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阿部side
今日も翔太が俺の家に来ている
ソファの上、抱きしめあってキスをして、少し体を離した後、翔太がおずおずと切り出した
「あ、あのさ」
「うん?」
「あの、えと」
「……ゆっくりでいいよ」
「この先の、こと、だけど………」
「!………うん」
「あべちゃんは、どっちがいいの?」
答えるより先に体が動いた
もう一度抱きしめた俺に、翔太は小さな声で名前を呼ぶ
「あべちゃん?」
「翔太、大好きだよ」
「え、うん……」
俺の行動の真意を図りかねて、翔太はそれきり黙ってされるがままでいる
(また、翔太から言わせてしまった)
きっと、すごく勇気がいったはずだ
きっと、まだ怖さは残っているはずなのに
初めて一緒にお風呂に入ったあの日から
翔太に対する欲は日増しに大きくなっていた
だけどそれを出して、翔太を怖がらせるようなことだけは絶対に避けたかった
それでも一瞬、ちりと焼けるような熱が出てしまうことがあった
ほんの一瞬
出た瞬間に自制してすぐに抑え込む
それでも
翔太は必ずその熱に気づいた
そして一瞬
息を呑んで体を硬くする
瞬きをして
すぐに元通りになった俺を見る顔に浮かぶのは
安堵と落胆の混じったような複雑な表情
熱が見つかる度に、そこに艶が足されていった
ほんの僅か、ほんの一瞬の熱が
確実に翔太の奥に灯をともしていった
それを分かっていたのに
「ありがとう翔太」
「ん?なにが?」
「また勇気を出させてしまったなって」
「っ…………ううん、いいの。この恋はおれが始めたから」
「それでもだよ。ごめんね、ありがとう」
躊躇があった
翔太が俺のことをどれほど好きでいてくれるかは、多分、俺が1番分かっている
だから
俺が望めば、翔太はきっと大抵のことを受け入れる
それを分かっていて、無理をさせたくはなかった
俺はいつまででも待つと言ってあげようかとも思った
でもそれすらもプレッシャーになる気がした
結局何も言えないままに、今この瞬間を迎えてしまったのだ
それでも翔太は、俺の頬に宥めるようにキスをして微笑む
「大丈夫だから。……それより、教えて?」
「うーん、俺はできたら抱きたいけど、翔太の意見もちゃんと聞きたい
翔太はどうしたいの?」
「っ!」
そう聞くと、さっきまでと打って変わって、少し俯いて目が泳ぐ
(これは不安になってるやつだな)
「しょうた」
ゆったりと穏やかに名前を呼ぶ
ハッとした顔をして、目を合わせてくる
「翔太が何を言っても、嫌いにもならないし、引いたりもしないよ?」
「………うん、ごめん。話題が話題だから、ちょっと怯んだ」
「そっか」
少し泣きそうな顔で、それでもしっかりと目を合わせて伝えてきたから、もう大丈夫だろう
頭を撫でると、安心したように息を吐く
「あべちゃん、もう1回ぎゅってして?」
「はい、ぎゅー」
「ん、ありがと」
その後、少し力を緩めた俺の腕の中で、すぅ、はぁと深呼吸をした後、俺の服の前側をきゅっと握る
緊張に少し潤んだ瞳と下がった眉で、至近距離から上目遣いで見つめられる
(………可愛いなぁ)
俺は最近この顔に弱い
震える声が鼓膜を揺らす
コメント
2件
かわいいなあ、かわいい
