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「千鶴、疲れたか?」
「え? あ、いえ! 大丈夫です! 佐伯さんからのお電話、大丈夫でしたか?」
「ああ、問題無い。スケジュールの確認だった」
「そうですか……」
蒼央が戻って来た事で大翔から『羽音』という女性について聞きづらくなってしまった千鶴はひっそりと肩を落とす。
しかし、千鶴が聞かなくても電話を終えた大翔が先程の話の続きと言って話し始める可能性がある事に気付いた千鶴はその展開を期待したものの、大翔が電話を終えて戻って来ると、
「悪いな蒼央、これから急遽クライアントと会わなきゃいけなくなったんだ」
大翔は急用が出来てしまい食事会自体がお開きになってしまったのだ。
結局『ハノン』という女性は何者なのか、あの写真に写っていた女性の事なのか分からずじまいになってしまい、千鶴の胸のモヤモヤは一段と大きくなっていた。
「千鶴、どうかしたのか?」
「え?」
「何だか元気がないようだが……」
「そんな事ないですよ? 私、元気が取り柄なので!」
「そうか? それならいいが、もし何かあるならすぐに話してくれ」
「何もないです、大丈夫ですよ。気に掛けてくださってありがとうございます」
蒼央が心配してくれる事は嬉しいし、本人に直接聞く方が明らかに良いと分かってはいるものの、何故だか千鶴にはそれが出来なかった。
自宅に帰り、寝る支度を整えた千鶴はベッドに横になりながらスマホを手に取って、『ハノン』という人物について調べてみることに。
検索をかけてみるも、『ハノン』だけでは何千という結果が出て来てしまう。
「……やっぱり、モデルさん……なのかな? あの写真の人がハノンさんなら、きっとモデルさんだよね」
そう思い、次は『ハノン』『モデル』というワードで検索をかけてみる。
すると、検索結果の中に『千葉 羽音』というモデルの名前と共に蒼央のアルバムで見たのと同じ女性の写真が映し出された。
「千葉 羽音さん……」
紹介ページを読んでみると、人気絶頂期にフリーカメラマンの藍原 時夜との結婚を発表した後、モデルを辞めたと書いてあった。
「藍原 時夜さん……カメラマンなんだ」
その流れで藍原 時夜についても調べる千鶴。
彼は大翔同様海外を拠点に活動しているカメラマンらしく界隈では人気なようで、数カ月前から帰国して今後は日本での活動を中心に行うと書かれていた。
「……羽音さんと蒼央さんは写真を撮るくらいに仲が良かったはずだから、藍原さんのことも知ってるんだよね……仲、良かったのかな? カメラマンは大翔さんの話しか聞いたことないけど……」
アルバムの女性が羽音と分かり、しかもその彼女は既に結婚しているという事実。
二人の仲を疑っていた千鶴からすれば、彼女が結婚しているという事実は安心材料になるはずなのだが、何故か不安は薄れるどころか大きくなるばかりだった。