家の前にたどり着くと、自然に二人の足が止まった。
繋いでいた手はまだ温かく、離すのが惜しい。
「……ここまで、ありがとうございます」
咲が名残惜しそうに呟く。
「送って当然だろ」悠真は少し照れながらも、まだ手を放そうとしない。
夜の静けさに、互いの呼吸だけが重なった。
「……帰りたくないな」咲が小さく本音を漏らすと、悠真の目が驚きに揺れる。
けれどすぐに、やわらかな笑みを浮かべた。
「俺もだよ。でも……また会えるから」
ゆっくり手が離れる瞬間、心にぽっかり穴が開くような切なさが広がる。
それでも、胸の奥には確かな約束の灯がともっていた。