「小説がない!」
俺は小説がなくなっているのを見て叫んだ。
初っ端から叫んでしまって済まない。
おれは久仁派。両親はいなく、親戚がお金を出してくれている。
騒いだせいで双子の妹の真仁江を起こしてしまったらしい。隣からガサゴソと物音が聞こえる。
「久仁派にぃ。おはよう。うるさいよ。静かにして。」
「真仁江よ。相変わらず辛辣だな!でもこれが叫ばずにいられるか!」
「どうしたの?」
「この家にあるほとんどの本がなくなっていたのだ!」
「え?……いまなんて?」
真仁江が真っ青な顔をして聞き返した。
「だから、この家にあるほとんどの本がなくなったのだ!」
「噓、でしょ」
「俺が嘘をつく理由がどこにある!」
俺も真仁江も絶望している。俺たちは小説が大好きなのだっ!両親がいない今、生きる理由だ。
それなのにっ!小説がなくなって平常心でいられるか?無理だ!少なくとも俺たちは今、絶望している!
…………少し冷静にならなければ。俺よりも長い時間を物語と接してきた真仁江の方が絶望が深いだろう。
だから、俺が何か言わなければ。俺たちにとっては宝石のような価値のある小説だが、他の人にとってはそれほどの価値を見いだせていないと友達が言っていた。なら、なぜ犯人は小説を集めようとした?何かあったのか?
「ひとまず、情報を集めよう。そしたら何か見えてくるかもしれない。」
真仁江もこくんと頷いた。それからはその日一日忙しかった。インターネットや親せきの情報網、友達からも何か知らないか
情報を集めた。その結果わかったことがひとつあった。
``みんな、小説というものを忘れていたのだ‘‘
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