキュー体験が、素晴らしいものになりますように、この私めが全力で給仕させていただきます」
北斗が仰々しく手を前に垂れ脚をクロスして、お辞儀をする、アリスと明は笑いながら拍手をした
明が北斗が持ってきたトウモロコシの皮を剥いて、手慣れた様子でバーべキューコンロに並べる
北斗が持ってきたスピーカーからカントリー音楽が流れる
シロツメクサは一面に咲き乱れ、モンシロ蝶が上下に揺れながら飛んでいる、アリスからしたらまるで天国のようだった