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「お前…どうして自分がこの組織にスカウトされたのか、わかっているか?」
「…え?」
いきなり何なんだ…?急に知らない人にそう尋ねられ、まともに答えられるはずがない。
「お前はひらりという教官に、知らされていないのだな。俺とお前が同類だということを」
「何を言っているのか全くわからない?あなたは誰ですか?」
「俺はイポクリジーアのトップ、betrayal Royerだ。千年前に人魚の肉を喰らい、不老不死となった」
「人魚の肉…?不老不死…?意味がわからない…」
俺は混乱した。betrayal Royer…そう名乗った青年はとにかく黒ずくめだった。
「お前の組織には、悪魔や吸血鬼などもいただろう。彼らは普通の人間に比べて寿命がとても長い。都月も似たようなものだ。けれど俺は人間。あの肉を喰らうまでは…俺もただの人間だった」
「…」
「お前、幼い頃、おかしな肉を喰ったことは?」
「え?うーん…」
急にそんなことを言われても困るんですけど…うーん、そうだなぁ…
あ!
「あります!5歳の時、家族で焼肉をしたとき、変な肉を食べました。生肉で、変な味がして…あんまり覚えてないんですけど。そのあとすごく怒られました。盗み食いだったので」
「そうか…ではやはり、お前も人魚の肉を喰らい…俺と同じように…!」
「さっきから言ってることがよくわからないです。この毒はなんなんですか?まさか俺とあなた以外、もう全員死んじゃったとか…」
「俺の毒は強力だ。そうだな」
「そんな…」
「まあ話を聞け。俺が人魚の肉を喰らった経緯を」
betrayal Royerは、血が垂れていたり、毒が溢れていて濡れている地面に腰掛けて話し始めた。
あれは、今から千年ほど前のことだ。
俺は海の近くで漁師をしながら暮らしていた。その日も魚を釣りに行こうとして、海に向かっていた。
そして、海岸についた。その日は朝早かったので、そこには俺しかいなかった。
そこで、俺は人魚に出会ったんだ。
肌は色白でおそろしいほど美人だった。瞳は宝石のようで、鱗もぴかぴか光り輝いていた。なびく銀髪は透明で、澄んでいるようだった。
俺は息を飲み、彼女に近づいた。
「あの…」
「…助けて…」
「具合が悪いのですか…?」
「…助けて…」
彼女はそれしか言わなかった。声も透き通っていて聴いていて心地よかったが、苦しそうだった。俺は誰にもみられないように家まで連れて帰った。
彼女は塩水を飲ませるとすぐに顔色が良くなり、言葉も交わせるようになった。
「助けてくださり本当にありがとうございます。こんな見た目の私にも恐れずに、助けてくださって…あなたは命の恩人です」
「いやいやそんな。俺は当たり前のことをしただけだ」
「そんなことありませんわ。何か、お礼を…」
「いいんですよ、そんな。…そうだ、ずっとここにいてくれませんか?」
「え…」
彼女は困った顔をして黙り込んでしまった。何かまずいことを言ってしまったかもと思った俺は、すぐに謝ろうとしたが、その必要はなかった。
「…わかりました。ずっとここにいますね」
彼女はにこりと微笑んだ。名をメリーと言った。
メリーはしばらく俺のいえで生活していた。客人が来た時は見られるとまずいので他の部屋に押し込んだが、メリーは文句一つ言わずうなずいてくれた。
そんなある日、とある噂を耳にした。
「人魚の肉を喰らうと不老不死になり、病気にもかからなくなり、老いることもなくなるらしい。不治の病も治せるらしい」
という噂を。
俺はその時、少しずつ、不治の病が進行していた。漁に出る回数も少なくなり、どんどん痩せこけていっていた。
メリーも日に日に声に元気がなくなり、顔色も悪そうにしていた。
そして、前は文句も言わずに俺の頼み事を了承していたメリーだったが、最近文句を言い始めるようになったのだ。
「私を、少しの間でいいので、海に返してくれませんか…?やはり私は人魚。水がないと…」
「駄目だ!!誰かに見られでもしたらどうする!!」
「けれど…」
「駄目なものは駄目だ!!」
俺も、病が進行していて八つ当たりしてしまったのかもしれない。薬は高い。高くて手が出せない。けれど俺は、どんな病も治せる『薬』が近くにあることに気がついてしまった。
そして俺は、殺してしまったのだ。
メリーを。
メリーを後ろから包丁で突き刺し、殺してしまった…そして、死体を捌き、肉を喰らった。変な味がした。生で食べたのがいけなかったのかもしれない。
けれど、俺の体は食あたりを起こしたのではなく、日に日に顔色も良くなり、何も食べなくても力が沸いてきた。
そうだ…俺は不老不死になったんだ。
しかしいいことばかりではなく、死ねない苦しみを千年味わった。周りは老いて死んでいくのに、俺は全く変りゃしない。
どうしてだ。
どうしてあの時、俺はメリーを殺して、喰ってしまったんだ。