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《物語 ぷりっつの空白》
山の中にぽつんと建つ古い別荘。
そこには“閉ざされた部屋が一つだけある”という噂があった。
六人が肝試しとして訪れたのだが、到着してすぐ——
ぷりっつ「わりぃ、俺ちょっと頭痛い。みんなは行っててくれ」
あっきぃ「またかよ、お前最近多くね?」
ぷりっつ「気にすんな。休んだらすぐ戻るって」
ぷりっつは玄関のソファに倒れ込むようにして横になった。
五人は心配しつつも奥の廊下へ向かう。
■ “閉ざされた部屋”の扉
噂の部屋は、別荘の一番奥にあった。
古びた木の扉には、黒い封印のような線が描かれている。
まぜ太「……開ける?」
あっと「そりゃ開けるだろ」
ちぐさ「急に怖くなってきたよ……けちゃ、大丈夫?」
けちゃ「僕は……五人なら……」
あっきぃ「よし、開けるぞ。せーのっ!」
扉が軋む音を立てて開いた。
部屋の中には、古い机。その上に日記帳がひとつ。
そして壁には——
子どもの写真が何枚も貼られていた。
金髪、毛先が黄緑。
緑の瞳の、小さな男の子。
あっきぃ「……これ、ぷーのすけじゃん。」
けちゃ「うそ……なんでここに……?」
まぜ太「別荘とぷーのすけの家族関係なんて聞いたことねぇぞ」
ちぐさ「ねぇ、日記……読んでもいいのかな」
あっと「読むしかないだろ」
■ 日記が語る“知らないぷりっつ”
日記には震えた字でこう書かれていた。
『ぷりがまた夜泣きした。』
『あの子には“見える”ものがあるらしい。』
『私には何も見えないのに、ぷりはずっと誰かと話している。』
『怖い。けど、あの子を一人にできない。』
あっきぃ「夜泣き……?」
まぜ太「“見えるもの”? あいつ、そんな体質ねぇだろ」
ちぐさ「でも……写真の子……すごく怯えてる顔してる……」
けちゃ「日記、まだ続きがあるよ……」
けちゃがページをめくる。
そこには、最後の一行。
『今日、“ぷり”を外に出した。
これで静かになる。』
あっと「……外に出した?
どういう意味だよ、それ」
まぜ太が窓の外を見た瞬間、息をのむ。
まぜ太「おい……これ見ろよ」
窓の外の庭。
そこに、小さな石碑がひとつだけ立っていた。
刻まれた名前は——
『ぷり』
あっきぃ「は……? 嘘だろ……?」
ちぐさ「ぷりちゃん……のお墓……?」
けちゃ「でも……ぷりちゃんは……今、生きてるよ……?」
■ 突然の“記憶のズレ”
あっと「待て。冷静に考えろ。
“ぷり”って名前の誰かがいたんだろ。別人だろ」
まぜ太「でも写真はぷーのすけそのものだぞ?」
あっきぃ「いや、でも……俺、なんか……思い出しそうで……」
あっきぃが眉をひそめた。
あっきぃ「小さい頃、ぷーのすけと会ったことが……ある気がする……
でも、そんなの聞いたこと——」
けちゃ「僕も……一度だけ会ったような……気が……する……」
ちぐさ「え、二人とも何言ってるの!?
ぷりちゃんとは最近出会ったんじゃ……?」
あっと「記憶が混乱してる……?」
その瞬間——
部屋の扉が バンッ! と閉じた。
ちぐさ「きゃっ!?」
まぜ太「誰だ!?」
扉の向こうから、小さな足音が走り去る。
あっきぃ「今の……子どもの足音だよな?」
けちゃ「ここ……誰もいないのに……」
■ “ぷりっつではない声”
すると部屋の隅で、日記帳がひとりでに開く。
ページがばらばらとめくられ、止まった。
そこには赤い字で上書きされていた。
『ちゃんと覚えてよ。
ぼくと一緒にいたの、きみたちでしょう?』
あっきぃ「……え?」
ちぐさ「“覚えてよ”って……何を……?」
五人が日記を見つめていると——
部屋の中心に、ふっと子どもの姿が現れた。
金髪、毛先が黄緑、緑の瞳。
幼いぷりっつ……の“ように”見えた。
けちゃ「ぷり……ちゃん?」
幼いぷり?「ちがうよ。
ぼくは、君たちの言っている「ぷりっつ」じゃないよ」
その言葉は、五人の背筋を凍らせた。
幼いぷり?「きみたち、ぼくの名前……
“忘れたふり”してるだけでしょ?」
五人の記憶が急に曖昧になる。
確かに昔、この子と遊んだような……
いや、そんな記憶あるはずが……
まぜ太「お前……誰なんだよ……」
幼いぷり?「んー?ぼくの名前はね——」
その瞬間、部屋が真っ暗になった。
■ 玄関に戻る五人
気づいたとき、五人は別荘の玄関に立っていた。
ぷりっつ「よう。なんか騒いでなかったか?」
あっきぃ「ぷーのすけ!? 大丈夫だったのか」
ぷりっつ「ん? なんもねぇよ。寝たら良くなったし」
ぷりっつはいつも通りの笑顔。
しかしその背後の壁に、
ふと“子どもの影”が一瞬だけ映った。
金髪で、毛先が黄緑の——
ぷりっつとは微妙に髪の形が違う影だった。
まぜ太「……なぁぷーのすけ」
ぷりっつ「ん?」
まぜ太「お前さ……昔、誰かと一緒にいた記憶とか……あるか?」
ぷりっつ「んー……?
どうだろなぁ……最近、色々忘れっぽいんだよ。
昔の話とか特に、全然覚えてねぇし」
その瞬間、ぷりっつの目の奥で、緑色が一瞬だけ濁ったように見えた。
そして彼は首を傾げて言った。
ぷりっつ「なぁ……“ぷり”って誰?」
五人は息を呑んだ。
外から吹き込んだ風で、玄関の壁に映った影が揺れる。
ぷりっつの影の隣に——
小さな影が寄り添うように立っていた。
幼い影「あの子は……ぼくじゃないよ」
その声は、五人にだけ聞こえた。
読者への問い
“ぷり”とは誰だったのか?
五人が思い出しかけた記憶は、本当に彼ら自身のものなのか?
ぷりっつの幼い頃の“影”は二つ存在していた——なぜ?
答えは、まだどこにも書かれていない。