テラーノベル
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刻まれた一言の代償
私には仲のいい友達がいた。
その子はインフルエンサーでとても人気の子だった。
私はその子をとても尊敬していて、自慢の友達。
今日はその仲のいい友達とお出かけをする日だ。
「楽しみだな〜」
私は笑顔で笑った。
「そうだね。」
私の笑顔がそっけなく返されたように感じた。
その子をチラッと見ると、スマホをじーっと見つめていた。
私は少し複雑な気持ちだった。
______
私たちがお出かけに向かったところは遊園地。
「ねーねーあそこ行かない?」
私は指をさして行った。
「今無理。今写真撮ってるの。」
その子は一瞬、険しい表情をした。
私には、それが私を睨んでいるように見えた。
「…そっか」
大切な友達だから我慢した。
____
「はあー疲れたー」
「でも楽しかったね!」
私はため息をつきながら、でも笑った。
「そうだね。」
その子はスマホをいじりながら言った。
その画面には通知がたくさんきていた。
_____
自分のベットに飛び込んでうつ伏せでスマホを開く。
「今日はだーいすきな友達と遊園地!」
…なんなの。
その投稿のコメント開いた。
「今日もかわいい!」
「遊園地いいなー!」
「景色めっちゃ綺麗!」
全部微笑ましいコメントばかり。
私はキーボードを開いて文字を打つ。
「冷たい態度取ってたくせに大好きな友達とか草」
手が震えた。
ワンタップ。
ぽちっと押す。
私はその子の別の投稿にも。
「カフェでケーキを食べにきたよー!」
「ケーキよりかわいい」
「そのカフェおしゃれでいいよね〜!」
そのコメントに反して
「カフェでケーキだけ食べる迷惑客」
他にも。
「○○の映画行った!めっちゃ面白かった〜」
「○○めっちゃ面白いよね!」
「私も行った!」
「私も○○好き!同じなのうれしい!」
私は無性に文字打った。
「かわいこぶんなブス」
全ての投稿に打った。
「きもい」
「しね」
「調子乗んな」
「可愛くない」
「うざ」
自分の言葉じゃないように感じた。
いろんなアカウントで打った。
その方がみんなから嫌われてるとわかると思ったから。
____
次の日
ぴこんっぴこんっぴこんっ
通知がたくさんきていた。
「うるさいなぁ…」
スマホを開いた。
その画面には批判が殺到していた。
「そんなこと言うなよ」
「お前に言われる筋合いねえだろ」
「勝手に決めつけないであげて」
「なんでこんなこと言うの?」
「相手の気持ち考えてから投稿しようよ」
なんで?なんで私が批判されるの?
なんで共感の声がないの?
「コメント消した方がいいよ」
そうか、そうだコメントを消そう
そしたら何もなかったことになるはず。
私は全てのコメントを消した。
_____
数日後
ある人気YouTuberに取り上げられた。
「有名インフルエンサーに誹謗中傷」
その動画の内容は
複数の誹謗中傷コメントがあり、活動休止まで追い込みました。活動休止と同時に、法的処置を行うと発表しました。
法的処置?
でもネットで使ってる名前は本当じゃないし…
私が書き込んだことなんて誰にも…
不安になった瞬間
その子から連絡が来た。
「ねえ、なんでこんなことしたの?」
「どうして?」
「私、何か嫌なことした?」
「言ってくれたらよかったのに」
不安と後悔とその言葉が頭の中でずんと響く。
私がその時に打てたのは
「ごめん」
一言だった。
別に、一言で済まされることなんて思ってなかった。
でもその一言しか出なかっただけ。
ただの言い訳だった。
「謝ってくれてありがとう。でも傷ついた」
「なんで直接言ってくれなかったの?」
私は何も打たなかった。
いや何も打てなかった。
私の「ごめん」と言う言い訳と沈黙でその子が満足するなんて思ってもいなかった。
____
友達から少し時間を置いて連絡が来る。
「あの日のこと話したい」
「わかった」
実際に会って話すことになった。
友達は少し黙った。
「ちゃんと言えばよかった」
そう言って、スマホを開いた。
その言葉を聞いた瞬間、胸が苦しくなった。
私はあの日、友達が私を大切にしていないと思った。
でもそれは違う。
友達は私を大切にしたかったから、何も言わずに笑おうとしていた。
「遊園地の日、私がスマホばっかり見てた理由」
心配するメッセージや、誹謗中傷への対応の相談。
「また変なコメント来てるね」
「大丈夫?無理しないでね」
「相談乗るよ、応援してる。」
そんなメッセージが並んでいた。
「あの日、スマホばかりを見てたのは。」
____
遊園地の日。
友達はスマホを見ていた。
私には「私との時間よりスマホなんだ」と思っていた。
でも本当は___
友達のスマホには、たくさんの通知が来ていた。
「またアンチコメントか…」
「最近多いなぁ…」
人気になればなるほど、応援してくれる人だけじゃなく、嫌な言葉も届くようになっていた。
でも友達はそれを私に言えなかった。
「せっかく一緒に遊びに来たのに、暗い話したくない」
そう思っていたから。
私が
「ねーねーあそこ行かない?」
と言った時、友達はコメントを見ていて返事が遅れた。
その時の表情は、怒っていたんじゃなくて、傷ついたコメントを見た直後だった。
私は「睨んだように見えた」だけで、実際は「睨んでいなかった」。
勝手な解釈をした。
「本当はね、あの日言おうと思ってたんだ」
「最近、知らない人から嫌な言葉が届くことが増えてるって」
「でもせっかく久しぶりに遊ぶ日だったから、楽しい時間にしたかった」
その言葉を聞いて私は何も言えなかった。
あの日、スマホを見ていたのは私を無視していたからじゃなかった。
友達は、誰にも言えずに傷ついていたんだ。
私は勝手に決めつけ、勝手に傷つき、挙げ句の果てには、事実でもない言葉で友達の心を傷つけた。
スマホを握りしめた。
あの日、軽い気持ちで押した一つのボタン。
でも、その一言は画面の中だけで終わらなかった。
大切な友達の心に、消えない傷として残っていた。
完
〜あとがき〜
みなさんこんにちは。
小説家を目指す、るかめーたー。です。
突然ですが、皆さんはインターネットを使ったり、ゲームで遊んだことはありますか?
……まあインターネットは使ったことありますよね。
だって、インターネットを使わないとこの作品も読めませんからね…。
その中で、
「あー!悔しい!」
「なんで負けたの!?」
って、イラッとしたことはありませんか?
例えば戦闘ゲームで1点差で負けたり、プロ猛者プレイヤーにボコボコにされたり……。
私も、悔しい…とかイラッとしちゃうこと、あります。
一部のゲームにはチャット機能がありますよね。
ネットの友達と交流したり、仲良くしたりするには、とても便利な機能だと思います。
でも、少しだけ考えてみてください。
イラッとした勢いで、
「きも」
「うざ」
「しね」
そんな言葉を送ってしまったことはありませんか?
関係のない人に八つ当たりをしてしまったことはありませんか?
あるいは、そんな場面を見たことはありませんか?
もし、この作品を読んで「自分もあるかも」と思った人がいたら、私はこう伝えたいです。
暴言は、一度癖になってしまうと、なかなかやめられなくなることがあります。
この作品の主人公のように。
だからこそ、今から少しずつ意識してみてください。
なぜ、こんなことを言うのか。
それは簡単です。
皆さんに嫌な思いをしてほしくない。
そして、この作品の主人公のように後悔してほしくないからです。
急にやめるのが難しくても、少しずつ気をつけていけば、自然と暴言を言うことは減っていくと思います。
通報機能やブロック機能を使うことも、一つの方法です。
相手に言い返したくなる気持ちは分かります。
でも、そこで同じ言葉を返してしまうと、あなたも同じ「傷つける側」です。
画面の向こうには、ちゃんと人がいます。
あなたが打つ一言で、笑顔になる人もいれば、深く傷つく人もいます。
この作品が、誰かの「送信」を押す前に思い出してもらえる物語になれたら嬉しいです。
そして、あなたのたった「一言」で、たった一つの「命」が失われることがありませんように。
また、別作品でお会いできることを願っています。
#創作
コメント
3件
るかめーたー。さん、読み終わりました。 「刻まれた一言の代償」、すごく胸に刺さりました。ネットの匿名性が生む「軽い気持ちの一言」が、どれだけ相手を傷つけるか、そして勝手な決めつけで友達の本当の気持ちを見落としていた主人公の視点がリアルで。最後に友達がスマホを見ていた本当の理由が明かされるシーン、切なかったです。構造として、語り手の「解釈の歪み」がラストで反転する構成が巧みだと思いました。あとがきの呼びかけも、作品の重みを増していて良かったです。短編としてとても完成度高いです。