テラーノベル
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「先生、良かったらオフィスに来てよ。差し入れ、みんな喜んでくれると思うから。ぜひうちの社員に渡してやって欲しい」
「お邪魔にならない?」
「少しだけ。僕が先生といたいから」
「じゃあ…少しだけお邪魔するね」
早速オフィスにお邪魔した。初めて来る睦月君のオフィス。天井の配管がむき出しになったインダストリアルな設計でありながらも、照明が丁寧に配置され、空間全体が穏やかな灯りに包まれている。木目とグレーを基調とした内装は、無機質ではなくむしろ温もりを感じさせてくれた。
今時のオフィスだから開放的になっている。簡単に休憩ができるように配置された重厚感のあるソファ。そして自由に仕事ができるように並べられた、オフィスに合うライトブラウンのデスクとチェア。
どこかホテルのラウンジのようだけれど「働く」という目的にしっかりと寄り添った機能性もある。素敵なオフィスだと思った。
そんな中、スタッフのひとりが無言でキーボードを叩く音だけが空間に響く。別の席では肩を落としながら書類をめくる姿があり、近くのテーブルでは、大脇さんと40代くらいの男性が声を潜めてモニターを確認し合っている。みんな切羽詰まった表情だった。これからの対策を必死に考えているのだろう。こんな時にお邪魔して申しわけなかったな…。
「みんな、差し入れが届いたよ! 少し休憩してお弁当食べよう」
それぞれが一斉にこちらを見た。みんな疲れた顔をしていた。
「どうぞ」
スタッフ全員を近くのソファーに集め、お弁当とお茶を配った。
「うわ、おいしそう…」
若い男性の社員の方がつぶやき、早速ふたを開けていた。
「僕の奥さんの手作りだからね。みんな、しっかり味わって食べて欲しい。もう死ぬほどおいしいお弁当で、このだし巻き玉子は世界一だから…」
「はいはいわかったわかった。社長は奥さんのことを語ると長いから日付変わる」
大脇さんが睦月君の言葉を遮って制した。まだなにか言いたそうだったが、他の社員の方はまるで無視。それぞれ好きにお弁当を食べ始めた。
「おいしっ」
「これは最高ですね」
「デリィシャス」
個性的な誉め言葉もいただきながら、みなさんがお弁当を食べる姿を眺めた。睦月君とは仲がよさそうな雰囲気だ。彼から社員の悪口を聞いたことがないし、むしろ「よくやってくれている」とみんなを褒めていたくらいだから。
「あーごちそうさまでしたぁ」
「満足です」
「うまかったぁ~」
みんなが口々に言ってくれたので、とても嬉しくなった。
「よし、お腹も満たされたことだし、続きの会議をしよう。みんな、僕の意見を聞いてくれるかな?」
睦月君の声にみんなが一斉に集中した。真剣に自分たちのリーダーを見つめる。
コメント
1件
読んだよ〜!睦月くんのオフィス、めっちゃおしゃれで温かみある空間だね✨ 社員みんなピリピリしてる中で差し入れのお弁当が一気に空気を和らげてて、先生の優しさが沁みた…🥺 特に「僕の奥さんの手作りだから」のくだり、睦月くんの奥さん愛がすごすぎてニヤけたよ笑 社員の「デリィシャス」とか個性バラバラな反応も可愛いし、チームの仲良さが伝わってきてほっこりした〜😭💕