この作品はいかがでしたか?
100
この作品はいかがでしたか?
100
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
【りうらside】
《あにきとまろの相談から少し前》
ないくんの様子がおかしい。いつもはうるさく騒ぐほとけっちやまろを黙らせるために大声張って誰よりもうるさくなってるないくんが、今日はあんまり怒鳴らない。心なしか声を出すことを避けてるような気もする。あともう一つ、
最近のないくんはよく、喉元に爪を立てる。
本人は無自覚だろうが、苦しそうに顔を顰めて喉に爪を立て、咳払いをしたあと、なにかを飲み込むような喉の動きをする。それに、赤組配信でもコホコホと弱い咳をするのだ。絶対何か隠している。この間だって、りうらが「ないくんお寿司食べに行こー!」って言ったのに、「あぁー……ごめん、今日はいいかな。あんまりお腹空いてなくて」って断られた。それも2、3回。ただの偶然とは思えない。
ほとけっちが騒いでしょーちゃんも騒ぎ出したから1回会議は休憩になった。今しかないと思って、ないくんをつかまえる。
「ないくん、ちょっといい?」
「ん?いいよ。どうしたの?」
「2人でしか話せないことなんだよね」
「え?うん……」
不思議そうにこちらを見ながらついてくるないくんに、やはり違和感を感じる、なんとなく。後ろ手に部屋の扉を閉め、2人きりになったところで切り出した。
「ないくんさ、なんか隠してることあるでしょ」
「……え?ないよ、そんなこ「りうら知ってるよ、ないくんが最近喉のあたりに爪立ててるの。見てるもん」
「それはさ、あの、あれだよ、喉の中がなんか痒いな〜って、ははは……」
誤魔化すように笑ったないくんは、りうらの顔を見て悲しそうな顔をした。
「……わかってるよ、りうらが心配してくれてることくらい。てもねりうら、これは俺だけの問題なんだよ。俺以外にどうしようもできないから」
「…………どういうこと?」
「花吐き病って、知ってる?俺、あれなの」苦笑いをして答えたないくんの言葉に、思わず表情が凍る。
「……ぇ、」
「片想い拗らせて罹るやつ。バカみたいだよね」
「なん、で…………誰に……?」
「まろ。あ、言わないでね。まろは優しいからさ。俺とくっついてくれようとするだろうから」
「でも」
「ごめんりうら。ごめんな。でもこれだけは譲れないんだ。まろには俺じゃない、別の女の人が似合う」
悲しそうな顔をしたないくんに、りうらは言葉も出せなかった。何を言っても、多分今のないくんには響かないから。
「だからさ、他のメンバーにも、っ、ゲホッ」
咳をしたないくんの口から青く小さい花が溢れた。
「ないくん!?」
ないくんに駆け寄ろうとしたら、静止された。激しく首を振る。
「りう、ら、こっちきちゃだめだ……うつる……ッ」
「これ……いつから…………」
「っ、ほんの2週間くらい前から。最初は花びらだけだったんだけどね……」
「なんで言ってくれないの?」
りうらはないくんに聞きたいことが山ほどあるのに、そんなありきたりな言葉しかでてこない。
「他のメンバーには、絶対に言わないで……お願いりうら、絶対。約束して」
「…………わかった」
「ありがとう、ごめんね、りうら」
何度も謝るないくんは苦しそうだった。
「この花片付けてから行くから先に戻ってていいよ」
「う、ん」
「あ、あと、俺の吐いた花に触るとりうらにもうつっちゃうから触らないでおいて」
「……うん」
メンバーに本当のことを言えないと思うと、余計に後ろめたい気持ちがした。知っているのに話せない歯痒さ。りうらが話さないことによって、ないくんの病状をほったらかしにしているようで、いやな気持ちになる。
ないくんが吐いた花は、勿忘草だった。